2話
2匹がヘビを見つけたのは、ちょうどネズミを丸呑みしているところでした。ごっくんと飲み込み終わったところで、コマドリたちはヘビに声をかけます。
「ヘビさん、私の卵を食べたのはあなたなのかしら? あなたでしょう!」
コマドリは今にもつつき出しそうな勢いで、ヘビに詰め寄りました。しかし、ヘビは何のことかわからないといった風に困惑します。
「へー。卵―? なんのことー?」
「嘘つかないで!食いしん坊のあなたが私の卵を食べちゃったんでしょう!そうに違いないわ!」
「あらあらヘビさんそうなの?」
キツネはヘビとコマドリの間に割って入り、コマドリの勢いをどうどうとなだめます。ヘビはぷっくり膨らんだ腹を重そうに這わせながら、ずるずると距離を取りました。
「もうー何がなんだかわからないよ、まったく」
コマドリの決めつけた態度に、ヘビは不満をあらわにします。こちらの話を聞かず、悪者に決めつけられたら当然です。お互いを落ち着かせるためにキツネはヘビに事情を説明します。事情を聞く間、黙って耳を傾けます。そして話を聞き終えると、納得したようにうんうん頷きました。
「成程ねー。でもやっぱり僕じゃないよ。だって卵食べないもん」
そういうと、ヘビは大きく身体をのけ反らせ、まだ消化しきれていない膨らんだお腹を2匹に見せます。
「僕はお肉が好きなんだ。卵は好みじゃないよー」
「でもあなたはあの川向こうの南に住んでいるんでしょう?」
「あー、そういう決めつけはよくないよ!」
ヘビがシャーッと口を広げます。長く続く食道に、コマドリたちは思わず黙ってしまいました。温厚なヘビだからこうして話せるだけで、暴れん坊のアライグマやワルのトカゲだったら、声をかけただけで叩かれたり噛まれていたことでしょう。
この逆さ虹の森は、南北が大きな川で二つに分かれています。コマドリたちが住んでいる北は木の実や虫などを食べる動物たちが多く暮らしています。一方、ヘビが暮らしている南は動物を食べる動物たちが多く暮らしています。北の住人には、同じ森の住人を食べる南の住人を快く思っていないものもいるようです。
「じゃ、じゃあ、あなた以外に誰が卵を取ったっていうの?」
気おくれしたコマドリは、震えた声でヘビに尋ねます。ヘビは舌をレロレロと出し入れしながら考えます。そして、何かを思いだしたのか舌をしまいました。
「そうだ、もしかしたらリスなら何か知っているんじゃないかなー」
「リス? あの悪戯好きのリスのこと?」
「そうー。リスは悪戯のために森の色んなところを歩き回っているから何か知っているかも」
「分かったわ。案内できる?」
「出来るよー。今ならドングリ池にいると思う」
こうして、3匹はドングリ池に向かいました。