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パーティー登録

 朝六時の鐘が鳴る頃、俺は食堂に来ていた。

 初めてこの時間に食堂にきたが、昨日とは比べものにならないほどの冒険者らしき者たちが朝食を食べていた。

 冒険者はこれくらいの時間に活動しだす、というのは本当だったらしい。


「あ、ソータ! こっちよ!」


 そんな声が聞こえてきたので、その方向を見る。

 そこにはアリスとアルバニアに座っており、アリスがこちらに手を振っていた。


「いや、そんな大きな声で呼ばなくても分かってるからな。なんか注目されてるし……」


 食堂にいた者たちが、アリスや俺に視線を向ける。だが、どうでもいいとでも思ったのか、すぐに食べていた物へ視線を戻した。


「ご、ごめんなさい、次から気をつけるわ」

「あぁ、そうしてくれ。あっ、野菜のスープと鳥の串焼きをくれ」

「えっと……私はシチューと水で」

「私は豆のスープと川魚の塩焼きをお願いします」


 どうやら、二人は俺が来るまで注文するのを待っていてくれたようだ。


「全部で金貨一枚と銀貨十五枚になります」

「はい」


 俺はストレージから金貨一枚と銀貨十五枚を取り出して、店員に渡した。

 店員は軽く礼をし、厨房へと戻って行く。


「別に私たちの分は出さなくてもよかったのよ?」

「これくらいかまわない。それに、パーティーを組むんだからこれくらいはさせてくれ」

「まぁ、そういうことなら、ありがとう」

「何度も言うが、別にかまわないさ」


 それからしばらく待っていると、店員が注文した料理を持って来た。

 俺たちは料理を食べ始める。そして、十分ほどすると全員食べ終えた。


「よし、それじゃあ冒険者ギルドに行くか」

「そうね、今行けばまだ混む前だしね」


 俺たちは冒険者ギルドへと歩き始めた。

 冒険者ギルドに着くと、なにやらギルドの横にある掲示板の前に人だかりができているのを見つけた。


 俺は隙間から覗いてみる。

 そこには五十センチ四方ほどのあまり品質のよくない紙に、手書きで文字が書かれていた。

 よく見ると、そこには調査のためにフェリクスの森を三日間閉鎖する旨が書かれている。

 昨日オーウェンが言ってたし、そこまでの驚きはなかった。


 俺たちはギルドの中へ入る。すると、ギルドの中は非常に慌ただしい様子だった。

 職員たちが書類を持って動き回っており、何らかの不測の事態が起きたのは見て取れた。

 俺たちは受付へと歩いて行く。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。なにか御用でしょうか?」

「ずいぶんと慌ただしいが、なんかあったのか?」

「……実は果ての森から『ソルジャーマンティス』と『ダイアウルフ』がフェリクスの森に移動したという報告がありましたので、そのことで忙しくなっているのですよ」

「ソルジャーマンティスとダイアウルフって?」


 本で見た事があったと思うが、忘れてしまった。


「ソルジャーマンティスとダイアウルフはどちらもランクCの魔物よ。普段は果ての森の奥にいるはずなんだけど……」

「昨日のバンダースナッチといい、果ての森でなにか異変が起きているのかもしれませんね」

「はい、その可能性が高いですね。正直、勘弁してほしいものです。ほかに御用はありますか?」


 受付の女性が俺たちに尋ねてくる。


「あぁ、パーティーの申請をしたい」

「かしこまりました、少々お待ちください」


 受付の女性はそう言うと、後ろにある棚から一枚の紙を持って来た。


「こちらはパーティー申請書です。必要事項を記入してください」


 俺たちはパーティー申請書に名前やランクなどを記入していく。しかし、ある項目につまずいた。

 パーティー申請書の一番上には、『パーティーリーダー』という項目がある。リーダーは誰にするのかというのは、全く話し合っていなかった。


「なぁ、リーダーは誰にするんだ?」

「そこはソータでかまわないわ」

「いいのか? 俺がリーダーで」


 俺にリーダーを任されても、さしてそれらしい活躍はできないと思うが……。


「えぇ、かまわないわ。リーダーはパーティーの代表ってだけだから、特別なにかあるわけではないしね」

「まぁ、そういうことなら」


 俺はパーティーリーダーの欄に、『ソータ』とこちらの文字で書いた。


 理由はわからないが、俺はこの世界の言葉も文字も理解し、話し、書くことができた。なぜできるのかは分からないが、もう考えないようにしている。

 できないよりはできた方が便利なのは違いないからな。

 それと、奏多と書こうとしても該当する文字がなかったというのもある。日本語で書いたとしても、通じないだろうしな。

 俺は申請書を渡すと、女性は申請書を確認してハンコを押した。


「少々お待ちください」


 女性は受付の中にある階段を上っていき、しばらく待っていると下りてきた。手にはギルドカードと同じ大きさのカードを三枚持っている。


「お待たせしました、こちらは『パーティーカード』と呼ばれているものです。パーティーで依頼を受ける際には必要になりますので、決して失くさないでくださいね」


 俺たちはパーティーカードを受け取った。

 パーティーカードには、リーダーやメンバーの名前や性別に、ランクが書かれていた。

 俺たちはウエストポーチやストレージに、パーティーカードを収納した。


「ほかにも御用はありますか?」


 俺は二人に視線を向けてみるが、二人は首を横に振った。


「いや、特にはない」

「そうですか。それでは、またのご利用お待ちしております」


 俺たちはギルドの外へ出る。掲示板の前にできていた人だかりも、いくらかは少なくなっていた。


「それで、この後はどうするんだ?」

「そうね、二人とも何か予定とかある?」


 予定か、別に……いや、一つやっておきたかったことがあったな。


「私はありません」

「そうだな……俺は武器屋に行ってみたいな」

「武器屋? なんでまた?」

「実ははぎ取り用のナイフを持ってなくてな。それで頃合いを見て買いに行こうと思ってたんだ」


 いつまでもバスタードソードで剝ぎ取るわけにもいかないだろう。できるだけ早く買っておく必要がある。


「そう、なら私もついて行くわ。姉さんは?」

「私も矢を補充しようと思うので同行します」

「じゃあ、いい店を知っているからそこへ行きましょう! ついてきて!」


 アリスはそう言うと、武器屋があると思われる方向に歩き始める。俺とアルバニアはその後ろについて行った。

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