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戦後の行方

 俺たち襲撃部隊が作戦を成功させたことによって、事態は急速に進展した。

 本陣が襲撃されたことで帝国軍兵士たちは本陣に撤退。だが、兵士たちが戻った頃にはすでにどうにもならない状況だったらしく、帝国へと退却することになったようだ。しかし、王国軍は追撃を行わなかった。

 それはなぜかというと、どうやらすぐにでも帝国に帰ってほしかったらしく、余計なことをしてそれを遅らせたくなかったらしい。


 俺は行っていないのだが、奪還したルーサーの状況や被害を確認しに行った者たちの話を聞くに、相当ひどい状況だったみたいだ。

 無事な者など一人もおらず、かなりの人数が殺されたらしい。捕虜になっていた者たちはそのまま放置されていたようで、かなりの人数が餓死していたようだ。

 中には餓死した者を喰らって生き長らえた者もいたそうだが、もはやまともな精神を保てていなかったらしい。


 そして、どうやら帝国軍は殺したルーサーの住民たちをまとめて焼いたようで、大きな広場にはおびただしい数の人骨が積み上げられていたそうだ。

 町の中にただよう臭いもひどいものだったようで、腐敗臭やたんぱく質の焼けた臭いが町の中のどこにいても感じるほどに残留していたらしい。


 ――俺は、『戦争』というものが嫌いだ。なんの罪もない人々が意味もなく(しいた)げられ、虐殺される。人々が平等に享受できるはずの平穏を一方的に奪い去り、暴虐の限りを尽くすのだ。

 こんな(むご)い仕打ちがまかり通っていていいのだろうか? いや、ダメだろう。しかし、人間はどうあがいても争うのだ。


 人間が集団でいると必ず争いが起きる。それこそ、友達同士の些細なケンカから国同士の戦争までと規模は異なるが、全く争いが起きないなんていうことはありえないのだ。

 みんながみんな同じ考えを持っているはずもなく、意見は必ずどこかで食い違う。そうなると、規模はどうであれ争いが起きるのだ。俺は、そんな場面を幾度となく見てきた。


 『人間は本能的に争うようにできている』、これは俺の持論だ。

 性善説とか性悪説とかそういうことではなく、もっと本能的な部分で人間は争うと思うのだ。


 どれだけ聖人のような人でも、怒りや憎しみを覚えないはずがない。

 愛する者が殺されたら? 身に覚えのない冤罪を着せられたら? 確実に怒りや憎しみを抱くだろう。

 だから、俺は『戦争』というものが嫌いなんだ。


 ……まぁそれはともかく、ルーサーを復興するには膨大な時間と金が必要みたいだ。

 帝国が受けた被害も決して小さいとは言えないが、王国はそれ以上の被害を受けてしまった。


 本当にレナード帝国は余計な事しかしないな。

 今のところ俺の魔剣を奪おうとしたり、アリスを誘拐したり、大規模な戦争を引き起こしたりと印象は最悪だ。

 もっとたくさん殺しておいたほうがよかったか? ……いや、そんな事をすれば仕返しを考える奴が出てくる可能性があるな。やめておいて正解だったか。



 俺はゆれの少ない馬車の中で、そんなことを考えていた。

 現在アリスとアルバニアと共に、俺はベネット王国の王都へと進む馬車に乗っていた。

 事の発端は、フレッドへと帰還ししばらくたった頃の話だ。


 兵士たちや志願した冒険者が戦場の後片付けをしている間、俺たちは宿に待機していた。その間にわざわざこっちまで来ていたアベルから今回の件の報酬と、転移者を討伐したということで俺にミスリル硬貨三枚が追加で支払われた。

 そのときにアベルが、王都から俺当てに使者が来ているということを伝えてきたのだ。


 俺はその使者に直接会い、話を聞いてみた。

 使者曰く、ベネット王国の国王が甚大な被害をもたらした転移者を討伐した俺に感謝を述べたいとのことらしい。

 移動手段や宿はあちらで用意してくれるらしく、俺は特にデメリットはないと判断した。そのため二人に確認を取って問題ないことを確認すると、その話を了承したのだった。それで、今にいたる。

 ちなみにだが、高畑の死体は回収して引き渡し済みだ。


「――ソータほら、王都に着いたわよ!」


 俺は読んでいた本をたたみ、馬車の外に視線を移す。するとそこには高く、そして頑丈そうな城壁が見えてきた。レナード帝国のものと比べても勝るとも劣らない。

 また、城壁を警護する兵士も数え切れないほど見ることができた。


「へー、かなり警備がかたいな」

「そうね、仮にも一国の(みやこ)だし当然といえば当然のことだけどね。……まぁ、ちょっと過剰な気もするけど」


 城壁の上には双眼鏡と持った者がつねに遠方を監視していたり、大砲が何門も設置されていたりとかなり物騒だ。


「少し前まで帝国と戦争をしていましたからね、それの名残ではないでしょうか?」

「そう考えるのが妥当ね、もう必要ないと思うけど」


 俺たちがそんな話をしている間にも馬車は進んでいき、しばらくして王都へと到着したのだった。


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