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日常への帰還

 少し急いだので、問題なく帝都を出ることができた。

 俺が門を通ったときはまだ皇帝が殺されたことは伝わっていなかったようで、特に止められたりはしなかった。

 それからはできるだけ早くレナード帝国を出るために、日中は絶えず走り続けた。


 しかし、不安要素がある。それは通りかかったある町でのうわさ話。

 ――曰く、皇帝が何者かに暗殺されたのだと。

 その情報は馬をもつ商人などが広めているらしく、とんでもない速度で広がりを見せている。


 そんなことがあり、各町の警備が全体的に強化さている。

 まだ問題は起きていないが、時期に国が大きく動き出すのは目に見えている。これは多少強引にでも撤退した方がいいはずだ。



 俺は静寂な夜闇の中を走る。すでに《インビジブルミスト》を発動しており、周囲一帯には濃霧が立ち込めていた。

 俺の前方には長大な城壁があり、その上では兵士たちが突如発生した霧に戸惑っているのが見えた。

 すでに皇帝が殺されたことは伝わっているようで、前のときよりも警備がさらに厳重になっている。


 俺は身体強化の魔法を使い、一気に城壁に飛び乗った。そしてその勢いのまま、城壁から飛び降りる。地面に着地すると、強い衝撃が俺の足に伝わった。

 城壁の高さは十五メートルほどもある。落ちたりでもしたら最悪即死するんじゃないか? 俺だって身体強化を使ってなかったら絶対に飛び降りないしな。


 俺は城壁から一刻も早く離れるべく、霧にまぎれながらベネット王国の方へと駆け出したのだった。


 ――  ――  ――  ――  ――


 黄昏時、俺はチェイスへと帰ってきていた。

 二ヶ月も離れてはいなかったのだが、すでにどこか懐かしい。つくづく帰ってたんだと、切実に実感する。


 店員が客を呼び込んでいたり、子供が遊び終わって家に帰っていったりと、いつも通りのを光景を見ていると心が洗われたような気持ちになる。

 どうやら、俺は知らず知らずのうちに無理をしていたみたいだな。


 アリスが攫われたことに腹が立ってレナード帝国まで皇帝を殺しに行ったが、今思えばなにをやってんだって話だよな……。

 仲間が攫われて腹が立つのは仕方がないが、それでも一国の王を殺しに行くのは今思うとどうかしていると思う。

 ……まぁ、やってしまったことは仕方がない。次がないことを祈るが、次は気をつけよう。



 俺は屋敷の門を解錠し、中に入る。


 ちなみに俺はチェイスに入る前に偽りの仮面を外し、元の体に戻っている。久しぶりに元の体に戻ると、かなり違和感を覚えた。

 どこか動きづらく、一つ一つの動作が鈍くなったような気がするのだ。さすがにちょっと歩いた程度で息切れするようなことはないが、それでも明らかに前のときよりも動きずらく感じる。

 まぁ、直に慣れるだろう。


 屋敷の中に入り、リビングの扉を開ける。そこには待ち望んでいた、いつも通りの光景があった。


「あっ、ソータ! お帰り!」

「お帰りなさい、やっと帰ってきたのね」


 ソファーにはアリスとクレアが座っており、本を読んでいた。

 どうやらアルバニアはここにはいないらしい。


「ただいま。クレア、俺がいない間なにも問題はなかったか?」

「そうね、ここ最近は二人と一緒にいたけど、あれからは一度もあの組織には出会ってないわ。数日に一度狩りはしてたけど、特にこれといった危険もなかったわね」

「そうか、ならよかった」


 俺だけがここを離れるに当たって、再びレナード帝国の者が手を出してくることが一番の不安だったのだが、そういうことはなかったようだな。だが杞憂とは思わずに、引き続き警戒を続けることにしよう。

 敵の首魁は殺したが、再び手を出してこない保証はないからな。


「失礼します。あ、ソータさん、お帰りなさいませ」

「あぁ、ただいま」


 扉がノックされ、アルバニアがリビングに入ってきた。

 エプロンをかけており、料理をしていたようだった。


「少々お待ちください、ソータさんの分の夕食を追加で作ってきますね」

「悪いな」

「いえ、お気遣いなく」


 アルバニアはそう言うと、リビングから出ていった。


「ソータの方はどうだったの?」

「どうって言われてもな……まぁ、成功したかな」


 少し失敗したのは否めないが、殺したのは正解だっただろう。

 なにも行動していなかったらまた俺たちに手を出してきたはずだ。だからあの状況では、これが最善策だったと思う。少なくとも、俺が思い浮かんだ行動の中ではそうだった。


「何をしに出かけたのかは教えてくれないの?」

「……あぁ、秘密だ」


 さすがに仲間だとしても、今回のことは明かせない。あまりにも後ろ暗過ぎる。


「そう……まぁ、いいわ」

「クレア、しばらくの間二人と一緒にいてくれて助かった」

「気にしないで、元はといえば私の不注意が招いた事だから」

「なに言ってるのよ! 不注意だったのは私の方だわ! あのときは杖も持たずに出かけてしまって……」

「アリスが無事だったんだし、それはもうどうでもいいんじゃないか? 次から気をつければそれでいいし」


 誰が悪かったのかと追及のは無意味だろう。

 次からは全員気をつければいいのだ。誰に非があったのかなんてのは問題じゃない。


「……確かにそうね、次から気をつけるわ」

「私もそうするわ、誰が悪かったなんて言い争っても実がないものね」


 よかった、無意味な言い争いにならなくて。ここで争うのは本当になんの意味もないからな。


「とりあえず、俺は風呂に入ってくるよ」


 ここにきて疲れがどっと出てきた。それに、何日も風呂に入っていないと無性に入りたくなってくるんだよな。

 クリーンを定期的に使っていたから汚れてはないが、どうしても入りたくなってしまうのは日本人の性なのか。


「了解、でも長風呂はダメよ」

「わかってるよ」


 俺は風呂を堪能するために、部屋を出て風呂場へと歩いて行った。

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