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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第三章:提督少女

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第二十八話:提督少女

『すげぇな! 船だらけだ!』


 いささか高揚した声音で、二五九六番がそう言った。

 見渡す限り、大小様々な船が航行している。


「いままでと規模が違うな……」

「ですね」


 船団の中枢となる船も、前のそれよりもずっと大きなものだった。前の中枢船はまだ巨大な船という一言で済んだが、今度の船は乾舷が高く、全体が城塞のようになっており、外からは様子がわからない。


 前回の船団と同じく発光信号でのやり取りを受けた後、俺たちは中枢船の後部、巨大な港湾部に入港した。

 前の船団のそれは低い乾舷のお陰で波止場に見えたが、こちらは天井まであり、まるで巨大な洞窟か、あるいは船渠に迷い込んだ気分になる。

 ただ船を停泊させることだけに特化し、なにもない港湾部から贅沢にも昇降機を使って甲板に上がる。いわく、船内は関係者以外立ち入り禁止であり、俺たちのように外から来たものは甲板から上の構造物にしか入れないらしい。そして昇降機が最上階、すなわち甲板に着くと——。


「わぁっ……!」


 アリスが歓声をあげた。

 その気持ち、わからなくもない。

 俺も、ふと懐かしい気持ちになったからだ。

 何故かというと、中枢船の甲板上には街が形成されていた。

 かつて俺が見た、地上の街。

 それがそのまま、巨大な船の上に作り上げられていたのだ。


「これは、本当にすごいな」


 乾舷の高さをあげ、なおかつ乾板の高さを揃えたことにより初めてできたのだろう。

 だいぶ南に進んできたためか、夏のように暑い日差しを浴びて、人々も……。

 ひ、人々も……。


「本当に、すごいな……」


 街を行き交う女性という女性が、水着姿だった。

 男性もたいていは上半身をはだけているのだが、大抵下はズボンである。

 だが、女性はというと脚も露わにしているものがほとんどであった。

 正直、目のやり場に困る。


「本当に、そういう文化だったとは……!」

「だから言ったでしょ」


 まだ疑っていたの? と、メアリ。


「すげぇな。紐にしか見えねぇのがいるぜ、紐」


 興味津々といった体で、ニーゴ。


「あっちは……どうなってんだあれ。なんでずり落ちねぇんだ?」

「しげしげと眺めるんじゃない!」


 思わずニーゴをしかり飛ばしてしまう。

 だが、言われた通りの方向を向けばまさのその光景を見てしまうので、どうしても視線が泳いでしまう俺であった。


「やはり、下も脱いだほうがいいでしょうか……」


 スカートの裾を握りながら、アリスがそう言った。


「いや、そのままでいい。そのままでいてくれ」


 そう、今のアリスは水着姿ではあるものの、秘書官のスカートをはいてくれている。

 どうも、脚の線が見えるのが恥ずかしいらしい。

 もっともそれは服を脱いでいる途中のようで、少しばかり俺の情操に悪かったが。


「『船団に入りてはその船団に従え』昔からよく言われていること」


 ドロッセルが、いらぬ口を挟む。

 たしかに今のアリスの格好は目立つが……。

 目立つが、しかし!


「……そう、ですよね。わたし、がんばります!」


 アリスがその場でスカートを脱いだ。

 下に水着を着ているのはわかっている。

 が、ものすごく心に負担のかかる光景だった。


「ほら、マリウスも」

「全力で遠慮する!」


 メアリの提案を、断固として拒否する。

 そもそも矢傷や刀傷だらけの身体を晒しても、気味悪がられるだけだろう。


「あ、でもこのスカートどうしましょう」

「オイラが預かるよ。背嚢に空きが十分あるしな」

「いや、それは……」

「んじゃ、大将が持つ?」


 ……俺が、

 ……アリスの、

 ……脱ぎたてのスカートを、

 ……持つ?


