明らかになる首魁
「――がっ!?」
俺は壁にもたれかかった男の額を蹴り上げ、強制的に目を覚まさせた。
少し前まで俺が全力で殴った影響で鼻血を出していたのだが、ヒールを掛けてやったので今は治まっている。
「な、なんだ!? 一体なにが――っ!」
「思い出したか?」
男は俺を見るとなにがあったか思い出したようで、俺を睨みつけてきた。
「今からお前にいくつか質問をする、素直に答えた方が身のためだぞ」
「ふざけんじゃねぇっ! 誰がてめえの言うことなんざ――ぎっ!? があああああああああああぁっ!?」
俺は男の右手の小指を、持っていた鉄製のダガーで切り落した。
このダガーは全然切れ味がよくないため何回もノコギリみたいに引いて切ったのだが、男の反応を見るに相当痛いんだろうな。まぁ、尋問するにはちょうどいいだろ。
すぐにヒールを使ってやり、俺は出血を止めてやった。
「……ふ、ふざけんな、ふざけんなっ!! ぜってぇ殺してや、る……?」
男はやっと魔法を使って拘束されていることに気がついたのか、必死に体を動かそうとしている。
俺が男を拘束するのに使ったのは、《バインド》という魔法だ。
物質化した魔力で対象を拘束するという魔法で、マジックブレード同様使用する魔力が非常に多いことが欠点だが、縄などで縛るよりも何倍も強固であるというのが最大の利点だ。
男は必死に体を動かそうしているが、びくともしていない。
「てめえええええぇっ!! 殺してや――ぐぅっ!?」
「さぁ質問するぞ、素直に答えろよ」
俺は男の腹部を蹴り上げて強引に黙らせ、質問を開始した。
「お前に今回のことを指図した奴は誰だ?」
「――っ!? くそがっ!! ぜってぇに言うか!!」
男は俺の質問に驚愕の表情を浮かべ、そう吐き捨てる。
なるほど、やっぱりこいつの後ろにはなんらかの組織があるんだな。
俺はどうにもこいつが全てを仕組んだ首魁とは思えかった。
きっとこいつに指示を出した奴がいると思ってブラフを張ってみたのだが……当たりだったな。こいつには絶対に隠し通さなければならない主が存在する。
あっさりと上の組織があるという言質を与えるあたり、まったく冷静じゃないんだろうな。そうでなきゃ、ここまで簡単に吐くとは思えない。
「もう一度聞く、今回のことを指図したクソ野郎はどこの誰だっ!?」
「ふざけんなっ!! ぜってぇに言うもんか!! ひっ!? や、やめてくっ――いぎっ!? ぐあああああああああぁっ!?」
俺は左手の小指を切り落した。
あまりにも腹が立って怒鳴ってしまった。もう少し冷静にならないとな。
「できるだけ早く答えた方がいいぞ? 楽になりたいならな」
「ひっ、ひぃ……っ!」
―― ―― ―― ―― ――
「――ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
こいつを数十分ほど尋問したので、知りたい情報はあらかた聞き出すことができた。
まず、こいつの上の組織は『国』だった。
その国の名は――『レナード帝国』。
レナード帝国は、ベネット王国の隣に存在する敵対国だ。
定期的にベネット王国とは戦争をしており、決して相容れない敵といったところである。
そして、今回のことを仕組んだ首魁はレナード帝国の皇帝である、『リロイ・メルキオール・ヒドルストン』という奴らしい。この男たちの組織は、いくつかある皇帝の子飼いの裏組織の一つだそうだ。
ふざけたことにレナード帝国の皇帝は力を欲しているらしく、その一環で俺の魔剣を奪おうとしていたらしい。
……めんどくさいことになってきた。正直、敵が国だったとは予想外だった。
そんなことを考えていると、遠くから足音が聞こえてきた。それは次第にこちらへと近づいてくる。
「警備兵です!! ソータさん、無事ですか!?」
「警備兵か、結構早かったな」
しばらくして俺のいる中庭に入ってきたのは、数十人の警備兵だった。
ここはスラム街なので来るのはもう少し遅くなると思っていたのだが、どうやら急いで来てくれたらしい。
「クレアさんより話は聞いております。……もしかしてですが、その者が組織の首領ですか?」
「まぁ、そんなところだ」
警備兵が若干言葉に詰まったのは、男の姿を見たからだろう。
男の右手は親指と人差し指以外なく、左手に限っては手首から先がない。男の顔も酷いもので、涙でぐしゃぐしゃに濡れており、さっきからぶつぶつと謝罪の言葉をつぶやいている。
「とりあえず、俺はすぐにでも家に帰りたいんだが、帰ってもいいか?」
「……かしこまりました、あとのことは私たちにお任せください。詳しい話は、明日ソータさんの家に人を向かわせますので、後ほど」
「頼む、それじゃあ」
俺は急いで屋敷へと走り出した。




