第三七七話:超巨大魔王vs爛竜暴走体
「ねぇ……」
俺の頭上から、ミュートが話しかけてきた。
正確にいうならば、俺の頭上やや後方である。
「なんで、こんなことになってんの」
ちなみに、ミュートのふとももが文字通り俺の双肩に乗っている。
いわゆる肩車であった。
「すまない、緊急で魔法を展開したので、操縦席まで作ることができなかった」
「だからって肩車で立ったままはないでしょ。肩車で立ったままは」
「この体勢で固定されてしまって改善はできそうにないんだ。だが、心配しないでくれ。俺の体力には問題はない」
「そういうこといってんじゃないの! もうちょっとこう――」
「だからといって抱きかかえたままというわけにもいくまい」
「そりゃ……そうだけど」
ミュートは不安げに周囲を見回す。
俺の視界と同じはずだが、雷光号の表示板が上下左右、全球的に表示されているという認識で間違いはない。
「というかなんなの、この空間」
「いってみれば、俺の魔力を可視化したものだ」
「これ全部が!? こわっ!」
「だから、振り落とされるなよ」
「どういうこと?」
「魔力の持ち主である俺だから立っていられるが、ミュートだと普通に落下する」
ついでに俺の濃厚な魔力に焼かれて着ているものとかが大変なことになるのだが、それは黙っておいた。
なので、先ほどからしっかりとミュートの足首をもつ俺である。
「これからおそらく戦闘機動だ。こっちもしっかりつかんでおくが、しっかりつかまっていてくれ」
「いったわね……!」
ミュートのふとももに頭を挟まれた。
つかまれといった以上、文句は言えない。
『ラ――』
『最終魔王?』
爛竜の長い双頭が、困惑したかのようにうねうねと動く。
『ほんとなんですそれ?』
『せや! ほんまもんの最終魔王ならアレができるやろ!』
「ほう、アレとは?」
『先代魔王を讃える歌をアカペラで歌う』
「そんなことしたこともないわっ!」
思わず左右の頭をひっぱたく。
実はちょっとノートの端に歌詞を書いたことがあるが、まさかそれを指摘しているわけではあるまい。
『くっ! このキレのいいツッコミ、こらモノホンかもしれへんで!』
『マジで!?』
そんなことで俺を本物と認識しないで欲しい。
『こらあかん、オイ右の! 本格的に戦闘態勢や』
『了解ですわ!』
爛竜が、はじめて身構えた。
いままではふざけていた舞台演出がたまたま攻撃魔法と同じ効果を持っていたが、純粋に戦闘なら――。
『右の! 冷凍光線や』
『そっちは灼熱光線ですか。了解です!』
左右の頭が、それぞれ赤い光線と青い光線を吐き出した。それは空中で衝突し――。
『対消滅』
『あんじょうくらいや!』
「は!?」
空間が連続で爆発し、俺の元へと殺到する!
避けるわけにはいかない。背後の会場の障壁や、アリスたちの機動甲冑にこれ以上負荷をかけるわけにはいかないからだ。
ならば、防ぐしかない。
「火と氷の魔法で対消滅はできないはずだが……」
「マリウス! あいつら多分魔法の見た目と効果を偽装してる! 分析しながら防いで!」
「なに!? ならば無駄が多いが……!」
火の魔法の障壁、氷の魔法の障壁、水の魔法の障壁、風の魔法の障壁、雷の魔法の衝撃、土の魔法の障壁、光の魔法の障壁、そして闇の魔法の障壁を張る。
通常対消滅という高度な空間破壊の魔法では密度の高い土魔法が有効だが……!
反応があったのは、雷の魔法だった。
つまり電気分解できたということだから、この魔法の正体は――水!
「ならば凍らせれば――!」
対消滅に見せかけられた魔法は凍り付き、爛竜に逆流する!
『んなっ!?』
『ちべたっ!? こいつ、こっちの偽装読み抜いたで!?』
正直ミュートがいなかったらただの力押しで防いでいただけだった。
だが、その考えは改めなければならない。
ユーリエは爛竜を最賢の竜といった。
どうやらその二つ名は、伊達ではないらしい。
「ちなみに陛下のポエムは閲覧済みです」
「もう、タリオンくんのえっち!」
「そういう見当違いの感想はおやめくだされ!?」
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