 ふ。

 ふは。

(しばらくおまちください)


「いや、お前に任せる」


 額に手を当てながら、俺はニーゴが持つことを認めた。


「じゃあお願いしますね。ニーゴちゃん」

「おうよ。船に帰ったらちゃんと返すかんな!」


 返さなかったら海底の砂粒を数える機械に改造してやろう。

 本気で、そう思う。


「ところでわたしたち、どこに向かっているんですか?」


 懊悩(おうのう)している俺を見かねてか、アリスがドロッセルにそう尋ねてくれた。


「港湾部の事務所。正確には護衛艦隊の詰所だが」


 前の船団と違って、この船団では船を登録しないと補給はともかく、弾薬やその素材が買えないらしい。


「なぜ港湾部そのものにないのだろうな」

「政治に密接しているからだと聞いている。それに、この船の警備も兼ねているらしい」


 なるほど、つまり警察権も持っているということなのだろう。

 いってみれば自警団といったところだろうか。


「とはいえそれほど離れていないからそろそろ到ちゃ——?」


 ドロッセルが、大きな建物の前で硬直した。


「どうした?」

「『空き家』って書いてありますね……」


 アリスが、建物の扉にかけられた板に書いてあるものを読み上げる。


「え、なに? 護衛艦隊解散しちゃったの?」


 両手を頭の後ろで組みながら、メアリ。


「ありえない。ありえないが——」


 ドロッセルが、珍しく返答に窮したそのとき。


「護衛艦隊の詰所でしたら、引っ越しましたよ」


 俺たちの背後で、幼い声が上がった。

 振り返ると、そこにはまだ子供と言っていい少女がいた。

 アリスとよく似た紺色の水着を着用し、背中には赤くて蓋のついた背負い箱を背負っている。

 そして一房だけ結った流れるような黒髪に、深い藍色のリボンがよく似合っていた。


「なんでも、手狭になってしょうがなかったそうです」

「なるほどな……すまないが、移転した場所を教えてもらえないだろうか?」

「いいですよ。せっかくですから、案内しましょう。私の家の近くなので」

「感謝する」


 ニーゴがさりげなくアリス達の背後に立った。

 俺自身も、すぐに放てる魔法を密かに用意する。

 念には念を入れて、だ。


「お兄さんたちは、ここが初めてなんですか?」

「いや、そっちの赤いのと白い水着のは何度か来ているらしい。初めてなのは、俺たち三人だな」

「なるほど。ここはいいところですから、是非とも登録していってください」

「ああ、もとよりそのつもりだ」


 そもそも、そうでもしないと弾薬の補給ができない。

 弾薬そのものはあまり必要ないが、その素材となると、なくては困るからだ。


「着きましたよ。ここです」


 女の子が指さす先には、先ほどよりもひとまわり大きな建物があった。


「では、私はこれで」

「ありがとう。おかげで助かった」

「どういたしまして」

「時間を取らせてすまなかった。機会があったら、礼をさせてくれ」

「気にしないでください。それよりも……子供扱い、しないんですね」

「してくれたことの価値に対する、年齢の差はない。それに子供だからといって、侮ると痛い目にあうからな」

「そうですか……」


 封印される前の話だが、子供の暗殺者に襲われたことがある。奇襲専用、そして使い捨てというふざけた運用であったので、派遣してきた国を速攻で滅ぼしてやったものだ。

 その子供の暗殺者は無事に保護し、人間ながらも俺たち魔族に手を貸してくれる珍しい勢力となった。

 封印される直前の最終決戦ではさすがに戦力として投入せず他の非戦闘員と共に逃したが、うまくやってくれただろうか。


「あなたは紳士的なようですね。この船団では、ちょっと珍しいかもしれないです。それでは」

「ああ、案内に感謝する」


 お互い手を振って俺は女の子と別れた。


「マリウスさん?」


 女の子の姿が消えてから、アリスが不思議そうな声を上げた。


「どうした?」

「いえ、その……さっきの子に、少し警戒していたような気がして」

「あっているぞ」

「えっ?」

「多少は偽装していたようだが、それでもわかる。年の割りに歩幅が一定で、先導する際も、常に前方全ての角度を注視していた。あれは、軍かそれに準じる組織で訓練を受けた証だ」

