第二〇七話:轟炎雷光号・開砲!
「雷光号、『轟炎再来』と合体する!」
『おう!』
「エミル、安全帯を付け、衝撃に備えろ!」
『りょうか――うおっ!?』
まずは『轟炎再来』の操縦席部分が後部に移動し、内部に収納される。
続いて真下に向いた推進器により浮かび上がり、雷光号の肩――正確には肩の主砲と、頭部の複合測距儀の隙間――に接続する。
同時に最後部が雷光号の背部に接続。これにより、ふたつの艦の機関が出力上、直列となった。
『おうっ!?』
雷光号が変な声を上げたのは、艤装の一部が兜に変形して雷光号の頭部に被さったためだ。
そして後部から最前部までの船体がふたつに割れ、中から砲身がせり出す。
これが――。
『轟炎雷光号!』
以上、四秒間のできごとだった。
『ハハハハハ! なにをするかと思えば、そちらが複製品であったか!』
おそらく興味を惹かれたのだろう――そしてそれが、こちらにとって最大級の僥倖だった――青の〇一〇が愉快そうに笑う。
いざというときのために、〇一〇が発射態勢に入ったら蒼雷号に妨害射撃を行ってもらい、時間を稼ぐ予定であったのだが、その必要はなかったようだ。
『くるがいい! 複製品ごときに我が砲撃は打ち消せぬ!』
――そうか。
ならば、やってみるまでだ。
まずは……。
「クリス」
「はい――これは!?」
クリスの席の前に、釦を押すためだけの装置がせり出す。
「これから大出力・高火力の荷電粒子砲による射撃を行う。本来は単艦に使うものではなく、敵艦隊をまるごと攻撃するためのものだ。故に艦内にいる最上位のものが、荷電粒子砲の使用、ならびに砲撃の承認を行う必要がある」
「了解しました。荷電粒子砲の使用、並びにその砲撃を承認します」
クリスが承認釦を押した。
それに併せて、操縦室の照明が落ち、室内が暗くなる。
「アリス。表示板に轟炎雷光号の荷電粒子砲の状況が表示されるので、読み上げを頼む」
「了解しました。両艦、機関の直結を確認。荷電粒子砲基部、圧力上昇。照準開始!」
『照準完了! なぁ大将、すげぇ目が良くなった気がすんだけど』
「装着した兜は照準に特化した装置だからな」
見た目は、巨大な単眼鏡を片眼鏡のように装着した兜のようになっているのだが、その兜は外見通り、精密射撃を保証する性能を有していた。
「最後にエミル! 引き金はせり出しているだろう」
『おう! えらいごっついのがな!』
「こちらから合図をしたら撃て」
『了解! って向こうさんも似たような状況になってんぞ!』
「それでいい。こちらがまともに撃てば相手後方の海が蒸発する。狙うのは、あくまで相殺だ。アリス……?」
「焼室内、圧力急上昇! 砲口解放、および砲身帯電を確認! 轟炎雷光号荷電粒子砲、開砲します!」
俺を通じて機関が最大限の出力を荷電粒子砲に注ぎ込む。
それによって火の魔法、雷の魔法、そして光の魔法の複合装置である荷電粒子砲が、最前部から中部にかけて紫電を周囲にまき散らす。
敵である青の〇一〇も、偶然ながら使うものは一緒であるらしい。
向こうは前頭部と腹部を砲と結線し、その出力を伝えているようであった。
互いが立つ海が沸騰し、両者の間を雷が飛び交う。
既にお互いの砲口は解放されており、共にまばゆい光が灯っていた。
蒼雷号はすでに後方に待避し、周辺の艦船に対し、待避を促しはじめていた。
あとは、いつくるか――。
「敵艦、出力急上昇! きます!」
「撃て!」
『よっしゃあああ!』
通信機越しに、エミルが引き金を引く重い音が響いた。
直後、減光処理を行っているはずの室内が真っ白に染まる。
「アリス!?」
「だめです! すべての計器が麻痺してなにもわかりません!」
幸いにして、光はすぐにやんだ。
あとに佇むのは、荷電粒子砲を構えたままの轟炎雷光号と――。
『ハハハハハ! ハハハハハ……!』
同じ姿勢の、青の〇一〇であった。
だが――。
『みごと! 千番代からよくぞここまで己を練り上げた!』
自らの大砲を杖に、片膝をついたのであった。
わずかながら轟炎雷光号の荷電粒子砲が、あちらよりも威力が上だったのだ。
もし出力の差が逆であったのなら、膝をついたのは俺達の方であったろう。
『ハハハハハ! さぁ! 煮るなり焼くなり好きにするとよかろう! どちらもできないがな!』
割と余裕のある青の〇一〇であった。
たしかに煮ることも焼くことも出来ないが、できることはある。
「聞かせてもらおうか、北の船団とやらのことを……」
『ハハハハハ! 聞きたければ、姿をあらわしたらどうだ?』
器用にも、海の上であぐらを組んで、青の〇一〇はそう指摘する。
いわれてみれば、たしかにそのとおりではあった。
『外に出る。雷光号、手を添えてくれ』
「マリウスさん」
「マリウス管理官!?」
アリスとクリスが、同時に声を上げる。
おそらく青の〇一〇がまだなにかをする可能性を危惧しているのだろう。
『いいのか、大将』
『こっちゃ次のやつ撃てるまで少し時間かかるだろ』
雷光号も、エミルもそう言ってくれる。
だが――。
「なに、心配はいらない」
実は。
轟炎雷光号の荷電粒子砲、実は魔法として既に術式を組み込んである。
いざというときは、即座にそれを青の〇一〇の頭に叩き込めるよう準備しつつ、俺は外へと出たのであった。




