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報奨金

 ――そこは、いくつも棺桶が置いてある不気味な部屋だった。

 かすかにだが、血の臭いがする。


「ここは死体安置室だ。少し準備するから待っててくれ」


 ルイスは棺桶を持ち上げたりして、準備を始めた。

 ……なにも入ってないとはいえ、人が入るサイズの棺桶を持ち上げるって相当力持ちだよな。


「そういや、盗賊は全部で何体だ?」

「全部で六だ」

「そうか、わかった」


 しばらくして、ルイスは俺の前に棺桶を六つ並べた。


「よし、ここに死体を入れてくれ」


 俺は言われた通りに棺桶の中に盗賊たちの死体を入れていく。

 死体からは、棺桶に入れたときの衝撃で再び血が溢れ出した。


 ついでに、盗賊たちが使っていた武器も棺桶の近くに置いておいた。

 粗悪品だし持っていても絶対に使わないだろうからな。

 盗賊をすべて棺桶の中に入れてルイスの方に向くと、なぜか驚いたような顔をしていた。


「……どうした?」

「いや、フランクリンを倒したことから腕が立つとは思っていたが……随分と派手に倒したな?」

「まぁ、確かにそうだな」


 フランクリンとかいう男はそこまでだが、ほかの奴らは頭が粉砕されているからな。派手といえば、確かに派手な倒し方だろう。


「お前さん、『冒険者』か?」

「いや、違うが」


 冒険者というのは、遺跡の隠し部屋で本をストレージに収納しているときに見たことがある。

 確か魔物などを討伐して、その魔物の素材を売ったり、依頼を受けたりしながら生活する者たちのことだったはずだ。まぁ、中には薬草のみを採集して生計を立てている者もいるらしいが。

 俺の記憶では、冒険者になるには『冒険者ギルド』という場所で登録する必要があったはずだ。


「もしよければだが……お前さん、冒険者にならないか?」

「冒険者にか?」

「あぁ、そうだ。お前さんのように強いやつは冒険者に向いているからな」


 ……まぁ、特にこれといってやりたいことも無いしな。強いて言えば、楽しくすごす事ができる場所で暮らしたいことぐらいか。

 それに、どうせここで生活するとしても旅に出てみるにしても、金が必要になるしな。できるだけ早く金を稼ぐ手段は確保しておいた方がいいだろう。


「――冒険者をやってみるのも悪くないな」

「おぉ! 冒険者になってくれるか?」


 俺はひとしきり考えてからそう結論を出すと、ルイスは嬉しそうに声を上げた。


「あぁ、それでなんだが、なんで冒険者になるのを勧めたか理由を聞いてもいいか?」


 そう聞くと、ルイスは嫌なことでも思い出したかのようにため息をついた。


「実は、去年に魔物が大量発生したことがあってな。そのときに、四分の一の冒険者が死亡するか冒険者を続けられないほどの怪我を負ってな、冒険者不足が深刻なんだ」

「……魔物の大量発生ね。だから城壁の所々が真新しかったわけだ」

「そうだな。幸い、なんとか町への侵入は食い止めたんだが、城壁にそれなりの被害が出てな。……まぁ、冒険者の喪失にくらべたら軽微ではあるんだが」


 ルイスの顔はげんなりとしていた。

 願わくばもう二度と同じことが起きてほしくない、と顔に書いてあるようだ。


「大変なんだな、隊長って」

「あぁ、本当に大変だよ。冒険者だけでは回らないから警備兵も魔物狩りに駆り出されてな。最近はかなり落ち着いてきたが、一時期は家にも帰れなかったほどさ」


 あらぬ方向を見ながら、ルイスはそう言った。

 遠い目をして、どこか俺とは違うものが見えているようだ。


「……すまなかった、なんの話だったか。――あぁそうだ、冒険者だったな。冒険者になるには冒険者ギルドで登録する必要がある。場所は城門から入った大通りにある。看板に剣がかかれてるからすぐに分かるはずだ」

「わかった、後で行ってみる」

「そうか、助かる。それと報奨金だな、ついてきてくれ」


 ルイスは部屋の外へと出ていく。俺が外へ出ると、ルイスは鍵を閉めてどこかへと歩き出した。

 階段を上ってしばらく歩くと、頑丈そうな木製の扉へたどり着いた。


「報奨金を準備してくるから少し待っててくれ」


 そう言って部屋の中へと入っていく。そして五分ほど待ってると、ルイスは手に袋を二つ持ちながら出てきた。


「待たせたな、これが報奨金だ」


 俺はルイスから袋を受けとった。

 しっかりとした重量が手に主張してくる。


「剣と弓矢が描かれている方の袋が今回の報奨金だ。全部で金貨が六枚入っている」

「そうか。それで、こっちの無地の方は?」


 なぜか無地の袋の方にも、紋章の描かれた方の袋と同じくらいの枚数貨幣が入っていた。

 わざわざ袋を二つに分ける意図が分からない。


「そっちは俺からの個人的なお礼だ。フランクリンを討伐してくれたこと、感謝している。これで少しは平和になるだろう」


 どうやら、このお金はルイス個人の財布から出したもののようだ。


「そういうことなら喜んでもらっておくよ」

「あぁ、そうしてくれると俺も嬉しい」


 俺はストレージに二つの袋を収納した。

 人の好意は素直に受け取っておくべきだと、俺は思う。


「じゃあ、俺はそろそろ行くことにする」

「そうか、ではこれを持っていけ」


 ルイスはそう言うと、銀色の貨幣を五枚胸ポケットから取り出し、俺に手渡してくる。


「それを入市税にするといい」

「もらってもいいのか?」

「かまわん、もっていけ。それくらい金額なら誰が出したとて、そう変わらん」

「わかった、ありがたく使わせてもらうよ」


 俺は銀貨をポケットに入れておいた。


「ソータ、元気でな」

「あぁ、またな」


 俺はルイスと別れ来た道を戻り、最初に入った場所から外へ出た。

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