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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第九章:新船団・誕生!

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第二二一話:「さぁこの中から好きなものを選ぶがよい」「それは勇者のやることでは?」

「来たな、マリウス」


 アリスとクリス、そしてトライハル准将を伴って入室した俺に声を掛かけてきたのは、

 巨大な円卓の一席に座っていたエミルだった。


「今回はいつもと勝手が違うぜ? 覚悟しておけよ」

「もとより、そのつもりだ」


 まず、会議室がいつもの小規模なものではない。

 機動要塞『シトラス』後部艦橋、大会議室。

 通常は百名規模の大型会議用に使われる部屋であったが、今回はシトラス側が俺を含めて四名、ウィステリア側が二名、ジェネロウス側が二名、そしてルーツとフラットが一名ずつと、計十名しかいなかった。

 だが、それでも大会議室を使わざるを得なかった理由がある。

 それは――。


「皆様、ご起立くださいませ。ミニス王陛下、御成りです」


 そう。

 まずウィステリア側の参加者に、ミニス王がいた。


「そのままご起立願います。続きましては、聖女アン猊下、御成りです」


 そして次に、ジェネロウス側の参加者に、聖女アンがいた。

 ふたりとも地位としては俺と同じ、船団長と同等の地位にある。

 そしてひとりで参加しているエミルとリョウコは、それぞれ軍の長であると同時に、船団長も兼任している。

 つまり今回は、いつものような軍同士の会議ではなく、船団長同士の、政治の会議なのであった。


「大きいな。ここまで大きいとは思わなかった」


 着座したミニス王が、周囲を見渡しながら、ひとりごちた。


「そう思わぬか? ()()()()()()

「はい、陛下。仰るとおりですわ」


 ミニス王に随伴するのは、アステルである。

 なのに、ミニス王は彼女のことを(しょう)ステラローズとは呼ばなかった。

 それは、アステルが元帥に昇進した際、彼女の父であるチクロ元帥が引退し、アステルに家督を譲ったからだ。

 なお、本人は王府の特別顧問という地位に就任している。

 引退したとはいえ、その知識は必要とされているためらしい。


「さて、マリウス公。今回の議題、なにか察していような」

「小官の新たな役職――でしょうか」


 今現在、船団シトラスの下に、ウィステリア、ジェネロウス、ルーツ、そしてフラットの四船団が属している形になっている。

 そして俺は船団シトラスの船団長代理管理官という役職であるが、いつつの船団がひとつにまとまったいま、そのままの役職ではいられないらしい。


「その通りである」


 ミニス王は、鷹揚に頷いた。


「して――ステラローズ」

「はい。我がウィステリアからは、特命卿(とうめいきょう)の称号を提案致しますわ」


 特命卿。

 たしか古くは王の下で権力を振るう場合に任命された役職だ。


「ウチはもっと単純だぜ?」


 身を乗り出して、エミルが続ける。


「――組長(ボス)だ!」


 ボス……古代語か、喪われた言語だのだろうが、なにを意味するのだろうか……。


「我らルーツも決まっております」


 リョウコも珍しく、エミルと同じように身を乗り出していた。


「古代の将官の称号、将軍をさらに行く称号……すなわち、大将軍です!」


 ぐっと右の拳を握りしめて、リョウコ。

 おそらくその称号は彼女にとって、由緒のある、そして重要な称号なのだろう。


「そして私達ジェネロウスは」


 いつも以上に凜とした声で、アンが言葉を続ける。


「――その、初代聖女を最後まで推したのですが――」


 推さないでほしい。頼むから。


枢機卿(すうきけい)の称号を提案したいと思います」


 枢機卿は、ウィステリアの特命卿と同じ意味あいに近い。

 ただしそれは、王の下か、聖女の下か、という決定的な違いがある。


「そんで、シトラスは?」

「そ、それがですね……」


 エミルの問いに、いまいち苦手そうな表情で、クリスが答えた。


「歴史が一番浅い私達船団シトラスだと、そのような特別職の称号がなくて――」

「つうたって、緊急時用に整備されていない訳じゃないだろ」


 エミルが、鋭く指摘する。


「ええ、あるにはあるんですが……トライハル准将?」

「はい。船団シトラスの法規に照らしますと、マリウス船団長代理管理官においては――」


 一息ついて、ミュウ・トライハル准将は続ける。


「三権を集約せし統合幕僚会議議長が妥当かと――」

「なげぇよ!」


 確かに長かった。


「しょうがないじゃないですか、ウチがこうなるなんて、誰も予想していなかったんですから――!」


 クリスの言葉から察するに、船団シトラスは他の船団を手中に収める事態になることを、まったく考えていなかったらしい。

 逆にいえば、他の四船団は多少なりともそれを意識していたということになる。

 だから結果として、シトラスがその地位についたのは、皮肉とまでは言わないが、数奇な運命だといえた。


「で、マリウスはどれを選ぶんだ?」


 エミルが興味深そうに訊く。


「余としては、どれでも構わぬ」

「聖女としての私も、同様です!」


 初代聖女だったら、譲りませんでしたが――! そういって、随伴しているドゥエにこづかれるアンであった。


「正直に言うと、小官――いや、俺としてはどれも選べないな……」


 その地位も、その船団の臨時職の意味あいが強い。

 したがってその中から選んだ場合、選んだ側の船団の影響を強く受けることになる。


「では、新たな称号を自ら作るか?」

「そ、それは――」


 ミニス王の鋭い指摘に、俺は言葉を詰まらせた。

 新たな称号を作る。

 それは、かなり身に重い。

 一度玉座につけばわかるのだが、新たな言葉を作るというのは、できるからこそその責任が重くなるのだ。

 なにせ、下手をすれば歴史として永劫残ってしまうのだから。


「――気持ちはわかるな」

「――そうですね」


 俺と同じ結論に達したのだろう。

 ミニス王と聖女アンは、あっさり引き下がってくれた。


「とはいえよ、いまのままってのもなんかしまらねぇぞ」

「そうですね……下の者が昇進したのに、上の者がそのままというのは、後の世に悪い慣例として残りかねません」


 ――む。

 エミルはともかく、リョウコの指摘はたしかにそうだった。


「なにかいい称号が、思いつければよろしいのですが……」


 アステルが小首を傾げ、

 皆で考え込んだとき——。


「あの」


 挙手をしたのは、俺の隣で控えていたアリスであった。


「つまりは、マリウスさんが船団長を越える称号で呼ばれるようになればいいんですよね?」

「まぁ、そうですね」


 クリスがそう答える。


「それだったら――さきほどのリョウコさんの大将軍で思いついたんですけど」


 そういって、アリスは人差し指をたてると、


「大船団長で、いいのでは?」


 会議室が一瞬、静寂に包まれた。

 そして——。


「「「「「それだッ!」」」」」


 ミニス王、聖女アン、エミル、リョウコ、そしてクリスが、ほぼ同時にくらいついたのであった。


「まぁ単純ですけど、わかりやすい名称ですね」


 トライハル准将が、メモを取りながらそんな感想を述べる。


「ああ、そうだな……」

「どうした、歯切れが悪いぜ?」

「いや、それでいい」


 エミルの言うとおり、少し躊躇したのは、訳がある。

 将軍を超える地位、大将軍。

 船団長を超える地位、大船団長。

 それら言葉から、ふと連想してしまったからだ。


 ――大魔王。

 すべての魔王を超え、すべての魔王を統べるとされる、伝説の存在を……。




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