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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第八章:船団長、魔王マリウス

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第二〇三話:別に改造してしまってもかまわんのだろう?


 スカーレットたち紅雷号四姉妹と所属することになる各船団との合同演習は続いていた。

 これまで俺の用意した氷製の標的艦隊に対し、船団フラット、船団ルーツが勝利を得ている。

 続くのは――。


『そろそろ行くわよ。スピネル。ステラローズ、先に行っても?』

『ええ、こちらはかまいませんわ』


 装甲戦艦『白狼(はくろう)』と高速戦艦『ステラローズ』から、通信機を通してドゥエとアステルの声が響く。

 従来の発光信号による通信から、より大容量の情報をやりとりでき、なおかつ使いやすくという目的で俺が作った通信機は、早くも活用できているようであった。


『それじゃあ、いくわ。――スピネル』

『はっ! おまかせください!』


 二隻の軍艦が、演習海域へと躍り出るように進む。

 これまでの定石通り、足が速く機動力のある紫雷号が弧を描くように回り込み、装甲が厚く火力の高い『白狼』が真正面から挑む陣容だ。

 それにしても――。


「『白狼』相手では、装甲は抜けんな」


 雷光号の操縦席で、俺はそう呟いた。


「副砲が載るべき場所を削ってまで、複雑な構造の装甲で覆っていますからね……堅いことは確かなんですが」


 提督席で、クリスが唸る。

 確かに『白狼』は装甲戦艦を名乗るだけあって、その防御力は比類がない。

 先の船団シトラス奪還戦においても、並みの戦艦なら中破は免れない機動甲冑の大砲をまともに食らって、はじき返したほどだ。

 だがその分、クリスのいうとおり副砲が少なくなっていた。

 おそらく、速力を犠牲にしたくはなかったのだろう。

 故に、高速戦艦『ステラローズ』ほどではないにしても、こちらの『バスターⅡ』、揚陸戦艦『鬼斬改二(おにきりかいに)』そして(水雷艇)(母艦)戦艦『轟基(ゴゥベース)』に遅れを取ることはなかった。


「だとしたら、やることはひとつだな」


 俺は標的艦隊の操作に集中する。

 狙いは紫雷号ただ一隻だった。

 あとは『白狼』からの砲撃に気をつけていればいい。


『む?』


 間髪おかず、スピネルはこちらの意図に気付いたらしい。

 小回りの効く強襲形態に素早く変形すると、こちらの銃撃を難なく避けていく。

 だが、何故か反撃はしてこない。そして――。


「得物を抜いていないな……」


 竜骨と平行する隙間に剣ひとふりがおさまるようにしているのだが、紫雷号はそれを抜いていなかった。

 まるで、まだ抜く機会ではないとでもいうかのように。


『よっ、とっ、はっ!』


 しかし肩に移動した主砲は散発的にだが撃っている。

 おそらく牽制用なのだろうが――。


「『白狼』主砲を撃ちました!」

「「この距離で!?」」


 アリスの報告に、俺とクリスの声が重なった。

 あまりにも、紫雷号と標的艦隊の距離が近かったからだ。

 これでは当たろうが外れようが、至近距離にいる紫雷号はただでは済まな――。


『……せぇい!』


 わかっていたとばかりに、紫雷号が前方へ身を投げ出した。

 一瞬、そのまま海中に飛び込んで爆風をやり過ごすのかと思ったが、そうではなく、


「――標的艦、一隻撃沈。紫雷号、でんぐりがえしで爆風の影響を軽減しました」

「えぇ……」


 アリスの報告に、クリスが信じられないような声を上げる。

 確かに爆風を受けたときは表面積を小さくした方がいい。

 そしてそのまま爆風が進む方向と併せて移動すれば威力の減衰が可能だ。

 だからといって、それを同時に、しかも狙ってやるのはそう簡単なことではない。


「白狼さらに接近、主砲発射」

「さらにか?」


 だが、今度は標的艦を狙ったものではなかった。

 前転し少し距離を置いた紫雷号と標的艦の間に撃ち込み、さらに距離を開いたのだ。


『いまよ、いきなさい!』

『援護射撃、感謝であります、ドゥエ殿!』


 紫雷号が、背中からはじめて得物を抜いた。


『なんだあれ?』

「剣ではない――あれは、弾倉? だがいったいなんのために?」


 弓のように長い弾倉である。

 あれだけの長さだ、総弾数は相当のものであるが――。


『よいしょっとぉー!』

「なんだと!?」


 俺は思わず、そんな声を上げてしまった。

 紫雷号が肩の主砲をひとつ、みずから取り外したからだ。

 そして基部から銃把(じゅうは)(作者註:銃のグリップに相当する)を引き出すと、空いた部分に弾倉を装着する。


『ドゥエ殿!』

『いきなさい!』


 『白狼』から再び主砲が放たれた。

 今度のものは攻撃でも牽制でもない。

 船団シトラス奪還戦で雷光号がやったことと同じ、足場となる水柱を立てたのだ。


「くっ!?」


 俺は急いで標的艦隊を散開させる。

 だが、もう遅かった。


『もらった!』


 紫雷号が水柱を踏み台に跳び、手に持った主砲を恐るべき連射速度で放つ。

 通常その速度で連射すればあっというまに弾切れになるが、長大な弾倉が、それを支えていた。


『はっはー! 全弾命中!』


 弾倉を打ち切り、赤熱した砲身を天に掲げて、紫雷号。

 標的艦隊は、いうまでもなく全艦撃沈であった。



『大将、いつのまにあんなもん作ったん?』

「ちがう、俺じゃない……」

『なぬ?』

「おそらく、スピネルが、自分で作ったんだ。いや、この場合は」


 主砲の構造を知り、そこから手持ち型へと変形させ、手持ちになった場合の弱点となる総弾数を補うために、剣ではなく弾倉を装備する。


『射撃の精度を弾数で補う……びっくりしました』

『しかも剣を捨てるとは、驚いたね』


 サファイアとオニキスが、姉妹に賞賛を贈る。


『っていうかスピネル! いまのはなんなのよ!』


 ひとりスカーレットが、驚いたままの声で問い詰めるようにそういった。


『これですか。我が艦隊は戦艦の制圧前進が主ですから、できるだけ長い間牽制できるようにしようと思いましてな。それで、色々考えた結果、手数重視で行こうと決めたのであります。とどのつまりは――』


 冷えているのを確認しながら、銃身を空いている手のひらに当てて、黒雷号が言葉を返す。


『《別に改造してしまってもかまわんのだろう?》でありますな』


 みずからを、改造する。

 いってみればそれは、俺の領域に足を踏み込んだようなものだ。

 しかし――いや、だからこそ。


「みごとだ……スピネル!」


 いままでなかったその発想力に、俺は賞賛の意を送ったのであった。


「実は2丁拳銃をやりたかったのでありますが……それはまた今度の機会で」

「やりたいのか」

「やりたいであります。ガン・カタは軍艦のロマンでありますよ!」

「なんなんですか、そのガン・カタって」

「クリスは知らないほうがいいと思う……」

「でありますな」

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