国王と謁見
華やかな玉座の間。そこには様々な者が集っていた。
絢爛豪華を身にまとったような者、一見して動きずらそうな鎧をまとった者。
――そして、床を擦るほどの真っ赤なマントをまとい、宝石のあしらわれた荘厳な金の冠を身につけ、王座へと腰かけている者。
部屋の中にはほどよい緊張感がただよってはいるが、所々で談笑する声も聞こえてきた。
だが次の瞬間、兵士の声と共に玉座の間の扉が開かれた事によって、部屋の雰囲気は重々しいものへと変ったのだった。
―― ―― ―― ―― ――
俺たちはあてがわれた王城の一室で数時間ほど待たされることになった。なんでも、色々と準備があるそうで仕方のないことらしい。
俺はその間にアリスとアルバニアから謁見に関する作法を聴いたのだが、とても覚えきれるようなものではなかったのだ。なので、本来なら俺一人で謁見する予定だったのだが、二人にも謁見に同行してもらえるようにしてもらった。
……ていうか、事前には王様と顔を合わせて礼を言われるだけと聞いていたのだが、実態は演劇のようなものだった。
ある程度の展開は最初から決められており、後は決められている通りに芝居の真似事をするという、なんともうんざりするものだったのだ。
なんで口調の指定までされなければならないんだろうか? あっちから呼んでおいて、なんでそこまで指定されなければならないんだ。
アリスは格式がどうとか言っていたが、正直理解できない。
まぁ、最終的には主要な会話以外は二人がしてくれることになったので、今はそこまで腹は立っていないのだが。
そういえばなんで二人はそういう作法に詳しいんだ? ……まぁ甚だ疑問ではあるが、そこまで気にしなくてもいいか。
俺たちがメイドに入れてもらった紅茶や軽いお菓子を食べたりしながら時間をつぶしていると、扉が数回叩かれた。
「どうぞ」
「――失礼いたします」
アルバニアが返事をすると、一人の兵士が部屋へと入ってきた。
その兵士は立派な鎧を身に着けていたが、どうやら見た目を重視したものらしく、防御力はあまり高くなさそうだった。
「国王様方の準備が整いました。つきましては謁見の間へご案内いたしますので、同行のほどお願い申し上げます」
「かしこまりました、よろしくお願いします」
俺たちは兵士の案内に従ってやたらと長い廊下を歩く。しかし、ほどなくして謁見の間の扉にたどり着いた。
その扉は高さが人間二人分ほどあり、細微な装飾がほどこされていた。
扉のわきに兵士が二人ひかえているあたり、一人では開ける事がむずかしいのかもしれない。
「ソータ様、アリス様、アルバニア様が到着なされました! これより入場いたします!」
俺たちを案内してきた兵士が大きく声を上げると、扉のわきにひかえていた二人の兵士が謁見の間の扉を開いた。そして、俺たちを案内した兵士は道を開けるようにわきへ退く。
俺たちは謁見の間へと足を踏み入れた。すると、部屋の中にいた高そうな服を着た者たちの強い視線が俺たちに向けられる。
品定めをしているかのような目で見る者や、睨むような目つきで見てくる者などがおり、今すぐにでも帰りたい気分になった。
俺はそんな視線を気にしないように歩みを進める。そして事前に決められていた場所へとたどり着くと、そこに俺たちは跪いた。
「――面を上げよ」
そこに、威厳のある声が投げかけられた。
俺たちは顔を上げ、その声の主を見る。そこにいたのは、玉座に腰かけ王冠をかぶり髭を蓄えた、いかにも王様という風貌の男だった。
年齢は初老の真っただ中といったほどで、整えられた金髪には若干白髪がまじっている。
「さて、まずは自己紹介といこう。私の名前は『ジュリアス・ベネット』という。其方らのことはおおむね聞きおよんでおる。して、今回はわざわざここへと来てくれたこと、誠に感謝する」
「こちらこそこの場へ招待いただき、恐悦至極に存じます」
俺は精一杯の敬語で国王に返事をした。
俺らのことはすでに知っているって言ってたから、たぶんこの返事で問題ないはずだ。
「ソータ殿は初めてだが、アリス嬢とアルバニアと会うのはこれで三回目となるな」
「えぇ、……と言いましても、この身となっては初の謁見となりますね」
二人は国王と知り合いだったのか、相変わらず顔が広いな。
……ん? ちょっとまて。なんでアリスには敬称をつけて呼んだのに、アルバニアにはなにもつけなかったんだ? これになにか意味があるのか?
「アルバニアも元気そうでなによりだ」
「はい、陛下もお変わりないようで喜ばしい限りでございます」
「うむ。――さて、其方らをここに呼んだのはほかでもない」
国王はそう言うと、ひかえていた一人の使用人を手を振ってそばに呼び寄せた。
「まずは此度の帝国との戦争にて、感謝を。そして、私個人からの礼を受け取ってもらいたい」
使用人は俺のそばに来ると、持っていた豪華な布製の袋を俺に差し出した。俺はそれを受け取る。
受け取った感想は、なかなかの重さがあった。どうやら結構な金額が入っているようだ。
「陛下のご厚意、感謝申し上げます」
「あぁ、しかと活用してくれたまえ。……さて、これで終えるのもなんだ、雑談といこうではないか。――おい! 対談用の部屋を一部屋用意しろ!」
「かしこまりました、少々お時間を頂戴します」
国王が命令すると、使用人の一人が玉座のわきにあった扉から出ていった。
……いやまて、これで終わりじゃないのか? 正直これ以上敬語をしゃべるのはキツイんだが……。
「三人とも、そこでずっと跪いている必要はない。私たちが到着するころにはすでに準備は整っているだろう。なので移動を始めようか」
そう言うと国王は玉座から立ち上がった。そして、二人の兵士を従えて扉へと歩き出した。
「……なにやってるの? ほら、行くわよ」
「あ、あぁ」
俺が立ち上がらずにいると、アリスが俺の腕を掴んで無理やり立たされた。
……早く、帰りたい。できるだけ、早く。
気分が乗らないまま、俺はアリスに腕を引かれて謁見の間を後にしたのだった。
国王の名前を変更しました。