「そういうことも、わかるんですね……」


 なにせ訓練をした方でもあるし、受けた方でもある。

 だが、特に仕掛ける様子はなかったので俺はずっと気づかないふりをしていたのだ。


「おそらく船団の間諜、あるいは斥候だろう」

「わたしたちを、監視していたと言うことですか?」

「そんなところだろうな」


 そう答えながら、俺は建物の中に入った。



 ■ ■ ■



「まさかの実地試験か」

「ですね……」

『船にとんぼ返りとは思わなかったぜ』


 雷光号(らいこうごう)船内。既に出航済みであり、詰所で伝えられた座標に向かって航行中でもある。


 登録に際して事務員から言われたのは、単独での海賊撃破という実地試験だった。

 都合のいいことに、哨戒中であった護衛艦隊の一隻が単独行動中の海賊を発見し、現在追跡中だという。

 これに合流して、雷光号のみで撃破。それを追跡していた護衛艦隊の船が見届けたら、晴れてこの船団の仕事が受けられる船として登録してくれるらしい。


 ちなみに、(あかつき)淑女号(しゅくじょごう)は、同行していない。メアリたちの船は既に登録されているということがひとつと、あくまで単独での撃破が必須条件とあるからだ。


「司令官が代替わりして、登録条件が厳しくなったって、言っていましたね」

「ああ。今の条件だと暁の淑女号では荷が重いだろうな」

『あちらさん、足の速さがすべてで打撃力はそれほどないもんな』


 実力主義は結構なことだが、代替わりによって急に厳しくなったというのは理解しかねる。

 急激な変化は閉塞を呼び、逆に質の低下を招くことがあるのだが……まぁ、この船団の内政にまで関与するつもりはないのでひとまず置いておこうと思う。


『見えたぜ。護衛艦隊の船と、海賊だ』

「こちらでも確認しました。同時に発光信号。『貴船が登録希望者か?』とのことです」

「返答。『登録希望者である。詳細をお願いしたい』」

「了解しました。……返答きました『先導する。我に続け』」

『見えてんのにな』


 二五九六番が不満そうに呟いた。


「こっちではな。この装備は普通の船にはそうそうあるものではないから、仕方あるまい。ここは大人しく従ってくれ」

『あいよ……ってちょっとまった! なんか変だぞ!』

「どういう意味だ——」


 思わず聞き返した直後、海が揺れた。

 海面から、海賊の増援が現れたのだ。


「何隻増えた!」


 回避行動をとる護衛艦隊の船に近づくよう指示を飛ばしながら、俺は声を上げる。


「じゅ、十四隻です……!」


 アリスの声が上ずる。

 この数、たしかに相手したことがない。


「位置情報を記せ!」


 正面の表示版に、海賊どもが光点として表示される。

 護衛艦隊の船のそばに五隻、もともといた海賊と合流した十隻の、計十五隻。


 どうも、哨戒していたのはお互い様であったらしい。


『どうするよ、大将!』

「まずは護衛艦隊の援護に入る! 万一でも沈んだら洒落にならん!」


 最悪、俺たちが撃沈したことになってしまう可能性がある。そうなればもう登録どころか、お尋ね者になってしまう可能性が高い。


「発光信号です! 『数が多い、逃げろ!』」

