第三五八話:なだれ込む本戦へ
「えっと……話を総合すると、本戦を行う会場には四大竜の最後の一翼が封じられている可能性が高いと……?」
ドゥエ、マリスと共にずっと格納庫で練習をしていたアンだったが、戻ってくるなり現状をあっさりと把握していた。
「ということは、アリスさんたちと合流した後適当に茶番を繰り広げた挙げ句、折を見て脱出! というわけにはいかなくなりましたね」
さすがは聖女、現状の把握能力が飛び抜けて早い。
「そうなるな。第一目標を竜の復活阻止、第二目標は奪取になるだろう」
「いいの? 基本的に各学園の方針には手を出さないって聞いていたけど」
今度はドゥエがもっともな質問をする。
「確かに俺は生徒会管理機構の顧問として各学園の問題解決と助言は行うが、その方針に介入するつもりはない――ただ」
「ただ?」
「喧嘩を売ってきた相手まではその限りではない」
「……そりゃそうよね」
そもそも、他校の要職にある者を訳のわからない理由で拉致して戦わせよう(?)とする学園に、四大竜をもたせたらどうなるのか。
いうまでもなく、ろくでもないことになる。
他校から戦力を抽出するよう要請することも考えたが、それをすると今度は南の海全体が争いに巻き込まれかねない。それ故――。
「あの、例の生徒会長なるものを暗殺するのはいかがでしょうか」
マリスが、一直線に最適解を提案してきた。
「そうだな。仮に彼女が国家元首であれば、俺も迷わなかったが」
「はい」
「残念ながら、彼女は生徒会長だ」
「? 恐れながら申し上げます。この海で、生徒会長と国家元首は同等のものなのでは?」
「その通りだが、それでも……彼女らは、学生だ」
学生である以上、大人のやり方で籠絡するのは、少し避けたかった。
たとえアリスとクリスを拉致されたとしても、だ。
「それに、例の謎の鎌をもった生徒の詳細がもうちょっと欲しい」
「――ああ。あらゆる魔法を無効化する刃……ですか。仮に私が斬られたら、どうなりますか」
「良くて修復不能、悪くてその場で機能停止だ」
つまり、俺たちにとってみれば死と同等である。
「それは避けねばなりませんね」
「ああ、だからこそ――」
本戦には出なければならない。
大元の案でも出るには出る予定であったが、アリスたちと合流したらその場で混乱を巻き起こして脱出する手はずとなっていた。だが――。
「竜の出る条件を見極める。おそらくは決勝まで残るか、優勝までしないといけないだろう」
「では、その件で質問です」
いままで自信満々だったアンが、少し悩ましげな表情で手を挙げた。
「もしアリスさんたちと対戦することになったら、どうします?」
……!?
「な……に……?」
「ちょっとちょっとちょっと!? それを考えていなかったの!?」
ドゥエが呆れた声を上げる。
確かにその通りで、その事態も想定しておくべきだった。
理想は決勝でぶつかることだろう。だが、そうでない場合は――。
「全力で、ぶつかってくれ。おそらく向こうも手を抜かないはずだ」
向こうと情報共有は済ませてある。
短い時間だったが、会話だってできた。
その上で衝突するなら――。
「できるだけ派手に、全力で。ついでに会場がぶっ壊れるくらいなのがいい」
「あぁ、なるほど。そういうことね」
リカバリー早いわね。ドゥエが呆れた声でそう続ける。
「それで負けた方が地下に潜って工作に専念する。そういうことですね」
「ああ。ぶっつけ本番で済まないが……」
「いいえ、おまかせください!」
自分の胸を叩いて、アンはそう答える。
「聖女ではない本物の聖女の実力、存分に披露致しますとも!」
「あ、ああ……」
やや不安になる、俺だった。
「ちなみに陛下の在位中、暗殺の類は臣が手配しておりました」
「実はこっそり増やしていたり?」
「もちろんですとも!」
「わー、あくらつー!」
「ただし全部あとでバレましたが」
※面白かったら、ポイント評価やブックマークへの登録をお願いいたします!




