奪われた体とスキル
スキル授与式は終わった。
私はなぜだか剣聖のスキルを得て、勇者パーティーの人達にしつこく勧誘されたが、戦闘なんてごめん被るので、辞退して逃げ出した。
「あ、二人とも置いて帰ってきちゃった、まあ、いいか」
クアンザの落ち込んだ顔が気になったが、明日にでも様子を見に行こう。
今日は疲れた。
私はさっさと寝ることにした。
翌日。
扉をコンコンと叩く音で目が覚める。
「……誰よ、こんな朝はやくに……」
睡眠を邪魔されて不機嫌なまま玄関に向かう。
扉を開けると、そこにいたのはクアンザだった。
「クアンザ? 何よ、こんな朝に……」
「ロッカ、悪く思うな」
「えっ」
突然。
クアンザに抱き付かれたと思ったら
唇を重ねられていた。
「~~~!?」
もがくが、力の差は歴然で、振りほどけない。
数秒ほどして、唇が離された。
「このっ……どういうつもり!?」
「おおっ、マジかこいつは……」
「え!?」
目の前には、私がいた。
「ロッカ、俺は、勇者パーティーに入って魔王と戦いたいんだ、だから、《ファーストキス》なんて意味不明なスキル貰って落ち込んだぜ……」
目の前の私はひどく乱暴な口調で私に喋ってくる……
「《ファーストキス》……それは、スキル書にも載ってない特殊なスキルだって、神官に言われて、少しは期待もしたんだ。 でもな、スキルの効果を調べて貰ったら、『ファーストキスした相手と体を入れ替える』って効果で……結局また落ち込んだ、が……」
そこで目の前の私、おそらくクアンザはニヤリと口角を上げる。
「お前が《剣聖》のスキルを手に入れたって聞いて、これも天の計らいだったんだと思ったぜ、体と一緒にスキルも入れ替わるみてえだからな!」
「ふざけないで!!」
私は間髪入れずにひっぱたこうとしたが、自分の顔をたたくのに躊躇してしまい、手が止まってしまった。
「へへっ、すまねえな、ロッカ。でも魔王討伐には行かねえんだろ? 俺が魔王倒したらちゃんと体は返してやるからよ、少しの間、辛抱しててくれよな!」
そう言うな否や私の体をしたクアンザは村の出口へと走って行った。
は!?
ふ、ざ、け、ん、な~~~~!!
「冗談じゃないわ、何が悲しくてこんな男の体で過ごさにゃならんのよ!? それにもし魔王と戦ってあいつが死んだら……!?」
最悪の事態を想像し、私はクアンザの後を追いかけようと決心する。
しかし、どうやって追いかけたものか……
「たぶんあいつの《ファーストキス》のスキルは私が持ってる……でも、これって『ファーストキスした相手と体を入れ替える』って要ってたわよね……?」
元に戻れるのだろうか?
解釈はどうなっているのだろうか?
「ファーストキスした相手って言うなら、その相手といつでも体を入れ替えるって事なんだろうけど、
もし私が今、別の相手とキスして、その相手にとって私とのキスがファーストキスだった、その場合は……!?」
うーん、考えてもわからない。
そもそも私は物事を深く考えたくないのだ。
……リベートに、相談してみるか。
少し歩いてリベートの家に着く。
「リベート、いる?」
扉をコンコン叩くと、中からすごく不機嫌そうなリベートが顔を見せた。
「……なんだよ、クアンザ……そんな気持ち悪い口調で……」
「ごめんねリベート、ちょっと相談があるんだけど……」
「うわ、気持ち悪い。金なら貸さない、帰れ」
「ちょ、ちょっと話を聞いてよ! クアンザだけどロッカなの!!」
「は? ……意味がわからない」
「クアンザのスキルで体を入れ替えられちゃったの!」
「嘘だろ……」
あからさまな嫌悪感丸出しのリベートだけど、なんとか部屋に上げて貰った。
さて、どうにかして智恵を貸してもらおう。
私は、朝の事とスキルの効果予想をリベートに伝えた。
「……なるほどね、たぶん、同じ相手とは何度でも出来て、別の相手とファーストキスをしたら、その相手にスキルは渡るけど、そこから先は完全に一方通行になるスキルだね」
「やっぱり、そうなるのかな」
「……うん、だから、くれぐれも気を付けてね、間違っても僕とキスしないように」
「それで、クアンザを追いかけてさっさと体を戻したいんだけど……」
「賛成だね。よし、早速追いかけよう」
「え、リベートも来るの!?」
「幼なじみの事だし、それに、僕のスキルも役に立つと思う」
「リベートのスキル、そういえば何だったの?」
「僕のスキルは《認識転移》って言ってね、自分の視覚範囲にあるものならなんでも転移出きるスキルなんだ」
「えっ、すご」
「このスキルならクアンザがいればロッカを目の前に転移させてキスさせるのも簡単だと思う」
「なるほどね、じゃあ、とっとと追いかけよう!」
「わかった」
一時はどうなる事かと思ったけど、これならなんとかなりそうね!