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 俺たちは酒場で昼食として様々な料理を食べていた。


「……もっと柔らかいパンって売ってないのかな」


 俺はスープでふやかした黒いパンを口に入れる。

 ここに来て食べたパンは全て、スープなんかでふやかさないと硬すぎて食べられないような黒いパンだけだ。

 だからそのまま食べられる食パンなんかが恋しくなってきた。


「いちおう売っているけど、かなり高いわよ。この辺は農業に適した土地はないし、そもそも魔物がたくさんいるもの、農業ができるはずがないわ」


 確かに、今まで畑を見た記憶が一切ないな。そんな理由があったのか。

 そうなると、俺の頭に素朴な疑問が浮かんできた。


「じゃあ、なんでパンがあるんだ?」

「ほかの町から取り寄せているのよ。だから、保存のきく黒パンがほとんどなの」


 アリスは黒パンをスープにひたしながらそう言った。


「まぁ、黒パンを食べられるだけ恵まれていますね。貧乏な村や家では、麦粥しか食べることができないのですから。私も食べたことがありますが、あれはもう食べたくはないですね」


 アルバニアは麦粥の味を思い出したのか、苦虫を噛み潰したような顔をする。

 麦粥ってそんなにまずいのか?


 それから五分ほどすると、オーウェンがこちらに近づいて来た。手には白い袋を持っている。

 オーウェンは俺たちのいる机の空いている椅子に座った。


「待たせたな、これで全部だ。いちおう確認してくれ」


 オーウェンはそう言い、俺に袋を渡してくる。

 袋を閉じている紐をほどいて中を確認してみると、そこには白色に輝くきれいな貨幣が六枚入っていた。


「あぁ、ちゃんと六枚ある」

「そうか、なら早くしまっておけ。贅沢しなければ一枚で一ヶ月暮らせるだけの額なんだからな」

「わかった」


 俺は袋をストレージに収納した。

 これで当面の軍資金は確保できたな。


「ふぅ……」


 唐突に、オーウェンがため息をつく。


「どうしたのよギルドマスター、ため息なんかついて」

「いやなに、フェリクスの森にバンダースナッチがいたということは、まだほかにも高ランクの魔物がいてもおかしくはないだろ? そんなところに低ランクの冒険者を入らすわけにはいかないから、大規模な調査を行おうと思ってな。そうなると、忙しくなるわけだ。そう思うとな――」


