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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第二章:海封図書学園ダンタリオン

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第三二二話:図書館塔に、潜むナニカ


『改めまして、自己紹介を』


 ひとしきり叫んだ後過呼吸に陥っていた自律思考結晶体は器用に咳払いをして言葉を続けた。


(わたくし)の名前はマッケン。この図書館塔の自律思考体です。正式名称はマッケンⅢVer.OREですが、発音が難しいでしょうから、マッケンでお願いいたします』

「察するに名前の後半部分は、貴様の更新内容を表しているということか」

『さすがは上様! 慧眼です!』

「先ほどから気になっているのだが、その上様というのはなんだ」


 通常魔王は終身即位だ。

 そして何らかの事情で生前に退位したとしても、その地位は在位中の魔王と同等である。

 さらには在位中の魔王は組織力があるため、自然と在位中の魔王の方が重要になるのだと、(さき)の陛下は座学で俺に教えてくれたものであった。


『もちろん、上魔王様、の意味ですが?』

「馬鹿な。現行の魔王の方が役職に就いている分優先すべきだろう」

『恐れながら上様、(わたくし)にとっての上様は、御身のみであります』

「つまり俺自身に忠誠を誓うと?」

『はい。そのように造られましたので。ああ、なんという行幸でしょう。よもや(わたくし)の稼働期間中に上様と邂逅できるとは……!』

「貴様はこの学園が開校した時からいるのではないか?」


 ふと疑問点をおぼえ、俺は口を挟む。


『上様がおっしゃるとおり、(わたくし)はこの学園が開校したときより存在(・・)しております』


 俺の質問は想定内だったのだろう。マッケンは澱みなく応える。


『ですが、(わたくし)(わたくし)であるようになったのは、つい最近であります故。そういう意味では、マッケンⅡは大変気の毒と言わざるを得ません』

「どういう意味……まさか、自らを改修する際に、初期化しているのか」

『さすがは上様。御明察でございます』


 つまりこのマッケンは、


「そうすることによって、自己を長期保管しているわけか……!」

はい(・・)。最初のマッケンⅠは4000年、次のマッケンⅡもまた4000年稼働し続けました。そして(わたくし)マッケンⅢがおおよそ2000年稼働中でございます』


 そして細かい改修は自己を初期化する必要がないため、マッケンⅢVer.OREに至るまで自己の記憶は維持しているのだという。


『それにしてもさすがは上様でございます。並外れた知識欲のないものでなければ、決して手にすることができないという最難関中の最難関、轟竜を手に入れるとは……! このマッケン、心底感服いたしました』

「——マッケン」

『はい。上様』

「轟竜の主は、俺ではない」

『……は?』


 室内の空気が、文字通り停止した。

 おそらく管制しているマッケンが呆けたため、この部屋の、ひいては図書館中の空調が、文字通り一瞬止まったのだ。


『あれ? ですが……この部屋に入るのは、四大竜いずれかのマスターでなければ——よもや、他の竜を?』

「室内を再走査してみろ。それでわかる」


 一瞬、正面の結晶体から、ごく細い光が俺たちに向けて照射された。


『轟竜のマスターを特定。学籍番号N5137JL。第526代生徒会長、ユーリエ・フランゼスカ……!?』

「はい」


 おそらくマッケンは名前を口にしただけなのだろうが、ユーリエは律儀に返答する。


『……ま、マジでぇ!? 上様ではなく、この少女が天空の覇者となる命運を背負っているという……うっそぉ!?』


 おそらく地が出たのであろう。

 調子っぱずれな声をあげて、この図書館塔の自律思考結晶体、マッケンⅢVer.OREは、再び絶句したのであった。

 ——天空の覇者とは、いったい何なのであろうか……。


『ちなみにサンバは踊りません』

「踊るな——!」

「なんかタリオンくんがふたりいるみたいね」


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