「返答。『不要。援護する』。雷光号、護衛艦隊の船の前に出ろ! ただし、向こうの射線は遮るなよ!」

『おう! 飛ばしていくから安全帯つけとけよ!』


 返事をする前に、雷光号は加速して前方へと躍り出た。

 同時に、海賊どもからの砲撃が襲いかかってくる。

 例によって口径も射程もバラバラの、醜悪な砲撃だ。


「回避! ただし護衛艦隊のに当たりそうなものには盾となれ!」

『恩を売るんだな! まかされた!』


 二隻とも、無事に回避する。幸いなことに、護衛艦隊の練度はかなり高いらしい。


「雷光号、一番手前の海賊には速射砲で牽制し、相手の注意を引きつけてくれ。その間に主砲を二番目の海賊に照準。一撃で仕留めろ」

『あいよ! 撃ち始めるぜ!』


 軽快な射撃音が船内にも響いてきた。

 艦首方面にある速射砲が口火を切ったのだ。

 少し遅れて轟音が響く。こちらは主砲の砲火であった。


「二番目の海賊、撃沈です!」

「アリス、発光信号。『さらに奥のを叩く。手前を頼む』」


「送ります!」


 返答は来なかった。

 代わりに護衛艦隊の船から射撃を開始。雷光号の速射砲に気を取られ、横っ腹を晒していた海賊は、文字通り海の藻屑と化す。


『大将、四番目と五番目が重なった! あれ使おうぜ!』

「許可する! 強装(きょうそう)徹甲弾、撃て!」


 先ほどの主砲弾より、一回り大きな轟音が響く。

 通常よりも強力な(魔法の)炸薬によって打ち出された徹甲弾は、四番目の海賊を貫き、五番目の海賊に直撃して盛大に炸裂した。


 その間に、牽制を忘れなかった速射砲に気を取れられていた三番目の海賊が、護衛艦隊の船によって撃沈される。


「あと十隻だが——くっ!」


 俺たちの手前に、大量の砲弾が降り注がれた。

 大小様々な水柱が立ち、視界が塞がれる。


『どうする、大将』

「やむを得ないな。俺が甲板に出る。本来は見られたくなかったが……」


 先遣隊の五隻ならまだ良かったが、本隊の十隻は砲撃だけで相手できない。俺の広範囲魔法をぶちかますしかなかった。


「まってください!」


 だが、そこでアリスが叫んだ。


「後方より超大型の発光信号!『こちら護衛艦隊旗艦。至急、さがれ』と!」

「なに?」

『大将、後ろになんかでかいのがいくつかいる! オイラたちと同じくらいなのもたくさん!』

「護衛艦隊の船が後退をはじめました! どうしますか?」

「わかった。俺たちも下がれ」

『まだやれるぜ?』

「いや、下がれ。これは俺の勘だが、なにかでかいのが来る」

『あいよ。大将がそういうのなら!』


 海賊どもの煙幕が晴れないうちに、後退を始める。

 光点を見ると、海賊どもはまっすぐ前進してきているようだ。

 そして。

 後方から、複数の光点が表示された。

 その数、十二!


「発光信号です。向こうの艦隊用でしょうか、すごく速い……!」

「読めるか?」

「なんとか……『スコーパー』『ホッパー』『サーチャー』『ランナー』は右から、『ヒッター』『アーチャー』『ガンナー』『スキャナー』は左から牽制射撃。『スレイヤー』『エクスキュースナー』『スラッシャー』そして旗艦『バスター』は範囲威力射撃。前準備として通常弾斉射」

