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ギルドへ報告

 俺たちは踏み固められた森の中を歩いて行く。

 空に雲はそれほどなく、太陽も真上にあるためそれなりに暑い。だが、木々が日差しを遮り、ほどよく風も吹いているので不快感はそれほどなかった。


「それにしても、この森にはランクDの魔物までしかいないって聞いてたんだが、あの狼の魔物がDなわけがないよな?」


 あの狼はランクCのブレインイーターよりも明らかに強かった。

 少なくとも、ランクCはあるはずだ。そうじゃないと、『ランク』というものの定義がよくわからなくなってくる。


「はい、このフェリクスの森には基本的にランクDまでの魔物しか生息していません」

「そうね。たぶんだけど、あの魔物は『バンダースナッチ』だと思うわ」

「バンダースナッチ?」


 聞いたことのない魔物だ。


「えぇ、私は本でしか見たことがないけど、あの黒い毛皮に灰色の斑模様は間違いないと思うわ」

「ランクは?」

「Bよ」


 そりゃあブレインイーターよりも強いわけだ。ていうか――。


「……なんでそんなのがこの森にいるんだ?」

「それは知らないわ。……でも、これはこれでよかったのかしら?」

「どういうことだ?」


 『いるはずのない場所に強力な魔物がいた』、これにいい要素なんて全くないはずだ。


「実は最近、フェリクスの森で冒険者の行方不明が増えているんです。それで今回、私たちはそのことについて調査しに来ていたんですよ」

「つまり、その元凶があの魔物ということか?」

「はい、そうだと思います。ソータさんが来てくれていなかったらと思うと……不幸中の幸いでした」

「そうか、ならよかった」


 どうやら、あの魔物はかなりの人数を殺していたようだ。

 なんの監視下にもない状態で、あんなのが野放しになっているというんだから、恐ろしい。


 それからしばらく歩き、三十分ほどしてチェイスの城門に到着した。

 すでに三人先客が並んでいたため、俺たちはその後ろに並ぶ。


「ソータさん、それにアリスさんとアルバニアさんも、ご無事でなによりです」


 俺たちの番になると、門番のカーシーが安堵した様子で話しかけてきた。


「皆さん、依頼は無事達成できましたか?」

「依頼はな」

「えぇ、依頼は達成したわね。……無事かは知らないけど」


 核心のつかない俺たちの回答に、カーシーは疑問符を浮かべた。


「……まぁ、無事ならよかったです。それでは手続きをしますので、ギルドカードを見せてください」


 アリスたちは腰にある小さなサイドポーチから、俺はストレージからギルドカードを取り出した。


「少々お待ちください。……手続きが完了しました。それでは、ごゆっくり」


 カーシーは持っていた板になにかを書き記した。

 俺たちは門を通り、町の中へと歩き出す。


「とりあえず、まずはギルドに行くか」

「そうね、依頼のこともあるし」

「それに、バンダースナッチのことも報告しないといけませんしね」


 しばらく歩くと、冒険者ギルドに着いた。

 中に入ると、昼だからか食事をしている者がそれなりにいる。だが、受付には誰も並んでいない。

 俺は今朝受付してもらった女性のところに並んだ。


「お早いお帰りですね、ご無事でなによりです」


 どうやら、女性は俺のことを覚えていてくれたようだ。


「依頼を達成したんだが、耳はここに出せばいいのか?」

「はい、専用の容器がありますので、こちらにどうぞ」


 俺は女性が出してきたくすんだガラスの容器に、ゴブリンの右耳を五つ入れた。


 ゴブリンが六匹現れてくれてよかった。一体の右耳は、戦闘の影響で真っ二つになってしまったからな。


「これにて依頼達成です。そして、報酬の銀貨五十枚になります」


 女性は後ろに置いてある鍵のついた棚から、銀貨を五十枚を出してきた。十枚ずつに分けられており、とても数えやすい。

 俺が銀貨をストレージに収納すると、アリスたちと場所を変わる。


「次は私たちの方をお願い」

「はい、アリスさんたちはフェリクスの森の調査でしたね。森の様子はいかがでしたでしょうか?」

「そのことなんだけど、ギルドマスターに直接話があるの。話を通してくれる?」

「……それほどのことなのですか?」


 女性はアリスに真剣な眼差しを向けて、疑問を口にした。


「えぇ、そうよ」

「私の方からもお願いします、今回はその方が事が円滑に進むと思いますので」

「かしこまりました。ギルドマスターに話を通してきます、少々お待ちください」


 女性は受付の中にある階段を上がっていく。

 案外、ギルドマスターというのも忙しい結構忙しい職なのかもしれないな。


「ねぇ、ソータもギルドマスターへ報告するのについて来てくれないかしら? 私たちだけだと、説明できないこともあるし」

「倒したのは俺だしな、それくらいかまわない」

「ありがとう、助かるわ」


 どうせ行かなくても呼ばれるだろう。なら、めんどくさがって立ち去るより、さっさと片づけたほうが面倒がなくて済む。

 しばらく待っていると、女性が階段から降りてきた。


「ギルドマスターがお待ちです、どうぞこちらへ」

「分かったわ、ありがとう」


 俺たちは女性の後ろについていく。

 階段を上がり、しばらくすると昨日も来たオーウェンの執務室へたどり着いた。

 女性が執務室の扉を叩く。


