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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第二章:海封図書学園ダンタリオン

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第三〇七話:探索・図書館塔! ――準備編

「この程度でよかろうな」


 海封図書学園ダンタリオン、屋上。

 そこに設えた追加兵装の動作を確かめて、俺は頷いた。


「……ええと、あの、その……」


 同行していたユーリエが、なぜか言葉を詰まらせている。


「マリウス卿、その……この武装は一体?」

「みてのとおり、自動迎撃用の砲塔だ」


 屋上の四隅に小さな塔を増設し、その上に雷光号が搭載していた速射砲と同じ威力のそれを一基ずつ搭載してある。

 砲塔後部にはそれぞれ光学式と魔力式を組み合わせた測距儀が直結しており、有効射程距離に俺が登録した魔力以外のもの、飛行物体、船舶を感知すると警告を三回繰り返した後、自動的に迎撃を開始するようになっている。

 弾頭には雷の魔法が仕込んであり、直撃する直前で一定の範囲に威力を抑えた雷が弾けるようになっている。これにより機械には高確率で故障され、生身には致命傷を与える可能性は限りなく低くなっている――はずだ。

 なお、弾倉は小さな塔に格納されている上に、弾薬庫は最上階を経由してひとつ下の空き部屋に設置してある。

 これにより一週間程度であれば、余裕で自動迎撃を実行し続けることが可能であった。


「その……少々物騒では?」

「俺たちが来る前はどうしていたのだ?」

「魔力式の鳴子を携帯しまして、警報が鳴ったら転移の魔法で最上階に移動、魔法で迎撃か、轟竜を召喚――といった形でした」

「なるほど。しかしそれでは図書館の探索に支障がでるのでは?」

「それは……そうですが」


 両手杖を握りしめ、葛藤するユーリエ。

 どうやら自らの学舎が重武装化するのと、図書館の探索を中断せざるをえないことを、はかりにかけているらしい。


 事の次第は、単純である。

 ユーリエが普段行っている、海封図書ダンタリオンの探査に、俺たちも参加してみたくなったのだ。

 とはいえ先ほど生徒会管理機構を、現時点では名前だけとはいえ復活させた状態である。

 おそらく、他の学園はよくて斥候か間諜、悪ければ小規模から中規模の威力偵察が予想できた。

 そこで図書館塔の屋上に自動迎撃装置を設置したのだが、どうもユーリエの目には物騒に過ぎたらしい。


「どうする? 一度に全員が戻れるように転移の魔法を改良した転移の門というものがあるが……」

「いえ……折角作ったのですから、このままで」


 そういうことになった。


「たとえ物騒でも……呼び戻されるのはその……気が散りますので」


 その気持ち、痛いほどよくわかる。




■ ■ ■




 そういうわけで、探索である。


「いきなり最深部――ではありませんよね?」

「もう底は見えているのか?」

「……いいえ。私が現在図書館塔のどの部分にまで潜っているのか、全く不明です」

「現在の踏破階数は?」

「地上は五階建てなのですが……そこから下を地下と定義した場合、現在地下491階です」

「よんひゃく――!?」

「地下491階です」


 ちょっと待って欲しい。

 それは、おかしい。

 海面から突き出ている、五階部分でさえかなりの高さなのだ。

 それよりも百倍近い高さが海面下にあるとした場合、その水深は――そうか、物理ではないのか(・・・・・・・・)


「魔法で空間が拡張されているということだな?」

「おそらくは。どなたが仕掛けたものなのか、今となっては不明ですが……」


 それを一万年も維持しているのだから、たいしたものである。


「では、地下一階から早足で降りていきましょう。今日中に最深部は無理になりますが、この図書館塔の構造を把握されるのに、ちょうどいいかと……」

「すまないが、よろしくたのむ」


 参加者は俺、ユーリエ、アリス、クリス、それにニーゴである。

 武装は俺とニーゴが光帯剣、ユーリエが両手杖、アリスが拳銃、クリスが長銃であった。


「アリスさんとクリスさんの銃は……珍しい動作形式ですね」


 動作を確認するふたりをみながら、ユーリエがぽつりと呟く。


「こちらとは激発方式がちがうのか?」


 興味本位で俺が訊く。

 クリスの長銃は銃身の真下に筒状の弾倉があり、そこに一発ずつ弾丸を挿入したあと、用心金(引き金を誤って引かないようにした輪っか状の部品)を兼ねた装填桿(そうてんかん)を操作して薬室に弾丸を送り込み、同時に引き起こされた撃鉄を引き金を引くことにより落とし、激発する。

 アリスの拳銃はそれを切り詰めたもので、携行性が大幅に向上したのに代わり、装弾数が少なくなるという欠点を抱えていた(クリスの長銃が12発に対し、アリスの拳銃は3発である)。

 ただしこれは、アリスがあまり前線に出ないようにした俺の配慮も含まれていた。

 実際、アリスがこの拳銃を携帯するようになって実際に撃ったのは、数えるほどしかない。


「こちらでは、こういう形式の銃を使っています……私は射撃が上手くないので、あまりつかいませんが……」


 そう言って、本棚から薄い木箱を取り出したユーリエは、それを開けて中身をみせてくれた。


「これは……?」


 初めて見る形式であった。

 銃身は一本。

 その下に管型の弾倉はない。

 アリスやクリスの銃と違って、装填桿がない。おそらく撃鉄を直接手で起こすのだろう。

 それより気になるのは、撃鉄の直前にある。車輪状の弾倉である。

 傍目で見る限り、それは六連発のようであった。

 大きさはアリスの拳銃より一回り小さいのに、装弾数は倍である。


「なるほど、撃鉄を起こすのと同時に、弾倉が回転するのか」

「まさにその通りです。すごいですね……操作せずにわかるとは」

「昔、試作品をみせられたことがあったからな。胡椒挽き型の改良型だといっていた」

「胡椒挽き型?」

「あ、それは私もみたことがあります」


 クリスが両手を打ち合わせる。


「これは弾倉部分だけですが、銃身も同じだけあって、一緒に回転する形式ですね?」

「ああ、そうだ。だがあれは――」

「大きさに対して銃が重くなるんですよね。銃身が無駄に増えているようなものですから」

「そうだな。そこを指摘されて弾倉部分だけを回転するようにしたのが、これだ」


 俺がみたのは試作品であったが、どうやら今は量産化に成功しているらしい。


「機械工作の精度が高くないと上手く量産できないといわれていたが、そうか……うまくいったのだな」

「長銃には向いていませんが、拳銃としてはいい形ですね」


 手に取って――ただし撃鉄と引き金には一切手を触れず――クリスが感嘆する。


「アリスさんか、クリスさんのどちらかが、使ってみますか?」

「では、わたしが」


 そう言って、アリスがそれを受け取った。


「ええと、銃嚢 (じゅうのう※)が確かこの辺に――」(※ホルスターのこと)


 ユーリエが本棚を漁り、革製のそれを取り出しアリスに手渡す。

 これにより、回転式弾倉の銃が腰の横に一丁、従来の三連発の銃が腰の後ろに周り——。


「アリスさん……いっきに重武装化しましたね」

「そうだな」


 本来秘書官であるアリスには、あまり前線には出したくないのだが……。


「がんばります!」


 本人は、いたってその気であった。


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