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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第一章:蒼い瞳のユーリエ

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第三〇三話:誕生! マリウス分校

「どうしろっていうんですか、あんな巨大な戦列艦!」


 クリスの言い分も、もっともであった。


「でも、水中からの攻撃はこちらも想定していないのでは?」


 アリスが珍しく、戦術に意見を出す。


「確かにそうですが、この大きさです。隔壁があちこちにはり巡らされているでしょうし、水中攻撃は想定していなくても、機雷対策は万全でしょうし」

「機雷?」

「水面近くを浮遊する爆弾ですよ。破壊工作や通商破壊に使います」

「そういうものも、あるんですね」

「海賊は水中から現れますから、そういう意味でも有効なんです。もっとも警戒しないで突っ込んでくるんですけどね」


 逆にいえば、強行突破されやすいということなのだろう。


「それは、人間同士でも適用されます。また、こちら魔族の皆さんでもそうでしょう。現にこの戦列艦、機雷対策も十全にみえます」


 そういって、クリスは映像内の戦列艦の、水面付近を指差した。


「船体の下部だけ、膨らんでいるのがわかりますね? これは機雷対策および砲撃による破口から海水が流れ込むのを防ぐためにあります。具体的にいうと、装甲の中に木材などを充填したり、隔壁でたくさんの小部屋を作って、浸水する海水の量を減らそうとしているんです」

「なるほど……」

「なるほど……」


 アリスにならんで、ユーリエが感心した様子で頷いている。

 どうも、彼女自身には軍艦に関する知識があまりないらしい。


「というわけで、現時点ではこの巨大な戦列艦の撃破は戦力不足で不可能と言わざるを得ません」

「轟竜を、投入してもか」

「相手方にもいるんですよね。ユーリエさんの竜と同じ強力な存在が」


 そういえば、そうだった。

 確定しているわけではないが最大の竜が向こう側にいる可能性は、極めて高いらしい。

 だとすれば、雷光号と轟竜を同時に投入したとしても、戦局は膠着する見込みが高いのだろう。


「あの……今更の話なんですが、よろしいでしょうか……」


 ユーリエが、おずおずと切り出す。


「みなさんの目的は、北半球側の人間の皆さんと、私たち南半球側とで、友好を結ぶことですよね……?」

「そうだな」

「そうですね」


 俺とクリスが、ほぼ同時に返答する。


「では、私の所属するダンタリオンではなく、アイアンワークスやミズミカドと友好を結べはいいのではないでしょうか?」

「それはだめだ」

「それはだめです」

「ぜったいだめですね」


 俺とクリスだけでなく、アリスまでもがユーリエの言に反論した。


「そうでしょうか……ここのように弱小の学園と同盟するより遥かに有利となるはずですが……」

「相争っている時点で、だめなんだ」

「マリウス艦長の言う通りです。統一勢力か、私たちの方にほぼ統一した第一勢力であるのなら話は別ですが、複数の勢力が争っている中で、どこかに肩入れするのは大変危険です」

「確実に戦力として取り込まれるし、相手方が連合して逆に不利に追い込まれる可能性もある」

「そうなってしまっては、泥縄ですからね。そこで肩入れする勢力を変えたら、まちがいなく私たちの信用は失墜してしまいますし」

「な、なるほど……」


 俺とクリスが代わるがわる指摘したことを、反芻するように頷きながら、ユーリエはそう答える。

 どうやら、ユーリエは戦うべきときは戦えるようだが、こちらから攻めようという考えはないらしい。


「そもそも、弱小だからって切り捨ててもいいというのは、間違っていると思いますっ」

「……あ。そうですよね、アリスさん。ありがとうございます」

「というわけで、当面の俺たちの方針だが」


 皆を見渡して、俺は言葉を続ける。


「戦い続けて統一という線は現時点では無しだ。北半球——北天から戦力を投入するにしても、長期戦になると消耗がばかにならない」

「では、どうしますか?」

「上位組織を作り、そこに加入させる」


 全員、しばらく反応がなかった。


「あの……上位組織というと?」


 ユーリエがおずおずと質問する。


「推測なんだが、この南半球——南天では、かつて共通の規則があった。いや、いまもあるのだろう」

「はい。対校戦や、本校分校の規則ですね」

「それがあったということは、それを作った組織もあったということだ」


 あるいはそれは、始原の学園……かつてのダンタリオンそのものであったのかもしれない。

 だがいまは、生徒の数が減り、分校は他の学園の傘下となって、その影響力はなきに等しい。

 ——それならば。


「その組織を復活させる。権威と、実力を備えた上位組織をつくり、各学園をその傘下に収めるんだ。そうすればその組織は統一勢力と同じ意味を持つことになる」

「なるほど。そうなった時点で、あらためて友好を結べば問題ないと……傀儡政権を作ろうといっているようにも聞こえますが、まちがっていますか?」

「いいや、まちがっていない」


 苦笑しながら、俺はクリスの意見を否定しなかった。

 たしかに俺が一から十まで作り上げれば、そう指摘されても仕方がないだろう。

 だが、この海の学生たちが自主的にそうなれば……仮に俺の発案だとしても、運営がそうなれば、それは自由意志とみなしていいのではあるまいか。


「そもそも俺は、南の海の様子をみてみたいだけであって、支配するつもりは毛頭ないからな」

「古典的な魔王であらせられるのに?」

「その古典であるゆえに、だ」


 北半球はなりゆきで統一し、しかもその代表に一時期おさまってはいたが、南の海でそれをするつもりはまったくない。


「卿ら現在の魔王たちが、それぞれ協力しあって統治機構を作ってくれるのが最上だな。それができないのなら……」


 俺が、骨組みを作るしかない。

 ただし、それをしても俺は君臨もしなければ統治もしないつもりであったが。


「上位機関を作る。軍閥をまとめあげるのは、最終的に強力な権威が必要だ。それを作ればいい」

「では当面は、どうなさるのです?」


 質問したユーリエに続き、クリスもアリスも、俺の顔をみる。

 それに対する答えは、現時点ではひとつしかない。


「とりあえず、この海封図書学園ダンタリオンに属する、分校を作ろうと思う」


 まずは俺たち自身が、この南の海における規則に則った組織を作らなくてはならない。


「分校名はそうだな……マリウス分校でよかろうよ」


 そこで何故かおもいっきり顔を輝かせる、アリスであった。

「マリウス分校ですか!?」

「ああ、そうだ」

「つまりマリウスさんが、ピッチピチのタンクトップを着てレギンスを履いて、お腹丸出しになるんですね」

「——なぜ?」

「そして何かあるたびに『全ては虚しい——』とキメ台詞を……アリだと思います!」

「……アリス。◯リウス分校ではない。マリウス分校だ」


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