「ギルドマスター、アリスさんたちをお連れしました」

「あぁ、入れ」

「失礼します」


 女性は扉を開けて中へと入る。俺たちもそれに続いた。


「ご苦労だった、下がれ」


 オーウェンの言葉に女性は一礼し、扉を閉めて出ていった。


「さて……ん? ソータか、お前も今回の事に関わっているのか?」

「まぁ、そうだな」

「そうか。まぁ、まずは報告の方から聞くか」


 オーウェンは真剣な顔をする。


「まず、いつもそれなりに見かけるゴブリンの数が少ないように思えたわ。そして、真新しい血や魔物なんかの死体が大量にあったわね」

「なるほど、続けてくれ」

「それと、冒険者の死体がいくつかあったから、回収できるものはギルドカードを回収してきたわ」


 アリスはウエストポーチから四枚ギルドカードを取り出した。オーウェンはそれらを見ていく。


「……確かに、行方不明とされた者たちだな、助かる」

「それと……森である魔物に出会ったわ」

「なんという魔物だ?」

「バンダースナッチよ」

「…………は?」


 オーウェンはアリスの言葉を聞いた瞬間、硬直する。やがて、驚愕し目を見開いた。


「なぁ、それって見間違いじゃないのか? 流石にバンダースナッチがフェリクスの森にいるとは思えないんだが……」

「そう、なんなら見てみる?」

「……もしかして、バンダースナッチを倒したのか?」

「倒したのは私たちじゃないけどね」


 アリスがそう言うと、オーウェンは俺の方へ向いた。


「確かに倒したのは俺だ。ストレージに入ってるし、見るか?」

「そうだな……一階に倉庫がある、ついてきてくれ」


 受付の後ろに扉があったが、たぶんその奥に倉庫があるのだろう。


「わかった、アリスたちは?」

「もちろんついて行くわ」

「私もそうさせていただきます」


 オーウェンは執務机の引き出しから鍵を一つ取り出すと、椅子から立ち上がった。


「よし、じゃあついて来てくれ」


 俺たちはオーウェンについて歩いて行く。

 階段を下りて、受付の後ろにある扉の中に入りしばらく歩くと、第三保管室と書かれた扉の前にたどり着いた。


 オーウェンは扉の鍵を開け、俺たちは中に入る。

 そこは外よりも十度ほど涼しく、部屋の中には様々な魔物の部位なんかが保管されていた。


「よし、この部屋ならバンダースナッチも出せるだろ。さっそく見せてくれ」


 部屋の高さは三メートルほどある。ここなら出しても大丈夫だろう。

 俺はバンダースナッチをストレージから取り出した。

 それなりにこの部屋は広いが、流石にバンダースナッチのような巨大なものがあると、そこはかとなく圧迫感のようなものがある。


 ストレージから取り出した衝撃で、バンダースナッチの脇腹から再び鮮血が流れ出した。

 ストレージの中に入っている間は時間が止まっているそうで、死体なんかを入れていても腐ることはないらしい。

 半信半疑だったが、この感じを見るとどうやら本当のことだったみたいだ。


「これは……確かにバンダースナッチだな。しかも、前に見た奴よりもでかい」

「見た事があるのか?」

「あぁ、俺は若い頃一時期冒険者をしていてな、その時に一度討伐したことがあるんだ。かなり強かったよ」


 強そうだとは思っていたが、昔に冒険者をしていたならばそれも納得だ。

 ランクBのバンダースナッチを倒すことができるということは、冒険者でいうランクBほどの実力があるのだろう。


「そうなのか。それで、こいつはもうしまってもいいか?」

「あー……それなんだが、もしよければこいつを譲ってくれないか?」

「……なんでだ?」

「詳しく調べれば、なぜこいつがフェリクスの森に移動して来たのかわかるかもしれないからな。だから、もしよければでかまわないから、頼む」


 別にそういうことなら譲ってもかまわない。だが――。


「いくらでだ?」


 もちろん、ただで譲ることなどできない。


「適正売却価格の二割増しで」

「それはいくらぐらいになる?」

「そうだな、白金貨六枚ってところか」

「白金貨?」


 『白金』ということは、金貨よりも高額な貨幣なのだろう。だが、いかんせんレートがまだわかっていないので、どれくらいの金額なのかがよくわからなかった。


「知らないのか? 白金貨は金貨十枚分の価値がある貨幣だ」


 ということは、白金貨一枚あれば銀狼亭で五十泊泊まれることになるな。

 どうやらかなりの金額のようだ。


「そうか、ならその金額なら問題ない、譲るよ」


 むしろ、俺の方からお願いしたいぐらいだ。


「そうか、感謝する。とりあえずこいつはここに置いておくとして、俺は金を持って来る。その間、三人にはこれをやるから酒場で好きに食べててくれ。色々とあったろうから、俺からのおごりだ」


 オーウェンはポケットから、金貨を一枚通り出して俺に渡した。


「もらってもいいのか?」

「あぁ、みんな苦労しただろうからな、好きに食べてくれ」

「そういうことなら、ありがたくもらっておくよ」

「太っ腹ね」

「ご厚意、感謝します」


 俺たちは部屋を出て元来た廊下を戻り、受付の階段の前に着いた。


「それじゃあ、金を持って来るから少し待っててくれ」


 オーウェンは階段を上がっていく。

 俺たちは受付を出て、食事をするために酒場の席に着いた。

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