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雪合戦?

「――さぁ雪合戦をするわよー!!」

『おー!!』

「……なんで俺もすることになっているんだ?」


 屋敷の庭には、現在そこに大量の雪が積もっていた。

 急に雪が大量に降ってきたわけではない。これは、俺とアリスが《クリエートスノー》という魔法で雪を大量に作ったからである。

 クリエートスノーは雪を作るだけの魔法であり、用途は遊びくらいにしか使うことはできないだろう。強いて言えば、かき氷を簡単に作ることができるくらいか。


「なに言ってるのよ、それはソータがずっと剣を振ってるからじゃない。それに、それじゃあつまらないわよ」

「いや、鍛錬につまらないとかあるのか?」

「そういえば、ソータ君はここ最近張り切っていたわね」


 俺がアリスと話していると、そばにいたクレアが楽しそうに笑った。

 クレアは冬になってからよく屋敷に遊びに来ていた。やはり、冬になると冒険者は暇になるのだろう。


「……確かに張り切ってはいたが」

「ソータさん、たまには遊ぶことも大切ですよ」


 アルバニアも俺を雪合戦に誘ってきた。……お前もなのか。


「……まぁ、いいか」


 もうなんか、『どうにでもなれ』って気持ちになった。


「――ぶっ!」


 俺がそんなことを思っていたのが顔に出ていたのか、アリスは《スノーシュート》という魔法を使って俺の顔に雪玉を当ててくる。

 それなりの速度が出ていたためか、何気に結構痛かった。


「じれったいわね、ほらさっそくやるわよ!」


 アリスのその言葉が合図となり、みんなが一斉に雪玉を投げ始める。そして、その雪玉が向かうのは――全て俺。


「おいっ!? なんで俺ばかり狙うんだ!」

「ソータが乗り気じゃないからその気にさせるためよ!」

「ソータ君ほら、早くやり返さないと!」


 俺はよけようとしたが、よけたとしても雪玉は絶えず飛んでくるために何個も体に直撃した。


 ……ていうか、なんか飛んでくる雪玉の数が多いと思ったら、アリスはスノーシュートを使って雪玉を投げていた――『投げていた』だとちょっと表現的におかしい気もするが、まぁそれはいいか。

 それはズルじゃないのか? とも思ったが、そういえばルールを一切決めていなかったので、それ以前の問題だった。


「……そうか、お前らがその気なら俺にも考えがある! スノーシュートっ!!」

「えっ!? ちょっ!?」


 俺はアリスが放っていた何倍もの数の雪玉を三人に投げつけた。

 三人はさまざまな方法でよけようとしたが、俺はよけたとしてもまたその上から雪玉をぶつけていく。魔力量にものを言わせ、物量での圧殺である。


「ソータっ!! ちょっと、まっ――!?」


 アリスは俺を止めようとしたが、俺はかまわず雪玉を絶え間なく投げ続ける。そして、しばらくすると俺以外に立っている者はいなくなった。


「――あ、しまった……ちょっとやりすぎたな」


 つい楽しくなってしまって、うっかりやりすぎてしまった。

 ……そういえば、雪合戦なんてこれまでに一度もやったことがなかったな。思っていたよりも、雪合戦は面白いものだった。


 俺がそんなことを考えていると、ボコッ! という音を立てながら何かが雪の中起き上がる。よく見ると、それは雪にまみれたアリスであった。


「――ふ、ふふっ、ふふふふふっ! やるじゃない、ソータっ!!」


 アリスは起き上がると、凄みのある笑みを浮かべていた。

 雪に顔を埋めたからか、それとも怒りの感情からか、顔は赤くなっている。俺の顔が少しひきつった。


「ソータがその気になってくれたことだし、私もそろそろ本気を出すことにするわ! 《スノーブラスト》!!」

「はっ!? いや、まてって……っ!!」


 俺はすぐさまその場から身を投げ出すようにして回避した。

 先ほどまで俺がいた場所にアリスの放った雪玉が着弾すると、その雪玉は盛大に爆発する。直撃してしまったら、ケガをするのは間違いないだろう。


 再びアリスの方を見る。すると、そこにはアリスの周りを雪玉がいくつも宙に浮いているという、異様な光景があった。

 俺の顔が盛大にひきつる。


「ソータも雪に沈みなさいっ!!」

「――っ! ブリザードっ!!」


 アリスは俺にいくつも雪玉を投げつけてきたので、俺は《ブリザード》という吹雪を出す魔法を使い、飛んでくる雪玉をすべて地面に落した。

 地面に落ちた雪玉はその場で爆発すると、積もっている雪を中に舞い上げる。舞い上がった雪煙は日光によってキラキラとかがやき、幻想的な光景を創り上げた。しかし、今はそれに見とれている場合ではない。


 アリスは次の雪玉の準備を始めていた。

 いつもの杖を使っていないためか、魔法を発動するまでに時間がかかっている。しかしそれでもなお、魔法を構成する速度は驚異的なものがあった。

 さすがにこのままでは格好がつかないので、俺は反撃を始めることにする。


「スノーブラストっ!!」


 俺も負けじと爆発する雪玉をアリスに投げつけた。

 双方の雪玉が射出されるのはほぼ同時にあり、その雪玉は空中で衝突する。そして、花火の爆発音のような音とともに、きれいな花を空中に咲かせた。


 戦いはまだまだ続く――。


 ――  ――  ――  ――  ――


「――二人とも楽しそうね」

「ですね」


 アルバニアとクレアは屋敷の壁を背もたれにしながら、ソータとアリスによる雪合戦をはたから見ていた。

 二人の手には、アルバニアが用意してきた紅茶の姿があった。


「最近ソータ君はずっと浮かない顔してたしね。いい気分転換になったんじゃないかしら?」

「そうですね、アリスもソータさんもとても楽しそうです」


 ソータとアリスは二人とも楽しそうに笑みを浮かべていた。ただ、その笑みはニコニコとしたものではなく、『邪悪』と形容してもいいほどのものだったのだが。

 しかし二人はまるで子どものように、生き生きと雪合戦を思う存分たのしんでいた。


「いい加減にくたばれっ!」

「くたばるのはそっちよっ!」

「……本当に楽しそうね」


 魔法でつくられた雪玉が飛び交う。

 もはやそれは『雪合戦』と言っていいのかは疑問だが、二人は一切そんなことは気にせずに、相手を雪に沈めようと必死に雪玉を投げ続けていた。


「私たちがまざるのは無理そうですね」

「そうね、私たちも魔法が使えたらいいのに」


 二人は魔法を使うことができないことを残念に思ったが、使えたとしても二人の『(いくさ)』とも呼べる雪合戦を見た後では憚られるだろう。

 それほどに、二人の雪合戦は激しいものだった。


 アルバニアとクレアの二人は、ソータとアリスが疲れて雪に倒れ込むまで二人を見守っていたのだった。

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