 オーウェンがまた、ため息をついた。


「ということは、明日フェリクスの森は閉鎖するのかしら?」

「そうなるな」

「そう……まぁ、仕方ないわね」

「すまんな。……さて、それじゃあ俺は仕事に戻るとするか。じゃあな」


 オーウェンは立ち上がると、受付の中にある階段を上がっていった。

 それからしばらくして、全員が食べ終わった。

 俺たちはギルドを出て銀狼亭の方へ歩いて行く。


「そういえば、二人は依頼を受けていたんだよな?」

「そうね、それがどうかしたの?」

「いや、報酬を受け取っていなかったと思うんだけど」


 ギルドではアリスたちとずっと一緒にいたが、報酬などは受け取っていなかった。俺はもらい忘れているのかと思い、そのことについてたたずねてみた。


「あぁ、そういうこと。私たちが受けていたのは、先払いの依頼だったのよ」

「そんなのがあるのか?」

「はい、私たちはもう報酬は受け取っているんですよ」


 アリスとアルバニアがそう答える。

 そうして歩いていると、銀狼亭にたどり着いた。


「……ソータ、少しいいかしら?」

「なんだ?」


 アリスが突然話しかけてくる。その顔は、真剣そのものだ。


「今日の夜六時に、食堂へ来てくれないかしら? 少し話がしたいの」

「それは別にかまわないが、今じゃダメなのか?」

「ゆっくりと話をしたいから食堂がいいのよ、ダメかしら?」


 まぁ、なにか減るわけではないし、別にいいか。


「わかった、六時に行けばいいんだな?」

「えぇ、お願いね」


 アリスたちは銀狼亭の中へと入っていった。


「……とりあえず、俺も中に入るか」


 中に入ると、受付には朝にも会った女性がいた。どうやら、客の対応をしているようで、二人の男とカウンターを挟みながら会話している。

 女性は俺に気がつくと小さく会釈した。俺は軽く手をあげて階段を上り、俺が泊まっている十三号室へと入る。


「六時まで本でも読んでいるか」


 俺は椅子に座ると、懐中時計と読みかけの本を取り出して、読書を始めた。


 ――  ――  ――  ――  ――


 本を読んでいると、鐘の音が五回鳴り響く。懐中時計を確認すると、丁度六時になるところだった。


「……もう六時か、食堂に行かないとな」


 本と懐中時計をストレージに収納する。そして、部屋の鍵をかけて食堂へとやって来た。

 食堂の中を見回すと、すみの方に二人の姿があった。俺はそこに近づき、空いてある椅子に座る。


「あっ、ソータ、来てくれたのね」

「まぁな。それで、話ってなんなんだ?」

「とりあえずなにか料理を頼みませんか? 話をするのはそれからでも遅くないですし」

「そうだな、じゃあなにか頼むか」


 俺はお食事券使用者専用のページから、野菜炒め定食を注文することにした。


「野菜炒め定食で」

「じゃあ、私も」

「私も同じく」

「かしこまりました、少々お待ちください」


 そして、しばらく二人と雑談していると、店員が野菜炒め定食をを持って来てくれた。

 野菜炒め定食は、メインの野菜炒めに豆の入ったスープと黒パン、それと水という構成だ。

 俺たちは、スプーンやフォークを持って定食を食べ始めた。


「それで、話なのだけれど」

「あぁ、聞かせてくれ」


 俺はアリスに先をうながした。


「わかっていると思うけど、私と姉さんは冒険者として二人で活動しているわ。それで、私は魔法使いで姉さんは短剣も使えるけれど弓使いで、どちらかと言えば後衛なのよ」

「あぁ、つまり?」

「私たちのパーティーには前衛が不足しているの。だから、剣士であるソータがパーティーメンバーに欲しいのよ」

「なるほど」


 誰かとパーティーを組む気は全然なかったのだが、だからといって組まない理由はない。しかし――。


「パーティーを組むことによって、なにかデメリットのようなものはあるか?」

「特にはありません。強いていえばパーティーで依頼を受けた場合、報酬は山分けにすることと、パーティー内での揉め事はパーティー内で解決するのが基本になりますね」

「それだけか?」

「デメリットはこれくらいですね」


 そういうことなら、パーティーを組むのもいいかもしれないな。


「それと、もちろんメリットもあります」


 俺がなかなか答えを出さないので迷っているとでも思ったのか、アルバニアがメリットを提示しだした。


「まず、パーティーで活動することによって生存率が上がります。そして、パーティーを組んでいると、パーティーメンバーの一番上の者のランクまでの依頼を受ける事ができるようになります」


 二人のランクはDだったはずだ。

 俺はランクGだが、Dまでの依頼を受ける事ができるようになるのはかなりでかい。GとDでは報酬もそうだが、依頼の数も倍ほども多いのだ。


「そういうことなら、是非とも俺をパーティーに入れてくれ」

「本当! いいの!?」

「あぁ、一人よりもパーティーで活動した方が面白そうだしな」


 ずっと一人でいるよりは、仲間がいた方が賑やかだろうしな。


「そうと決まれば、明日冒険者ギルドにパーティー申請しに行くわよ!」


 あぁそうか、パーティーを結成したりするには申請が必要なのか。


「じゃあ、明日何時に集合する?」

「そうね、それじゃあ朝の六時にここの食堂に集合しましょう」

「それは……ちょっと早すぎないか?」


 流石にそれはいくらなんでも早すぎる気がする。もうちょっと後でもいいと思うんだが……。


「別にそんなことはありませんよ。冒険者はそれくらいの時間に活動を開始するのが一般的ですので」

「わかった、明日の朝六時に食堂へ集合だな」


 そういうものなのだろうか? まぁ、郷に入っては郷に従えと言うしな。今日は少し早めに寝ることにしよう。

 俺は野菜炒め定食を食べ終わると、立ち上がった。


「じゃあ、俺は先に部屋に帰るよ」

「そう。それじゃあ、おやすみ」

「おやすみなさいませ」

「あぁ、おやすみ」


 食堂を出て階段を上がり、俺の部屋へと入る。そして懐中時計を取り出した。


「六時半か、本を読むのは九時までにするか」


 椅子に座ると本とランタンをストレージから取り出した。そして、ランタンに魔力を流して灯し、俺は本を読み始めた。

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