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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第九章:新船団・誕生!

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第二三〇話:護って守護元帥

「あのですね」


 俺の昇進して欲しいという要請に、クリスの眉が珍しくつり上がった。


「私はもう元帥なんです。これ以上、上にはあがれないんですよ」

「そうでもない」


 と、俺。

 物事には、なんであれ例外があるのだ。


「なんですか? この前言っていた上級大将みたいに、上級元帥があるとでも」

「いや、そこまで常設化されたものではない。だが、たとえば元帥が多大な功績を挙げたり、またその元帥により大きな権限を与えたりする場合、特別な階級を用意することがある」


 かくいう俺も封印される前は大魔(たいま)元帥という階級を預かっていたが、あれはすべてを統べる魔王が元帥と同じ地位にいては、体裁が悪いというものであった。

 今回の件も、ある意味それと似ている。

 クリスは、是非ともある地位に就いてもらいたいからだ。


「国――おっと、船団によっては、大きな権限を与え、通常以上の指揮権を付与する際に、元帥の上に特別称号を付与した元帥の地位を置くことがある」


 たとえば、皇帝を戴く帝国であれば、帝国元帥。

 もう少し民主的な国であれば、国家元帥。

 もっと単純に、大元帥とする国もあった。

 そのどれもこれもを、俺が滅ぼしたのだが。


「大元帥は、やめてくださいね。マリウス大将の、大船団長と被りますから」

「安心してほしい。俺もそう思ったから」


 なんでもかんでも大とつければいいという風習をつけると、えらく適当な船団になってしまう予感があった。

 それでクリスがいいというのなら、構わなかったが……。


「あと、妖精の司令官ってふたつ名があるからといって、妖精元帥っていうのもやめてくださいね。今はまだいいかもしれませんが、成長したら絶対に恥ずかしいので」

「あ、ああ……」


 背後に控えていたヘレナ司書長が、膝から崩れ落ちた。

 いまの妖精元帥という地位は、彼女がかなり強く推していたからだ。


「それで、マリウス大将はどのような地位を考えたんですか?」

「それなんだがな――」


 俺は、少し間を置く。

 出逢ってからの、クリスとの思い出を反芻したからだ。


「船団シトラスの艦隊のみが、護衛艦隊を名乗っている。そうだな?」

「そうですね。残りは普通に艦隊だったかと」


 それはクリスの先祖から連綿と続く、船団を護りたいという意思によるものであったと聞いている。

 そして、クリス自身の意思も。


「俺は、その想いを尊重したい。アリス――」

「はい」


 珊瑚で作られた小箱――封印される前は霊木であったが、いまの世界では珊瑚から削り出したものをそう使っているらしい――を俺の前に差し出して、アリスは恭しく跪いた。

 俺はそれを受け取り、蓋を開いてクリスにみせる。


「これは――」

「船団を示す錨を描いた盾に、五つ星。この階級章をもって、クリス・クリスタイン元帥を、『守護元帥』に昇進としたい。――クリス、異議はあるか」

「……いいえ」


 制帽を脱いで脇に抱え、クリスは直立不動の姿勢で、俺に敬礼した。


「不肖、クリス・クリスタイン。守護元帥の地位を拝命致します」

「よし。では――」


 ここからが、本番だ。

 俺は息を鋭く吸って、続ける。


「クリスタイン守護元帥には――船団アリスの統合艦隊総司令官に任ずる」

「――謹んで、拝命致します。アンドロ・マリウス大船団長」


 クリスが再び敬礼した。

 俺も、敬礼を返す。

 俺の名代として、クリスの胸の階級章を、アリスが恭しく交換する。

 これにより――。


 クリスは名実と伴に、船団アリスの艦隊筆頭となった。

 主な組織構成は、以下の通りである。


□船団アリス護衛艦隊


 総司令官:クリス・クリスタイン守護元帥

  ├機動遊撃艦隊司令官:アステル・パーム元帥

  ├装甲前衛艦隊司令官:ドゥエ・ブロシア元帥

  ├白兵揚陸艦隊司令官:リョウコ・ルーツ元帥

  ├水雷突撃艦隊司令官:エミル・フラット元帥

  └中枢近衛艦隊司令官:アンドロ・マリウス大将


「つまり私は、全軍の旗艦である雷光号に座乗したままでいいんですね?」

「ああ。その代わり、指揮艦『コマンダー』との情報連携は、いままで以上のものにするがな」


 『コマンダー』に移れといったら、それこそ任官拒否されかねない。

 なにより、雷光号よりも安全な場所といったら、それこそそれぞれの艦隊に属している紅雷号四姉妹しかいなかった。


「ひとりだけ大将だと寂しいだろ? この際昇進したらどうだ? マリウス」


 エミルがにやにやと笑って言う。


「せっかくだが、遠慮しておこう。中枢近衛艦隊といえども、いまのところたった三隻だからな」


 中枢近衛艦隊の構成は、今のところ旗艦『雷光号』、指揮艦『コマンダー』、そして機動要塞『シトラス』の三隻だけだ。

 これに元帥の地位を与えてしまうと、本来の意味での役不足となってしまう。

 先ほどの慣例云々の話に戻るが、元帥という本来はあまりない地位にそれをあてたくはなかった。


「わかりました。さっそく艦隊の掌握に努めましょう」


 制帽を被り、クリスがそういう。

 その目は既に総司令官らしい鋭さを宿していた。


「それと元帥の諮問機関である元帥府の開設も許す。ここに、元船団シトラス護衛艦隊の司令部をまるごとあてはめるといいだろう」

「なるほど。私が自由に動かせる組織をつくっていいということですね。では早速――」


 にっこり笑って、クリスは続ける。


「私の元帥府の特別顧問として、アンドロ・マリウス大将、アリス・ユーグレミア大尉、ニーゴ・雷光号大佐、そしてミュウ・トライハル准将を招聘します。――総司令官、命令ですよ?」

「謹んで、拝命しよう」


 これは予想できたので、俺は苦笑して承諾する。


「わたしもです、クリス守護元帥」

「アリスさ――いえ、アリス大尉。守護元帥はまだちょっとくすぐったいので、総司令官でお願いします」

「わかりました、クリス総司令官!」

「オイラもな!」


 ニーゴが嬉しそうに続く。

 そして――。


「私もですかーっ!?」


 完全に巻き込まれた声と表情で、トライハル准将がそう叫んだのであった。

「私にいい考えがある! ——いってみただけです」

「お、おう……!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヘレナ司書長、そんな膝から崩れ落ちなくても(笑) そしてミュウさんの巻き込まれ悲鳴、やっぱりミュウさんはこうじゃないとですね! 護衛艦隊、艦隊名と元帥がずらっと並ぶと凄く格好良いですね、…
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