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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第五章:ドキッ! 聖女だらけの大運動会

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第三八一話:魔王、初の連携攻撃


『敵下方向から上昇! 四回同時攻撃!』

「各個回避!」


 クリスの警告に続く俺の号令で、四騎が花火のように散開する。

 その速度は、俺の魔力を臨時で機動甲冑化させたものと、まったく遜色がない。

 歌の三重奏による、魔力変換機関の同期。

 アリスとアン、そしてハルモニアのクゥ・カワミ生徒会長が同じ歌を併せて唄うことによって得た、魔力の共鳴現象である。

 これにより、魔法的にはひとつの巨大な魔力機関として扱われるため、各騎の能力が大幅に上がるのだ。

 現に、たった三騎で俺と遜色ない動きができている。

 ――では、四騎、五騎あったならどうなるのか。そしてそれが敵に回れば、俺の勝ち目はその数が増えるほど、低くなっていくのではないか。

 正直、冷や汗がとまらない。


「マリウス、いまはこっちに集中して!」

「――すまない、その通りだ」


 ミュートに叱咤されて、俺は気を取り直した。

 それよりも、もっと大事なことがある。

 それは、俺が全力で連係攻撃を行えるという大きな利点であった。


「クリス、ドゥエ。同時攻撃、合わせるぞ!」


 アリスとアンは唄っているのでこちらの指示は聞き取れても返事をすることができない。 故に、俺は連絡役のクリスとドゥエに声をかけたのである。


『あれ? うちは?』

「……クゥは俺たちのすぐ後ろを追従。爛竜(らんりゅう)がなにかしたら即座に対応してくれ」

『まかされたにゃあ!』


 いまの忘れたわけではない。断じて。


 俺とアリス騎、アン騎が弧を描いて合流し、直後同時に殴りかかる。

 拳には魔法の障壁が展開されており、それをほぼ同時に撃ち込めば――。


『『ほげええええ!?』』


 まぬけな声を上げて、爛竜が打ち上げられた。

 だが向こうもさるもので、吹っ飛ばされながらも四方八方に魔法を放つ。

 おそらく、俺たちを分散させるためのものだろう。

 だが――。


『しゃらくさいにゃあ!』


 歌の合間に叫んだクゥ・カワミ騎が背中の羽の一部を砲身に変形させた。

 次いで、腰の装甲と臑の装甲も砲身に変形し、計六門の砲台となる。


『あたれぇ!』


 一門一門がそれぞれ別の標的を狙うというそれだけでも離れ技といっていいものを、クゥは全てあててみせた。

 ふざけた言動と迷惑な行動を起こす彼女であるが、その実力は本物であるらしい。


『くそっ! こうなったら右の!』

『了解ですよ、左の!』


 爛竜が大きく息を吸いこみ――。

 煙幕を吐く!


『にげるんだよ簀巻ーきー!』

『誰が簀巻きにされるっちゅーねん!』


 最賢の竜という触れ込みだが、あるべきもうひとつの頭が足りないためか、やはりどこか抜けている。

 現にいま、声のせいで位置が丸わかりであった。


「全騎、一直線に並べ。先頭の俺が風の魔法を放ったら、次のアン騎は氷の魔法で頭を凍らせて行動不能に、次のアリス騎は光の魔法で攻撃と同時にめくらまし、最後にクゥが好きな魔法でありったけの魔法を撃ち込んで打ち上げろ!」

『了解しました』

『まかされたわ!』

『みなぎってきたにゃあ!』


 全員で、爛竜のいる方向に一直線に突撃する。


「いまだ!」


 俺が風の魔法で煙幕を払った。同時に風圧で相手の行動を制限させる。


『いくわよ!』


 続いてアン騎が氷の魔法を発動、爛竜の頭ふたつを同時に凍らせて行動不能に持ち込む。


『たたみかけます!』


 ここでアリス騎がやや拡散させた光の魔法を放射。

 爛竜の目を幻惑させると同時に防御を削り、そして最後に。


『くらうといいにゃあああああああ!』


 再び六門の砲塔を向けて、クゥが火、氷、土、雷、風、そして光の魔法を叩き込んだ。


『ぐえええええええ!』


 爛竜が情けない声を上げ、ふたたび勢いよく打ち上げられる。

 よし、このまま障壁の天井に激突すれば、少なくとも行動不能になるはず……!


『助けてモーリーの姉御おおおおっ!』

『……そのままおとなしく上昇してください。あとはなんとかします』


 ――まて。


「モーリー! きさま」


 姿を消したと思ったら、結界の外、その真上にいる!


『通信主さん、ヤバいっす!』


 声の主は、アラーキィ部長のものだった。


「どうした!」

『あの障壁は内側からだとどんな高出力の魔法でも耐えられるっすけど、外側から三回、一定の間隔で魔法を撃ち込まれると、あっさりと崩壊するっす!』

「そういう仕組みか! それでそれを作ったのは?」


 別に自爆する条件を設けたわけではない。逆方向の属性を付与することで、内部からの衝撃から強固に守るようにつくったのだ。

 そしてそれを解除できる条件を知っているのは、ハルモニア首脳陣と、それを作った者に他ならない。


『……あそこにいるモーリーさんっす……!』

「とめさせろ!」

『いま警備部を急行させたっすけど……』

『残念。間に合いませんね……えへへ』


 通信に割り込んだのは、モーリー自身だった。


『はい……1、2、3――ですけど」


 障壁にひびが入り、四散した。


『そのまま私を乗せてください。逃げますよ』

(あね)さん!』

『姉貴ぃ!』


 障壁が壊れ、そのまま落下するモーリーが、爛竜の左の頭の上に着地する。


『それではみなさん、ごきげんよう……』

『とばしていきまっせ!』

(あね)さん! 俺海がみたいの!』

『まわり、全部海なんですけど……』


 そんな捨て台詞を遺して、爛竜は飛び去った。


『なんなのにゃ、いまの加速力!』


 クゥのいうとおり、モーリーが飛び乗った途端、爛竜は急激に速度をあげた。

 俺でさえ、追いつけないほどに。

 それは、つまり……。


「モーリーが、爛竜の竜公主(ドラゴンマスター)だったということか……」


 爛竜の航跡をあらわす輝点が、ふっと消える。

「爛竜とキング◯リちゃんのデザインが被った件について、何かひとこと」

「偶然がいくつも重なり合っただけですぞ」


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― 新着の感想 ―
カワミ生徒会長は実力あるところは見せてくれた… けど結局逃げられてるし、モーリーにいいようにされまくったなぁ
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