1話
「ない!私の可愛い卵がない!!」
ここは逆さ虹の森。綺麗なドングリ池、たくさんの木の根っこが飛び出した根っこ広場、そして森を二つに分けるオンボロ橋。
他にも魅力がたくさんある静かな森で、大きな大きな声が響き渡ります。声の主は歌上手のコマドリ。普段は木に止まってピーピーチクチクと綺麗な鳴き声で歌っているコマドリが、今は高い高い木の上にある巣の周りを落ち着きなくバサバサと飛び回っている様子。それもそのはず、コマドリが大事に大事に温め守ってきた4つの卵が、1つなくなっていたからです。コマドリにとって、卵は可愛い可愛い我が子です。コマドリは翼から身を裂かれるような思いでした。
「あらあらコマドリさん、どうしたの?」
慌てふためいているコマドリへ心配そうに声をかけたのは、森一番のお人よしのキツネでした。キツネは慌てているコマドリに何かあったのだろうと思い、急いで駆けつけたのです。キツネに気付いたコマドリは事情を話すため、キツネの元に飛び降りました。
「聞いてよキツネさん。私の大事な卵が一つないの」
コマドリはキツネの近くに降りると、チクチクとあっちこっちに歩き回ります。キツネはコマドリを追いかけて右へ左へかぶりを振ります。
「あらあらそれは大変ね。探さないと」
「そうよそうよ。探さないと」
「でも、誰が持っていったかなんてわかるの?」
「きっとヘビさんよ。あの子は食いしん坊だもの。だから私の卵を食べちゃったんだわ!」
コマドリは怒りを表すように翼を思い切り広げます。その姿にはキツネも思わず尻尾の毛を逆だてるほどでした。
「あらあらそうなの? じゃあヘビを探しましょう」
こうして2匹はヘビを探し始めました。