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二本の鎌

「――ロックシュート!」

「ギャンッ!?」


 《ロックシュート》によって打ち出した岩が、灰色の体長二メートルほどの野犬の横腹に直撃する。

 野犬は吹き飛ばされるが、打ちどころがよかったのか立ち上がろうとする。しかし、次の瞬間にはアルバニアの放った矢が眉間に突き刺さり、野犬は絶命した。


「……まさか、森に入って五分くらいで野犬の群れに襲われるとは思ってもいなかったな」

「ですね、本来この魔物は果ての森にしか生息していないはずなのですが……」


 そう言ってアルバニアは周りに転がっている野犬たちの死体を見た。

 首が切断されたものや矢が急所に刺さり即死したものなど、少なくとも十五体は転がっている。


「どうやら、こっちも片付いたみたいね」


 声のした方を見ると、アリスがこちらに歩いて来ていた。


「あぁ、そっちは大丈夫だったか?」

「特に問題なかったわ、こっちは三匹しか相手してなかったしね」


 この野犬たちは、アリスが俺たちから離れた一瞬の隙に襲ってきたのだ。なので、俺たちは二手に分かれてしまった。


「そうか、ならよかった。それで、この野犬はなんていう魔物か分かるか?」

「『ファングドッグ』ね、ランクはDよ。一匹一匹はそれほど強くないけど、必ず群れで行動していて、集団で襲いかかってくる厄介な魔物ね」

「確かに厄介だったな、妙に賢かったし」


 三人でいる時は襲わず、アリスが離れた隙に丁度襲いかかって来たのだ。これは偶然なのだろうか?


「とりあえず、死体を回収しておくか」

「そうですね、この魔物では依頼の報酬をもらうことはできませんが、それなりの額で売ることができますしね」


 俺は辺りに転がっているファングドッグの死体をストレージへと収納していった。

 そして、再び新たな獲物を求め森の奥へと入っていく。


 ――  ――  ――  ――  ――


「――! いたぞ」


 血の臭いがしたため警戒しながら歩いていると、ある魔物を見つけた。

 それは、体色が緑色の巨大な鎌状の前脚を持っている昆虫――そう、カマキリだ。しかし、そのカマキリは異様に大きく、体長が三メートルほどもあった。


 カマキリは首が叩き切られた灰色の狼の魔物の腹を貪っていた。

 見たところ、殺されたのはそんなに前ではないようで、まだ血が斬られた断面から流れ出ている。


「……『ソルジャーマンティス』ね、Cランクの魔物よ」

「よし……いくぞ」

「はい、後ろは私たちにお任せください」


 俺はストレージからバスタードソードを取り出し、ソルジャーマンティスの方へ走り出した。


「ギ? ギィィィッ!」


 ソルジャーマンティスは俺に気がつくと、鎌を振り上げ翅を広げた。

 俺はかまわずバスタードソードをソルジャーマンティスの脚に横薙ぎに振るう。だが、ソルジャーマンティスは左の鎌を使って、いともたやすくバスタードソードを受け止めた。


「なっ!?」


 鎌に当たったとしても、叩き折ることはできるだろうと考えていたが、想像していたよりも数倍硬かった。


 ソルジャーマンティスは右の鎌を振り下ろして来る。

 俺はそれを横に跳んでよけて、再び剣を横薙ぎに振るった。しかし、今回も簡単に止められてしまった。


「ギイイイィィィィィィッ!?」


 アルバニアの放った矢がソルジャーマンティスの目に突き刺さる。目に突き刺さった矢による痛みからか、それとも攻撃された事による怒りからか、耳障りな金切り声を上げた。

 ソルジャーマンティスは俺から目を離し、アルバニアの方へ向く。俺はそんな隙だらけだったソルジャーマンティスの左の鎌を斬り飛ばす。


「ギィィィ――! ギイイイィィィィッ!!」


 ソルジャーマンティスは金切り声を上げながら、俺へ右の鎌を横薙ぎに振るおうとする。しかし、どこからか飛んできた水の刃が右の鎌を切断した。


「私のことを忘れないでもらいたいわね!」


 すると、ソルジャーマンティスは口を開いき、鋭い牙を剥き出しにしながら俺に噛みついてきた。

 俺はそれを横へよけると、今まで高いところにあり斬ることができなかったソルジャーマンティスの首を斬り飛ばした。


 ソルジャーマンティスの体は、頭がなくなったにもかかわらず動き回る。だが、しばらくするとソルジャーマンティスは地面に崩れ落ち、動かなくなった。


「……こいつ、本当にCランクなのか? 強さ的には、Bランクはあったと思うんだが……」


 俺はソルジャーマンティスの死骸をストレージに収納する。

 戦ってみた感じ、バンダースナッチと強さは大差ないように思えた。


「確かに近接戦闘ではランクBほどの強さはあるけれど、ソルジャーマンティスは近接戦闘をしているときは遠距離攻撃に対して無防備になるのよ。だからランクCなの」


「へぇ……なぁ、魔物のランクってどういう基準で決まっているんだ?」


 どうにも単純な強さで決まっているわけではなさそうだ。


「ランクっていうのはその魔物の『総合的な戦闘力』によって決まっているわ。例えば、ワイバーンは飛行していなければランクBくらいの強さしか無いけど、飛行することができるという理由でランクAになっているわね」


 なるほど、確かに高い戦闘力を持っていたとしても、簡単に対処できるなら高ランクにしておく必要もないのか。


「そうか。ありがとう、教えてくれて」


「べ、別にかまわないわ。だから、分からないことがあったらなんでも聞きなさい、わかる範囲で答えてあげるから」


 アリスは俺から顔を背け、そっぽを向いた。

 あまり感謝されなれてないのかもしれない。


「ここにじっとしているのもなんだし、そろそろ行きましょう!」

「ふふ、そうですね。では行きましょうか」


 俺たちは再び森の中を歩き始めるのだった。

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