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白亜の町

 ファイアボールが全てブレイブラーテルへと直撃した。しかし表皮や肉を焦がしはしたが、有効打になっているとは思えない。事実、ブレイブラーテルはファイアボールを受けてもなお立ったままだった。

 どうやらブレイブラーテルの毛皮は、魔法に対しても高い耐性があるようだ。


「なら、直接叩き斬るまでだ!」


 俺はストレージからバスタードソードを取り出した。

 この体ではあまりうまく扱うことができないが、これも修業だと思っておこう。


 一度偽りの仮面を外そうかとも考えたが、外すのにかなり大きな隙をさらす事になるのでやめておくことにした。

 この体の感覚に慣れておくために事前に仮面を使用しておいたのだが、それがあだになったか。


 俺はバスタードソードをブレイブラーテルの首へと振り下ろす。しかし、ブレイブラーテルは後方に跳び、俺の攻撃をよける。

 そのまま攻撃を止めることなく、俺はブレイブラーテルの前足の関節に狙いをさため、突きを放った。

 すると、メキッ! という音を立てて前足はあらぬ方向へと曲がり、ブレイブラーテルは体勢を崩した。


「ロックシュート!!」


 そして俺は少し離れると、ブレイブラーテルに向けて通常の何倍魔力込めて大きくした岩を放った。

 岩は弧を描きながら飛んでいくと、ブレイブラーテルはよけることができずにそのまま押しつぶされる。岩の下から抜け出すためにジタバタと暴れ出したが、一向に抜け出すことはできなかった。

 そして目の光度は次第に落ちていき、完全に消えるとブレイブラーテルは完全に動かなくなった。


「――ふぅー……本当にアンデッドは厄介だな」


 ファイアボールで体を焼かれたのにもかかわらず一切怯むことがないとは、予想外にもほどがあった。少しくらいは嫌がる素振りを見せるかと思っていのだが、さすがに全く動じないとは……。

 なにかアンデッド用に対策を練っておくべきだろうか?


 再度死体を回収しておこうかとも考えたが、めんどくさいので回収せずそのまま放っておくことにした。

 わざわざ岩をどかすのは骨が折れる。別に放っておいても問題はないだろう。


 俺は聖王国へと急ぐため、その場を後にした。


 ――  ――  ――  ――  ――


 早朝を少し過ぎた頃、俺はやっと聖王国に到着した。

 森の中にいた時間は急いだため四日ほどと少なかったが、体感的にはそれよりも長く感じられた。肩の荷が下りた気分である。


 俺が到着したのは、目的地である中央研究所がある聖王国の王都だ。

 実は聖王国までは二日ほどで到着することができたのだが、近道をして王都まで直接やってきたのだ。そのせいで森の中にいる時間が長くなったのだが、近道をしなければ十日はかかったので良しとしておこう。


 それにしても、なんというか――白い。

 建物は全て白を基調としており、王都全体が白く輝いている。中央にそびえ立つ王城も真っ白であり、さながらここだけ銀世界のようだ。

 ……しかし、これは困ったことになった。


「これじゃあ、逆に目立つよなぁ……」


 俺のいま着ている服は全身が黒で統一されているので、町の中にいればかなり浮くことになるだろう。別にそれが致命的なわけではないが、看過できることではない。

 どうしようかとストレージを眺めていると、ちょうどよさそうなものを見つけた。それをストレージから取り出す。


 俺がストレージから取り出したのは、真っ白の外套だ。それなりに大きいが地面をするほどではないので、ちゃんと着れるはずだ。

 これを着れば少しは黒い部分が少なくなるので、目立ちにくくなるだろう。

 俺は外套を羽織り、王都へと入るために城門のある場所へと歩き出した。



 今出せる身分証を持っていなかったので少し面倒な事にはなったが、無事王都の中に入ることができた。


 俺はまず、研究所の下見をするために王都の地図を買った。

 中央研究所はなかなかに大きな建物のようで、すぐに場所はわかった。大通りに面した場所にあり、付近にある建物と比べると一回りも二回りも大きい。

 さっそく下見をするべく、俺は中央研究所に行ってみることにした。


 大通りを通って行くと遠回りになるため、俺は近道をすることにしたのだが……それがいけなかったらしい。

 近道のために裏道を通っていると、十人ほどの男たちに囲まれた。どうやら待ち伏せをしていたらしく、前後からタイミングよく男たちが出てきたのだ。


「おいおい、こんなとこにいたらチンピラに襲われちまうぜ?」

「おう、だからよ、俺たちがお前を守ってやる。その代わり……わかるよな?」


 一人の男が俺に手を差し出した。つまり、恐喝されたわけである。

 面倒な事になった。別にこいつらは全然強くないのでどうとでもできてしまうが、あまり派手なことをすると目立ってしまう。それはまずい。

 かといって必要ないと言っても、こいつらが簡単に手を引くとは思えない。

 ……仕方がない。釈然としないが、小銭でも渡せば引き下がるだろう。


「――君たち、その子から離れてくれるかな?」


 ストレージから小銭を出そうとしていると、路地から一人のきらびやかな鎧をまとった男が現れた。しかし、俺はその男を見て動きを止めた。……いや、動くことができなくなった。

 俺はその男を見て理解してしまったのだ。


 ――この男には絶対に勝つことができない、と。

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