「さらに下がれ!」


 間髪容れずに、俺はそう叫んでいた。


『お、おう!?』


 戸惑いながらも、雷光号は速力をあげる。


 直後、自分たちが作った水煙を突き抜けて一隻の海賊が突っ込んできた。

 だがそれを見越していたかのように、後方から砲弾が叩き込まれ、巨大な水柱が上がる。


 その規模からして、雷光号の主砲よりもはるかに威力が高い。


「今のは、照準だ。次のがくるぞ!」


 俺がそう叫んだ直後、前方に巨大な水の壁が出現した。

 正確には、広範囲に多数の散弾がばらまかれ水柱の集合体を生み出したのだ。


「やはり拡散弾か……!」


 以前二五九六番と話した、点ではなく面攻撃に用いる子弾を用いた砲弾だった。

 それはまるで、急な豪雨で白く(けぶ)る地上を思い起こさせる。

 あの中に巻き込まれていたら、いかに雷光号とはいえ、ただでは済むまい。

 もちろん、その直撃を食らった海賊どもは……。


「か、海賊の艦隊——消滅しました」


 上ずった声のまま、アリスはそう報告した。

 たしかに表示板には、俺たちしか残っていない。


『すげぇな。みんなやるじゃん!』

「それもそうだが、それ以上に指揮官の腕がいい」


 両翼による挟撃により相手を追い込んだ上での、広範囲制圧射撃。

 やろうと思っただけで、できるものではない。


「大型の発光信号です。『雷光号、旗艦『バスター』に横付けされたし』」

『どうするよ?』

「言われた通りにしよう」


 俺たちは生き延びた護衛艦隊の船と共に、そのまま後退を続けた。

 やがて、護衛艦隊の様子がはっきりとわかるようになる。

 旗艦『バスター』を中心に、四隻の大型の戦闘艦が菱形の陣を組み、両翼を小型の戦闘艦が斜傾陣を敷いている。

 みっつをあわせると、立派な鶴翼の陣になっていた。


『あんだけ並んでると、すっげぇな』

「ああ、たしかに壮観だ……」


 だいぶ近づいてきたので、旗艦『バスター』の様子もよくわかるようになっている。

 まず、大きさが雷光号の五、六倍はあった。

 前方に二連装の主砲塔が二基、その後ろと両舷に同じく二連装の副砲塔が三基設えられている。

 おそらく、後方も同じ構成なのだろう。

 だとすれば、主砲は二連装四基の計八門、副砲も二連装四基の計八門となる。

 雷光号と決定的に違うのは、主砲が両舷にひとつずつあるこちらと違い、背負式になっていることで、これにより雷光号より広い射界を確保していた。

 これは次回の改良に、是非とも生かしたいと思う。


 そして艦橋。

 以前訪れた船団の中枢船のそれも城のようであったが、こちらは完全に要塞のようであった。

 見た感じ二段に別れているのは、おそらく船としての操船と、艦隊の指揮を執るための司令所が分離しているためだろう。実に理にかなった構造である。


「いいな……あれは」

『大将、浮気は駄目だぜ?』

「マリウスさんなら、もっとすごい船を造れそうですけど……」

「船そのものの設計はしたことがないからな」


 思えば、封印される前は陸戦が主体であったため、もっぱら機動甲冑の設計と生産、そして改良ばかりしていた気がする。

 だが、こうして巨大な船を見ていると……つい建造したくなる欲に駆られてしまう俺であった。


『接舷するぜ』

「ああ」

「『本艦にお越し願いたい』とのことです」

「了解したと返してくれ」


 アリスとふたり、甲板に出る。

 いままで横付けするときは同じような大きさの船であったため、乾舷の差はそれほどでもなかったが、今回は大きさに差がありすぎた。

 そのため旗艦『バスター』の乾舷は雷光号に比べてかなり高く、目の前には明灰色の巨大な壁にしか見えない。

 それを考慮してか、縄梯子(なわばしご)が降ろされたので、俺を先頭にして、ふたりでのぼる。

 二五九六番も連れて行きたかったが、雷光号を止めるわけにもいかないのでやむを得ない。

 そして、縄梯子を登りきってみると——。


「これは……」


 目の前に、護衛艦隊の人員を思しき人間たちが、ずらりと並んでいた。

 そしてアリスが登りきったことを確認してから、その隊列はふたつに割れる。

 そしてその中央から、司令官と思しき人物が歩み寄ってきた。

 身にまとうのは、白を基調とし、金の縁取りが施されたた詰襟の軍服。

 頭にかぶった白い帽子の正面には、金色の錨が刺繍されている。

 そして肩には、黒字に金色の星が五つの肩章。袖口にも、黒字に金色の線が五本。


 それは、魔王軍の軍服とよく似ていた。

 金色の錨を魔族の守護獣である竜に変え、白地を黒地に、金の縁取りを銀のそれに変えればほぼ同じ意匠になる。

 そして星が五つと五本の線は、軍の最上位、元帥を表していた。

 かつては、俺も保有していた称号だ。


 そして、長い流れるような黒髪を一房結い、()()()()()()()()()()()()()()()()


「間に合ってよかったです」


 絶句してしまった俺に対し、司令官——俺たちを新しい詰所に案内してくれた少女——は、微笑んだ。


「また会いましたね、アンドロ・マリウスさん」


 驚いているのだろう。アリスも小さく息を飲む。

 もっとも俺だって驚いている。訓練を受けているのはわかったが、まさか最上位の司令官であったとは。


「改めてごあいさつ致します。八代目護衛艦隊司令官、クリス・クリスタインです」


 そういって敬礼した彼女に合わせて、艦隊の陣営が一斉に敬礼する。

 反射的に、俺は敬礼を返していた。

 もっともそれは、魔王軍のそれであったが。




■今日のNGシーン


「発光信号です。向こうの艦隊用でしょうか、すごく速い……!」

「読めるか?」

「なんとか……『スコーパー』『ホッパー』『サーチャー』『ランナー』は右から、『ヒッター』『アーチャー』『ガンナー』『スキャナー』は左から牽制射撃。『スレイヤー』『エクスキュースナー』『スラッシャー』そして旗艦『バスター』は範囲威力射撃。サブカルクソ◯チームはそのままガケに突っ込んでください!」

「ポプテ◯ピック!?」

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