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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第五章:聖女灰かぶり伝説

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第九十八話:集団生活、しちゃいます!

日間総合で184位、ハイファンタジー部門では65位をいただきました。

まことにありがとうございます!

 めまぐるしく状況が動いた三日目が終わり……。


 ――四日目。


「みんな、協力に応じてくれてありがとう」


 その場に集まった各組の代表に、向かって俺は頭を静かに下げた。


「そんなに頭下げなくても、いいよ。私たちみんなを助けてくれたんだし」

「そうそう。でないとあたしたちなんて、昨日のうちに棄権していたかもしれないからね」

「まちがいないわ」

「まったくもってそのとおりですっ! 本当にありがとうございましたっ!」


 アヤカをはじめ、各組の代表から労いの言葉をもらう。

 それは、ありがたいことだった。


 昨日、島中を歩き回った結果——俺たちはすべての組と協力体制を構築することに成功した。

 アヤカの組のようにぎりぎりで踏みとどまっていたもの、俺たちの到着が後少しでも遅れていたら崩壊していたもの、綿密な計算と徹底した体調管理により乗り切る算段が付いていたもの、意外にも元気がありあまっているもの――それぞれの組の様子は様々であったが、そのどれもが協力的だった。


 もっとも、最初から無条件で協力してくれたわけではない。

 アヤカたちの組がそうであったように、素性や目的を疑ってかかった組も、当然いる。

 だが、そこを説得してくれたのが、聖女アンだった。


 さすがは聖女というべきなのだろう。

 その話し方は、俺のように利益をもちだしたり相手の立場を利用することはない。

 あくまで理屈、そして俺たちの意向ではなく相手側の意思を尊重して、真摯に話しかけていた。


 それが功を奏したのだろう。

 今こうして、全ての組の代表がここに集まってくれている。

 俺の説得では、ここまで上手くいかなかったかもしれない。


「それで、話ってなに?」


 他の組を代表して、アヤカが訊いてくれる。


「それはね——」


 試験が終了する、七日目までのみちのりを、ざっと話す俺。


「現時点で動けないほど衰弱しているのは五名。全員が回復兆候を示しているとはいえ、すぐには動けないわ。なので——」


 その五人をどこに移送させ、そして残りの人数でなにを、どのようにやるのかを簡潔に説明する。


「もちろん、この案に乗ってくれなくてもいいわ。そして私達は、その組に対して水や食料を渡さないなんてことも行わない」


 全員を見渡しながら、俺は続ける。


「なぜなら……私達の目的は、全員をこのばかげた試験から合格させることだから」

「私は——私達は手伝うよ」


 真っ先に賛同してくれたのは、一番最初に助けた組である、アヤカだった。


「あたしたちも!」

「右に同じく」

「賛っ成っですっ!」


 賛同の声が、次々と続く。

 それはなんと、最後の組まで休むことなく続いたのだった。

 いくつかの組は、離脱する可能性があると踏んでいたのだが……嬉しい誤算とは、こういうものを指すのだろう。


「ありがとう。それじゃ早速だけど……」


 詳細な作業内容の説明に移る俺。

 あと三日間、なんとしてでも全員を合格させねばならない。



 ——五日目。


「すごいものを作りましたね……」

「ほんとうにね……」


 クリスと一緒に、俺はそれを見上げていた。

 例の巨大な昆布を重ね併せて作った、大人数が収容できる天幕である。

 作業に参加できる人数が多かったため、こういった大規模なものを作れるようになったのだ。


「みなさーん! お魚とってきましたよー!」


 アリスが料理に参加した少女達を引き連れ、食材を運んでくる。

 これもやはり、複数人だから出来ることだった。


「アリスさんすごいんですよ! なんと魚を手づかみで!」

「て、てづかみ!?」


 俺と聖女アンが交わした会話が、今度は他の場所で繰り返されていた。


「でもアリスさん、この魚をよく手づかみできますね……」


 すでに下処理が済んでいた魚を眺めながら、ひとりの少女が呟く。


「ジュンケツウツボでしょ? これ」

「ええ、まぁ」


 ……ん?


「女の子だけに絡みついて、穴という穴に入ろうとするからその前に捕まえないといけないっていうけど。どんなに慣れている人でも失敗することが時々あるから基本手づかみ禁止と言われているあの」

「そうらしいですね」


 んん?


「魚に【伏せ字でお送りしております】なんて最悪だから、誰も海岸に寄らなかったのにすごいですね!」

「いえ、それほどでもないですよ」

「ちょっとでも油断すると、【ご都合によりみせられません】はともかく、【当作品は全年齢版です】とかされちゃうっていうのに、よくやれますよね。尊敬します!」

「必要なことを、したまでですから」


 まて……まてまてまて!


 その場の作業を放り出して、俺は釣り竿とすくい網をすぐさまに作った。

 そんな危険なものをアリスに手づかみさせるわけにはいかない。


「アリス!」

「は、はい!?」

「いい? これからはこれを使いなさい! もう手づかみで魚を捕っちゃだめ!」

「は、はい。わかりました……ありがとうございます。マリスちゃん」


 頼むから、そういう危険なことは先に行って欲しいと思う。

 にしても――。

 女性だけだと結構えげつない単語が飛び交うのだな……。


「女性だけだと、わりとこんなものですよ」


 まるで俺の思考を読んだかのように、クリスがそう言った。


「そ、そう……気をつけるわ」


 そうは答えたが——我ながら、なにに気をつけろというのだ。

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