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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第五章:ドキッ! 聖女だらけの大運動会

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第三七八話:魔王、ふとももに挟まれる

『右の! こっからは連続でいくで!』

『ほいきた!』

『後はいわれんでもわかるな!』

『ろんもち!』


 あれだけやかましかった爛竜の口数が少なくなってきた。

 謎の漫才はやめ、攻撃の指示もこちらで把握しづらい、なんとでも解釈できるものとなっている。

 それと同時に攻撃が、正確かつ多様なものになってきていた。

 基本的に魔法は見た目通りの形をしていない。

 雷を払えば凍り付き、風の刃を防げば盾が灼熱に覆われる。

 そして、それが双頭の口から放たれるのがまたいやらしい。

 元々首が長い竜はそこから吐き出す炎なり光線なりが比較的高い自由度を誇る。

 さらには本体には翼がありそれがこちらの攻撃を避けたり防いだりするのに役立てている。

 加えて爛竜本体の機動力は、その見た目に反してかなり高い。

 その結果、何が起こるのかというと――。



「あんまりゆらさないでえええええ!」

「こっちも最大限の努力はしている!」


 なぜならば。

 顔がミュートのふとももに挟まれるからだ。おまけに頭にしがみつかれているため、頭頂部に胸が当たっている。

 視界が狭いのは魔法でどうにかなる(現にどうにかなっている)ので問題ないが、頭部周辺のこの状況は、非常によろしくない。

 なにより、あと少し素早く動いたら、ミュートが落ちる可能性が格段に上がる。

 万一振り落とされたら、濃い魔力で身を焼かれ、それなりの高度から墜落することになる。

 いかに超加速の魔法が使えようと、自身で飛べるわけではないからミュートにとっては極めて危険な状態であるのは変わりない。


「いっそこのこと、お互いを縄かなにかで強く縛るか……!」

「そんな趣味はないわよ!?」

「わかっている!」


 もともと闘技場として作られた球状の空間である。

 それゆえに、わりと入り乱れた空中戦となっており、止まることは許されない。

 幸い、こちらが避けた攻撃はアリスたち、アンたち、そしてクゥ・カワミ生徒会長が防いでくれているため、今のところ観客席に犠牲者は発生していないようであった。


「こっちも攻撃しないの?」

「狙いが定まらん! そのまま撃てば、アリスたちに要らない苦労をかける」

「それじゃ、そこに置いておいて誘導してやれば」

「だから誘導しても避け――そうか、当てるように追い込めばいいのか……!」


 俺は雷の魔法を球状に発生させた。

 もちろん、操縦空間にいる俺ではない。

 その外の巨大な俺である。


「よし、そのままの体勢を維持だ!」

『フハハ!』

「このまま空中戦を維持するぞ!」

『フハハ!』

「なんか、でかいアンタのしゃべりかた、おかしくなってない?」

「発音させるのに余裕がないからだ」


 球状の雷を抱えたまま、爛竜と空中戦を繰り広げる。

 向こうはソレを近接武器か魔法の攻撃の溜めと判断しているようで、近くには寄ってこない。


「マリウス、はやくして。ちょっと気持ち悪くなってきた……」

「箒の乗り手だろう?」

「自分で操縦しているなら何も問題ないわよ。でもただふりまわされるとしんどいの!」


 なるほど、その発想はなかった。

 このままミュートが決壊(・・)してしまうのは――ちょっと避けたい。


「ここで、どうだ!」


 一瞬の交錯の瞬間、爛竜の死角に雷の球を置く。

 もちろんもうひとつを瞬間的に作り上げ、落としたようにはみせさせない。

 そのまま爛竜の死角を突き続け――懐に飛び込み、避けられないよう零距離で撃ち込むようにみせかけ――飛びすさるように後退する先に直撃させるようにもちこむ!


「弾着、いま!」

『グワッ!?』

『は? いつのまに!?』

「よし!」


 少しだけ、爛竜の速度が落ちた。

 いまのが決定打とはとてもいえないが、向こうも死角を用いた魔法の罠を警戒するようになったのだ。

 おかげで、機動戦の速度がやや落ちている。

 その分攻撃は苛烈になったので、気を緩めるわけにはいかなかったが――。


「このまま押し込むぞ!」


 しっかりとミュートの足首を握り、俺。


「――ねぇ、いま気づいちゃったんだけど」

「なんだ」

「アタシのふとももにはさまれて、アンタ顔がちょっとおもしろいことになってる」

「ふりおとすぞ!?」


「ミュートちゃんずるい! わたしもやりたい!」

「下手に挟んだら、陛下の頭部が潰れるのでは?」

「お? ためしてみる?」

「遠慮致しますぞ」


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