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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第二章:海封図書学園ダンタリオン

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第三一四話:そちらの方がすごいのでは?

爛竜「先に言っておきますが、ランサムウェアの犯人は私ではありません」

魔王「反応しづらいネタをふるんじゃない」

 四大竜のことが記されている本を手にすることができたおれだが、最賢(さいけん)の竜、爛竜(らんりゅう)の情報は、何者かによって閲覧できないようになっていた。

 ユーリエは爛竜自身がそうしたという伝承を教えてくれたが、俺は半信半疑といった体である。

 しかし、他の三竜には閲覧制限はなかった。

 たとえば、最速の竜、麒竜(きりゅう)は……。


「慣性制御!? 慣性制御だと!?」

「どういうことです?」

「端的にいうと、反動なしに推進できるということだ……!」

「なんですかそれこわい」


 話についていけたのは、クリスだけだった。

 こんなものを積んでいては、水上水中、はては空中そのものも好きに移動できる。

 正直、逃げに徹されると雷光号でも轟竜でも対処法がない。

 つづいて最大の竜、餮竜(てつりゅう)は……


「機動要塞シトラスよりも巨大な竜型機動甲冑だと……!? 母艦運用はどうなっている!?」


 最大を名乗るだけあって、桁違いの大きさであった。


「そこまで大きいと、それ自体に母艦機能があるのでは?」


 クリスの指摘は正しかった。


「そのようだな。内部に数千名から最大一万名居住可能とある……」


 いわば中枢船と同じ大きさの戦闘艦艇である。

 艦隊での運用は難しそうだが、単騎で用いるならかなり面白そうだった。

 そして、最強の竜、轟竜(ごうりゅう)


「直列二基の魔力炉を並行運転! やはりそうか!」

「難しいんですか?」

「とてつもなく難しい!」

「マリウスさん、顔がちょっと怖いです……」


 クリスの指摘に即答した俺に、めずらしく苦言を呈するアリスであった。


「じゃあ仮によ、オイラがそれ積んだら、めっちゃ強くなる?」

「そうだな。単純計算で出力二倍、持続力二倍だ」

「うひょー!」


 機動甲冑としての(さが)だろう。ニーゴが歓声を上げる。


「ただし脚が太くなる」

「別にかまわねぇぜ?」

「いや、かまいますよ」

「かまいますね」

「かまいます……」


 どうやら、クリス、アリス、ユーリエには看過できない問題であるようだ。


「でもよ大将、オイラは気にしないからやり方わかったらまっさきに組み込んでくんな!」

「わかった。そうしよう」


 詳しい技術的な仕様は書いていないが、それは別の本をさがせばいいまで。

 それに、ある程度原理が紹介されていれば、俺でも再現できるし、なんならそれを拡大発展させることもできる。

 それにしても、一万年の技術格差は恐るべき事態だった。

 四大竜がいつ建造されたのかわからないが、俺が封印された後ここまで技術が進歩していたことに、驚きを禁じ得ない。


「……あの、マリウス卿。前から気になっていたのですが」


 そこでユーリエが思い詰めた様子で俺に話しかけてきた。


「ニーゴさんはその……人間でも、魔族でもありませんね?」

「ああ、そうだ」

「おうよ。オイラ元海賊。そっち風にいうと、自律した機動甲冑?」

「あの、潜水艦という海の下を往く艦の制御は、ご自身が?」

「そうだぜ? あと、前の身体は水上艦で、変形して機動甲冑になったり、追加武装と合体して狙撃とか白兵戦とか防衛戦とか空を飛んで戦ったりもできたんよ」


 ユーリエが、手にした杖を取り落としそうになった。


「そちらの方がすごいのでは……!?」

「価値観の相違だな」


 例えば、最高速度と加速力では麒竜には勝てないし、

 その物理的な大きさと収容数では餮竜に勝てない。

 そしていうまでもないが最大火力では轟竜には勝てない。


「当面は、情報収集を続けるしかないな。あと、技術の仕様書が欲しい」

「それでしたら、十二層下にありますが……」

「わかった。それでは、案内してくれ」

「はい……」


 相手が何をもっているのか、それがどのような仕組みなのか。

 それがわかれば、対応法はいろいろと考えつくことができる。

 そういう意味では、残る爛竜になにがあるのか、何もわからないのが少々不気味ではあった。

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