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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二章:旅の仲間

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第二十二話:上陸

■登場人物紹介

【今日のお題】


アンドロ・マリウス:勇者に封印されていた魔王。

【好きな食べ物】「アリスの作った料理だ」(作者註:素で言っている)


アリス・ユーグレミア:魔王の秘書官。

【好きな食べ物】「キャベツとベーコンをたっぷり入れたスープが好き——って本当ですかマリウスさん!?」

二五九六番:元機動甲冑。現海賊船雷光号。

【好きな食べ物】『そら大将の魔力よ』



メアリ・トリプソン:快速船の船長。

【好きな食べ物】「よく火で炙った塩漬け肉ね! あと上のふたり、熱いわね!」

ドロッセル・バッハウラウブ。メアリの秘書官。

【好きな食べ物】「サンドウィッチ。手軽に食べれていい。あと惚気はどこか他の場所でやって」

「ふん……」


 甲板からほぼ飛び降りる形で、俺は島に上陸した。

 久々の陸地だが、船上の生活に慣れたせいか、特に感慨は湧いてこない。


「わわっ!」


 そんな声が響いて上を見上げると、俺に続いて雷光号(らいこうごう)から降ろした縄ばしごで降りていたアリスが、足を踏み外したところだった。


「そのまま手を離せ」


 そう言うのと同時に俺は跳躍して、アリスを抱きかかえて再び着地し、ことなきを得る。

 もっとも、落ちて怪我するほどの高さでもなかったが。


「あ、ありがとうございます」

「なに、気にするな」


 身体が勝手に動いたのだから、本当に気にする必要が無かった。

 それに、そもそもの体重が軽かったので、まるで苦にならなかったというのもある。


「それにしても——」


 島を見回してみる。

 発掘島(はっくつじま)そのものは、俺が目覚め、アリスと出会った島と同じく荒涼としていた。

 ガラス質のきめ細かい砂に覆われた不毛の島はしかし、あの島と違ってふたまわりほど大きく、そして中央部分に、現在の技術で作られたと(おぼ)しき簡素な砦があった。


 砦といっても、海賊どもの砲撃にはとても耐えられそうもない、雨風をしのぐためだけのものに見える。


「あの建物は、最近作られたものなのか?」

「そう聞いているわね」

「それほど頑健には見えないのだが……」

「連中に壊されないのかってこと? なぜか知らないけど、手を出してこないのよ」


 探索用の装備が詰まっていると思しき大きな背負い袋を担ぎ直しながら、メアリがそう答える。


「それより、随分とまぁ大胆な上陸をしたわね……」

「——言われてみれば、そうだな」


 (あかつき)淑女号(しゅくじょごう)は帆以外は普通の帆船だ。それゆえ桟橋もない発掘島には直接上陸できず、少し沖に停泊してから小型艇を降ろして上陸している。

 それに対して我々の雷光号はというと、直接島に乗り上げていた。

 搭載艇もないし、かといって足がつく深さになったところで海に降りて服を濡らすのもばからしい。

 そういう理由で、直接上陸したのだが——。


「見た感じ、座礁しているように見えるんだけど……」

「大丈夫だ、問題ない」


 なるほど、なかば浜にめり込んでいるその姿、端から見ればそうみえるわけか。

 実際には、余裕で抜け出すことが出来るのだが……。


「それに——」

「それに、なに?」

「いや、なんでもない」


 いざというときは陸地も歩けるようになっているとは、とてもではないが言いだせない雰囲気だった。


「急いで。早くて一週間、遅くても十日で、海賊がまたここにくる」


 そんな俺達に、同じく大きな背負い袋を肩に掛けたドロッセルが声を掛ける。

 船そのものが発掘品ということになっているせいか、直接島に乗り上げても不思議ではないらしい。


「思ったより早いんだな」

「ええ。海賊はどこからともなく現れるから、本当に始末に負えない」


 同じ事を、広い感知能力をもつ二五九六番もそう言っていた。

 どこから来ているのかは、本当に謎らしい。

 もっとも、二五九六番の同族もどこにいるのかさっぱりわからないと答えていたから、単に呑気なだけなのかもしれなかったが。


「さぁマリウス、行きましょ! あの砦が地下——発掘現場への入り口になっているわ」

「そういうことか……前に来たことあるのか?」

「まぁね。合同調査ってやつ?」

「それでは、めぼしいものはないのではないか?」

「そうでもないのよ。前回潜った時、どうやっても開かない扉があったから」

「その通り。前回はその扉を開けようとしている間に時間切れになった」


