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交渉の重要性

 鏖殺の死体を冒険者ギルドに預けてから十五日が過ぎたので、俺は鏖殺を受け取るためにギルドに来ていた。


「――それで、調査結果は聞いてもいいのか?」

「あぁ、かまわない。それに討伐したのはお前たちなんだから、調査結果を聞くことができるくらいの権利は当然あるさ」


 俺と同じくソファーに座っているオーウェンに尋ねた。すると、オーウェンは執務机から数枚の紙束を持ってくる。


「そうだな……まず調べた結果、通常種とは外見だけではなく内部の構造も変異していたことが分かった」

「内部の構造がか?」

「あぁ、鏖殺の体内には動物型の魔物のものと相似する、血管や体中に血を送り出す『心臓』のような器官、それと赤い血液が存在していることが分かった」

「動物型の血管や心臓って……鏖殺の元の生物は昆虫なんだろ? あり得るのか、それ?」


 俺の知識では昆虫は心臓は持っていたとしても、動物などと同じような構造をしている者は存在しない。

 赤い血液を持つ昆虫は知ってはいるが、それでも動物と相似した器官を持つ昆虫と言われても、いまいちピンとこないのだ。


「あり得るもなにも、これは事実だ。それに、変異した魔物の構造が通常種と違うことなど多々ある。まぁ、鏖殺ほど違うのは珍しいがな」

「へぇ……。まぁこの話はこのくらいでいい、それで鏖殺が保管されているのは前の倉庫か?」


 俺は学者ではないので、通常種と違う点がある程度わかればそれでいい。

 今後二度と鏖殺は現れないだろうしな。


「まぁそうなんだが、一つ頼みたいことがあってな」

「頼みたいこと? なんだ?」

「鏖殺の心臓を売って欲しいんだ。まだ調べたいことがあってな」


 調べたいことか。

 通常種にはない器官だし、十五日だけじゃ調べきることができなかったのかもしれないな。


「わかった、いくらだ?」

「白金貨八枚でどうだ?」

「ちょっと少なくないか? 俺たちはかなり苦労して討伐したんだが」


 こういう場合、『最初に言う金額は出せる額よりも少ないことが多い』と、アリスが言っていた。

 アリス曰く、交渉は必須らしい。


「あー……じゃあ、ミスリル硬貨一枚だ」

「それくらいならかまわない」

「……さすがにもう引っかからないか」


 やっぱり少なめの額だったのか。……うん、どうやら交渉は必須らしいな。


「もう騙されないからな」

「騙すって人聞き悪いな、これはちゃんとした交渉だぞ?」

「どうだか、口に出すのは簡単だしな」

「はっ、最初にあったときと比べて随分と生意気になったもんだ。――あぁ、そういえば忘れていたものがあったな」


 オーウェンはそう言うと、引き出しからいくつかの袋を取り出してきた。それらには全て異なった紋章が描かれている。


「これは?」

「各地から鏖殺を討伐した者たちに渡してほしいと言われた謝礼金だ、受け取っておいてくれ」


 俺は袋の一つを掴み、紐をほどいて中を見てみる。

 そこにはミスリル硬貨が五枚入っていた。


「……なぁ、もしかしてこの袋の全てにミスリル硬貨が入ってるのか?」


 袋は全部で八個。しかも、そのすべてに硬貨が数枚入っている。


「さぁな、俺は中身を見てないから分からんが、音とか大きさからして多分そうじゃないか?」


 袋のすべてにミスリル硬貨が五枚ずつ入っているとしたら、合計でミスリル硬貨が四十枚にもなる。こんなの、チェイスの貴族街の一等地に屋敷を立てたとしてもお釣りが返ってくるような額だ。

 ……正直、こんなにもらっても後が怖いんだが。


「ま、まぁ、ありがたくもらっておくよ」


 俺は袋をすべてストレージに収納した。

 こんなのを持っていると知られたらいろいろと怖すぎる。あとでこれの使い道は二人と相談しないとな。


「それじゃあ、倉庫に行くか」


 俺は鏖殺を受け取るために、オーウェンに付いて行った。

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