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出陣

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 チェイスに唯一ある城門の前には、およそ五千人を超える様々格好の者たちが集まっていた。


 ここにあつまった者たちは、騎士が九百七十八人。そして、一昨日大々的に募集されたベヒモスの討伐作戦に参加した、冒険者千七百九十一人だ。

 それらの者を見送りに来た者たちもおり、かなりの数になっている。


 武装した者たちは、来てくれた家族などの親しい者たちと一時の別れの言葉を交わしている。

 現在の時刻は八時四十分。

 ここにはベヒモスの討伐作戦に参加するすべての者が集まっていた。


 しばらくすると、見送りがすんだのか私服の者たちが整列された騎士や冒険者たちから離れていく。そして、皆の前に見事な槍を持った男――騎士団長の『バナン・ガルシア』が、用意されていた台に立った。


「皆の者! まず、これほどの人数が今回の討伐作戦に参加してくれたこと、嬉しく思う!」


 今回の作戦はバナンが指揮を取ることになっている。

 チェイス守護の指揮はオーウェンに任せたそうで、今のバナンは冒険者にも命令できる権限をもつ。


 三分ほどバナンは今回の作戦の説明や、今後の大体の予定などについて話した。

 事前に大体は伝えられていたので、事実確認的な意味合いが強い。


「――皆生きて帰ってこようぞ! それでは、出陣っ!!」

『うおおおおおおおおぉっ!!』


 スピーチを聞いていた者たちが一斉に雄叫びを上げる。それは声ではなく、振動とさえ呼べるものだった。

 バナンはスピーチを終えると、馬に乗って陣の前の方へ走っていった。


「それじゃあ、行くわよ」


 アリスは馬に乗った。

 今回の作戦では一切道のない森の中を進むため馬車は使えず、歩いて向かうことになったのだ。しかし全員歩きではなく、戦力として期待されている者などには馬が貸し出されていた。

 ちなみに、騎士団長などの上層部や騎士のほぼ全員は自分の馬を持っているらしい。


「はい、行きましょうか」

「……なぁ、やっぱり乗らなきゃ駄目か?」


 昨日俺たちのパーティーにも馬が三頭貸し出されたのだが、俺は馬に乗った経験など一度もなかった。

 数時間練習したのだが、まともに乗れこなすことはできなかったのだ。どうやら、俺に乗馬の才能は無いらしい。

 ――で、どうなったのかというと……。


「ほら、早く乗りなさいよ」

「……あぁ」


 俺はアリスの後ろに座った。

 結局、馬に乗ることはできなかったので歩くことにしたのだが、アリスが『私の後ろに乗ればいいじゃない』と言ったので、なぜかこうなった。

 男が後ろに、小さな女の子が前に座っているのは別に変ではない。だが、その女の子が手綱を握っているのはいささか滑稽ではないだろうか?

 さっきからこっちを微笑ましく見ている者や、苦笑浮かべている者がいたりする。

 ……穴があったら入りたい。


 そんなことを思っていたら列が進み出した。俺たちは丁度列の中腹あたりにいる。

 重い鎧を着た者もいるため、移動速度は遅い。

 目的の場所までは二日ほどかかるそうだ。そして、移動する間はつねに馬に乗っている手筈になっている。……死にそう。


「あー……もう、いっそのことベヒモスの方から来いよな」

「なに言ってるのよ、来たらダメだから討伐に向かっているんじゃない」


 俺は決して叶うはずのない願望をつぶやいた。


 ――  ――  ――  ――  ――


 途中で馬や歩いている者のために休憩を何度か挟みつつも順調に歩を進め、その日の夜は森の中で野営をすることになった。

 ここへ来る途中に何度か魔物に襲撃されたのだが、幸い死人は出ていない。

 すでに怪我を負った者も回復魔法使いに治療されていた。


「それにしても、夜番をしなくていいのは助かったな」

「そうね、何度かしたことがあるけど、あれって結構きついのよね」


 ここは魔物の闊歩する森の中だ。夜番なしに寝る事ができるほど、ここは安全であるはずがない。そのため、当然夜番をする者が必要だった。

 事前に夜番は冒険者がすると決まっており、冒険者の大半は夜中に数時間起きていなければならなかった。だが、俺たちのパーティーなんかは戦力として期待しているという理由で免除されたのだ。


 空は赤くなっており、森の中であるためかすでに周囲は暗くなっている。あちこちに焚き火があり、あたりを明るく照らしていた。


 いま、ここには俺とアリスしかいない。

 アルバニアは『鍛練してきます』と言って、少し前にコンポジットボウを背負ってどこかへと歩いていったのだ。


「寝たいのに寝れないのはつらいよな」


 俺は腰掛けていた倒木から立ち上がる。


「どこに行くの?」

「ご飯も食べたし、寝るのにはまだ早いから本でも読んでる」

「そう、どんな本を持ってるの?」

「魔法や魔術、魔物の図鑑やらおとぎ話なんてのもあるぞ」


 それ以外にも、錬金術に植物や動物の図鑑なんてのもある。

 あと、怖くて開いてすらいないが、黒い表紙に骸骨が描かれた本なんかも持っていた。


「魔法の本はどんなのがあるの?」

「どんなのって、各属性の魔法を専門に解説している本なんかが多いが……」

「じゃあ、水属性の本を貸して!」

「それは別にいいが、ここだと火の粉が飛んでくるからあっちの木の下でな」


 俺とアリスは木の下へと移動した。

 ストレージからランタンを取り出して魔力を流し火を灯す。そして、俺はストレージから水属性魔法に関する本を四冊取り出した。


「はい」

「ありがとう」


 アリスに本を渡し、俺はまだ途中までしか読めてない本を読み始めた。

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