 メアリの言葉を、ドロッセルが引き継ぐ。


「当初は発破で強行突破する予定だったが、発掘品に詳しいマリウスがいるので方針を変えた。是非とも、その扉を開けてほしい」

「わかった」

「ところで、そちらはふたりとも来ているけど大丈夫?」


 アリスは残ると思ったのだろう。

 実は俺も残したかったのだが、アリスがどうしてもといって聞かないので、連れて来たのだ。


「そっちはまだ船員がいるのだったな」

「ええ。あと十人残っているわ」


 振り返って自分の船を眺めながら、メアリ。

 なんでもひとりが伝令役として島に待機し、残りの九人で操船するらしい。


「そっちは大丈夫なの?」

「ああ、雷光号はある程度自動的に動くことが出来るんだ」

「なんですって!?」

「いまなんと」


 メアリはおろか、ドロッセルまでもがそう聞き返してきた。


「だから、雷光号はある程度自動的に動くことができる。流石に複雑な動きはできないが、砲撃された方向に反撃することや、ある程度定めた通りに回避することも可能だ」


 実際には俺たちがいなくとも勝手に動くし勝手に戦うこともできるのだが、二五九六番の存在も含めて説明するとややこしくなるので、そう誤魔化す。


「ほぼ自動的に動く船かぁ……売ったら、船団すら買えそうね」

「そうはいうが、メアリこそ自分の船の帆を売りたいか?」

「まさか」

「だろう。俺も同じ気持ちだ」

「……なるほどね。理解できたわ。軽率に売ろうなんていってごめん」

「いやいい。気にするな。それよりも今は、発掘島だからな」


 俺は、発掘島を睨む。

 この地下には()()()()()()()()()()()()()



 ■ ■ ■



 ——上陸する、少し前のこと。


『ところで、大将と嬢ちゃんが留守の間に向こうさんの船員がなんかの用事で乗って来たらどうする?』

「全ての扉を施錠した上で、ノックでもされたら『入ってまーす』と答えてやれ」

『あいよ』


 メアリとドロッセルはある程度信頼できるが、そのほかの船員はまだいまいち信頼していない。


「それよりもだ。最初に記録した島とのこの発掘島との位置を表示してくれ」

『あいよ』


 光点がふたつ表示される。中心部分にある大きなものが発掘島、そしてだいぶ離れている小さなものが最初の島だろう。

 俺は慎重にその二つを見定めて——ため息をひとつ漏らした。


「やはりそうか……」

「知っている場所なんですか?」


 アリスも一緒になってその光点をのぞきこむ。


「いや、逆だ」

「えっ?」

「過去の記憶と照らし合わせても、この場所に拠点を作った憶えは無い。つまり——」


 そもそも、俺が築いた城は、その大陸の最高峰に建てたのだ。故に、島があるとした場合、その山に匹敵するものが存在していることになる。

 だから——。


「この発掘島とやらは、俺が封印されたあとに出来たものだ」



 ■ ■ ■



 だからこの島に眠るなにかは、俺が全く知らないものだ。

 俺が作ったもの、あるいは配備を命じたものならまだいい。封印される前までなら、すべての拠点の大体の構造は理解できているからだ。

 だが、そうでないならば——たとえ落ち延びた魔族が遺したものだとしても——危険なことには変わらない。

 メアリたちはすでに立ち入ったことがあるそうだが、開けることのできなかった扉があると言っていた。

 その向こうには、侵入者を一網打尽にする防衛装置があるかもしれない。

 いや、下手したら島ごと吹き飛ばす自爆装置かも——。


「大丈夫ですよ」


 握りしめた手に触れたのは、アリスだった。


「大丈夫ですよ、マリウスさんならきっと大丈夫です」


 俺の心中を察しているかのように、アリスは言う。


「根拠がないぞ」

「ありますよ」


 メアリたちに聞こえないように、声を落としてアリスは続ける。


「だってマリウスさんは、世界を滅ぼしかけるほどの魔王だったんですから。何があったって大丈夫です」


 ふ。

 ふは。

 ふはは!


「言うではないか」


 だが、おかげで気は楽になった。


「ちょっとそこのふたりー! はやくきなさーい!」


 ドロッセルと共に先に進んでいたメアリが、大きく手を振る。


「はーい! すぐにいきまーす!」


 アリスが大きく手を振り返す。


「行きましょう、マリウスさん」

「ああ」


 ガラス質の砂浜を、俺とアリスは揃って踏みしめた。



■今日のNGシーン


「わわっ!」


そんな声が響いて上を見上げると、俺に続いて雷光号(らいこうごう)から降ろした縄ばしごで降りていたアリスが、足を踏み外したところだった。


「白か」

「やっぱり見えていたじゃないですかやだー!」

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