ストレージとアイテムボックス
教会の裏にある庭。そこはかなり広く作られており、訓練や模擬戦をすることが最初から想定されていたらしく、それ用の設備が充実していた。
そして、模擬戦などをするための舞台が用意されており、その上には俺と氷室が向かい合っていた。アリスとアルバニアは少し離れた所にあるの椅子へと座っており、俺たちを見ている。
「そういえば、奏多はどんな武器を使っているんだ? 見たところ、特になにも持っていないようだけど」
「あぁ、俺の武器はこれだ」
俺はそう言って、ストレージからバスタードソードを取り出した。氷室は突然剣が出現したことに驚き、目を見開く。
「奏多は収納魔法が使えるのか、すごいね」
「そんなにすごいことか? 俺以外にも使えるやつは何人か見たことがあるんだが」
「いやいや、すごいに決まっているじゃないか! 収納魔法が使えるのは、およそ一万人に一人と言われているくらいだ。それに、使えるだけで職に困ることはないしね」
そんなにすごいことだったのか……。
それなりに俺以外にも使える人は知っているが、確かに全然見たことがなかったな。
「羨ましいな、僕も使えたらいいのに」
「お前は使えないのか?」
「うん、だからと言ってはなんだけど、これを使っている」
そう言って俺に見せてきたのは、小さな鞄のようなもの。それは氷室の肩にかかっていた。しかし、非常に薄く何かが入っているようには見えない。
「これは『アイテムボックス』という物だ。ストレージとは似て非なる物と言っても過言ではないけど、機能自体はほぼ同じだ」
「ストレージとはなにが違うんだ?」
「そうだね……ストレージは念じるだけで収納できるけど、アイテムボックスはわざわざポーチの中に入れなければならないんだ。使用者の素質によって収納限度が変わるストレージと違って、アイテムボックスは最初から限界が決まっているというのも違う点かな。あと、アイテムボックスはそれなり高価だ」
なるほど、氷室が似て非なる物と言ったのも納得できる。いろいろと違いはするが、今の話の感じストレージの方が優れているみたいだな。
「具体的にどれくらいの金額なんだ?」
「僕が今使っているこれはミスリル硬貨六枚するけど、一番安い物だとミスリル硬貨一枚くらいかな。まぁそこまで安いものだと、大した量も収納できないだろうけど」
いや、高すぎだろ……。
そこまでの高価なのにもかかわらず、ストレージにも及ばない性能しかないとか、少なくとも俺が買うメリットはないな。
「ただ、アイテムボックスにも利点はあるんだよ? ストレージと違って鞄として存在しているから、違う人に貸したり譲ったりできることとか、魔力を操作できない人でも扱うことができたりとかね」
「つまりは一長一短ってことか」
「うん、そうだね――って、ごめん話が脱線した。えっと、模擬戦だったね。できるだけ手加減するから、本気でかかってきて。その方が強さを把握しやすい」
氷室に一切悪気はなかったんだろうが、若干腹の立つ言い草だった。しかし、なぜか不思議とこいつに言われたら腹も立たないな……。
「魔法は使ってもいいのか?」
「そうだね、周辺に影響が少ないものなら使ってもいい。大きな音が出るのとか、クレーターができるような魔法は控えてほしいかな。謝りに行ったり修復するのは、結構手間がかかるからね」
「わかった、できるだけ影響が少ない魔法を使うことにする」
はなから塵一つ残さずに消し飛ばすような魔法は使う気がなかったが、魔法を使っていいなら一泡吹かすことくらいはできそうだ。
……ていうか、高威力の魔法を放ったとしても、こいつなら無傷で済みそうだな……。
「じゃあ、そろそろ始めようか」
「あぁ」
俺たちは互いに距離をとった。
氷室はロングソードを二振り引き抜き、構える。俺もバスタードソードを構えた。
あたりに濃密な緊張感が満ちる――。




