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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第五章:ドキッ! 聖女だらけの大運動会

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第三八三話:恐怖のマクラエイギョウ


「腹を切ってお詫びしますにゃ……!」

「いや、いらん」


 聖女(アイドル)大運動会会場跡地で、俺が先祖を任命した最終魔王(ラスト・ダークロード)であると判明した途端、クゥ・カワミ生徒会長の決断は早かった。

 衣装の腹の部分のボタンを開け、光帯剣とよく似た短剣を抜刀し逆手に持っている。

 たしかそれは、極東における最上級の責任の取り方であったと記憶しているが、よくもまぁ続いているものである。


「いやでも事の発端のモーリー部長はもういないし、騙されたとはいえ、実行したのはうちだし、それにうちより上の責任者もいないし」


 どうやらクゥ・カワミ生徒会長自身は、責任を痛感しているらしい。

 爛竜が乱入したときに自ら問題解決に乗り出したところといい、為政者の対応としては悪くないようである。


「……他にお詫びする方法は……あ!」


 なぜか顔を赤くして、クゥ・カワミは続ける。

 どうでもいいが、赤面した顔だけ、先祖のチ・エの面影があるのはどういうことなのだろうか。


「ま、真暗影刑(まくらえいぎょう)……」

「まくらえいぎょう……?」


 訊いたことのない単語だった。


「クリス?」

「私達の社会にそんな刑罰はありません」


 クリスは即答した。


「ユーリエ卿? 理桜卿?」

「少なくともダンタリオンにそのような刑罰はありません……」

「ミズミカドもです」


 となると、ハルモニア独自の刑罰か――。


「あの……生徒会長。その真暗影刑(まくらえいぎょう)ってなんなんスか」


 おずおずと眼鏡を着用した女生徒が尋ねた。

 声からすると、彼女が技術部のアラーキィ・ハルナ部長なのだろう。

 それはいいのだが、内部ですら知られていない刑罰というのはどうなのか。


「説明いたしましょう」


 巨漢の男子生徒が解説する。

 声からして、かれが実況のダイブツガワ部長なのだろう。


「五十代目のカントクの治世時です。当時の聖女(アイドル)大運動会で、当時の挑戦者のひとりが、審査員に対しその――よろしくない手段を用いようとしまして」

「賄賂か?」


 俺の治世前ではよくあったことだ。

 もちろん、俺の治世では撲滅したが。


「いえそのもっと直接的な行為というか――費用がかからないというか――」

「……あっ」


 察した。察してしまった。

 そういえば、そういうのもいたものである。

 もっとも当時の俺は半ば人間に対する復讐鬼のようになっていたので、その手のものにまったく興味がなく、当然ながら効果はなにひとつなかった。

 その後なにを勘違したのか、同性で同じことをしてきた者もいたが、もちろんこちらも瞬断で排除している。


「それで、どうなった……」

「ことが露呈し、当時のカントクは激怒。下手人に対し、その身体を一切の光がとどかない闇の中で丸一日好きにするという刑を執行しました。それが――」

真暗影刑(まくらえいぎょう)、か」

「はい」

「それで下手人は?」

「ええとですね」


 ダイブツガワ部長が、再び言いよどんだ。


「あぁ――その、スライムという魔法生物はご存じで……?」

「ああ……」


 それで、大体は想像できてしまった俺である。

 趣味の悪い見世物小屋とかで、時折見かけたものだ。

 みかけた端から、潰して回ったものだが。


「アレに笑い薬を混ぜたもので全身をくすぐられたとか……」

「それはまた……」


 悲惨な話であるが、魔王城の尖塔に三日三晩くくりつけられたことのある俺である。

 いやたしかにアレはタリオンと一緒に女風呂を覗こうとした俺が悪かったのだが(なおタリオンは発見される前にうまく逃げおおせた。おのれタリオン)。


「というわけで、この学園では最上級の極刑なんですが……」


 困った顔で、ダイブツガワ部長がこちらの顔色をうかがっている。

 となりではクゥ・カワミ生徒会長がしなしなと腰を振って、


「はじめてだから、やさしくしてね……?」

「するか、そんなもん!!」


 再び絶叫する俺。

 背後から突き刺さる、アリスの冷ややかな視線――ただし顔は笑顔のまま――が、めちゃくちゃ怖かった。

「賄賂で思い出しましたが、前の陛下はわりと放置しておりましたな」

「潰すほど余裕なかったからねー。そういう意味でマリウスくんには苦労かけたかも」

「ご安心くだされ、臣ともども嬉々として励みましたぞ」

「あ、そうなんだ……ところで君も女風呂覗いていたって?」

「時効ですぞ! 時効!」

「いや、にがさん!」

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