ちんこ
これは僕がちんこを1本失った話です
僕にはちんこが2本生えていた。
普通は、ちんこというものは1本しか生えないものらしい。
もちろん、女の子は0本だ。
僕はこの体のせいで、人より注意深く生きなくてはならなかった。
トイレでおしっこをするときは、みんなにちんこが2本生えていることがバレないように、小便器にちんこがついてしまいそうなほどに、小便器に近づいておしっこをしなくてはならなかったし、体育の授業でプールがある日には、人目につかない教室の隅っこでこっそり着替えた。
修学旅行のお風呂の時間には、手ぬぐいを腰に巻くことを欠かさなかったし、その他、ありとあらゆる他人にちんこを見られそうになる場面では、常に細心の注意を払っていた。
だから、多分僕と暮らしていた人以外には、僕にちんこが2本生えていたという事実を誰も知らないと思う。
お父さんとお母さんは知っていたのだろうか?
それは分からない。なぜなら、僕は生まれてからすぐに、施設に預けられてそこで育ったのだから。
施設で暮らす他の子どもたちや、施設の世話係は、僕にちんこが2本生えているからという理由で、僕を変な目で見てきた。
それも仕方のないことだと思う。なぜなら、普通はちんこというものは1本しか生えていないのだから。
ちんこが2本生えていた日々にはたくさんの苦労をしたけれど、今の僕にはちんこが1本しか生えていない。
それは、ものすごく怖い事件があったからだ。
僕は大学に入学するにあたって、一人暮らしを始めた。
そして、一人暮らしを始めて数ヶ月経ったある夜、とても怖い事件が起こった。
僕が布団で眠っていると、僕の家の窓から誰かが入ってくる音がした。
なんだろう?そう思い、僕はうっすらと目を開けた。
すると、窓辺には一人の男が立っていた。
僕は、月明かりに照らされた彼の顔を見た。
その顔は、僕にとてもよく似ていた。
その人は僕をじっと見つめていた。深い悲しみをたたえた目だ。僕もその人をじっと見つめた。
僕はとても不思議に思った。なんで僕がそこにいるのだろうか?
彼の右手には、月光を反射してギラギラと輝く湾曲した刃を持つ物騒な刃物が握られていた。
そんなもので僕をどうする気なのだろう?
きっと、僕を傷つけにきたんだ。その刃物で。奥深くまで。
彼はゆっくりと僕に近寄ってきた。静かに、物音も立てることなく。
彼は僕のそばまで来ると、僕の顔にぐっと顔を近づけてきた。
近くで見ると、ますます僕に似ている。
彼は僕に言った。
「お前のせいでとても惨めな人生を歩んできた。今だってな。お前は与えられすぎたんだ。そして俺は与えられなかった。お前がいなければ、俺はきっと幸せな人生を歩んでこれたんだ。」
なんのことか僕には分からなかった。僕だって惨めな人生を歩んできたんだ。
そもそも、彼は誰なんだろう?そういう疑問と、耐えきれない程の恐怖で、僕はもうめちゃくちゃだった。
「これでお前はやっと普通になれる。よかったな。けどな、俺は普通にはなれないんだ。全部お前のせいなんだ。仕方のないことなんだ。」
そう言って彼は、僕にかけられた布団を剥いで、僕のズボンとパンツを下にずらした。
「やめて!」僕は叫んだけれど、彼はあまりに興奮していて、彼は些細な鼓膜の振動なんて気にしていないみたいだ。
彼は、僕の上半身に乗って僕を押さえつけながら、ギラギラと光る物騒な刃で僕のちんこを1本斬り刻み始めた。
ギシギシ…ギシギシ…
凄まじい痛みと混乱。痛い。なんでこんなことを?
僕はもう、抵抗する力すら失って、ただ彼のなすがままに布団に横たわっているだけだった。
ギシギシ…ギシギシ…ブチッ…
彼の作業は終わったらしい。彼は立ち上がった。
僕は自分のちんこを見た。片方のちんこが根元からごっそりと切り落とされている。痛い。血が溢れている。彼は、切断された僕のちんこを、月の明かりにかざして見ていた。
その時、彼の目には、涙が浮かんでいるように見えた。
彼は僕のちんこを大事そうにタオルでくるんで、ビニール袋の中に入れると、僕の目をもう一度悲しげな見つめてから、窓から出て行った。
しばらくして、思い出したかのように僕は救急車を呼んだ。
こんなようにして、僕はちんこを1本失った。
僕のちんこを持って行った彼は今何をしているのだろうか?
僕のちんこを奪って、幸せな人生を歩むことができているのだろうか?分からない。
ただ彼は、顔がとてもよく僕に似ていて、悲しそうな目をしていたんだ。
読んでくださった方々、ありがとうございます。