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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第六章:タリオンの箱庭

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第一五五話:激流での決闘


 機影の背後に現れたのは、機動甲冑だった。

 だが、見慣れていたそれとは大きく違う。

 まず目立つのは、半月状に張り出した各関節。

 これは、関節の動きを最大限いかすためのものだろう。

 そして流線型の装甲。

 おそらくそれは、本体の高速移動と、対被弾性――つまり、敵の砲撃を受けきるのではなく、射線をずらして弾いてしまうという考えだ――を意識しているのだろう。


 ふははっ――!


 思わず、笑いそうになってしまう。

 それはつまり、俺が封印される()の技術体系では無い。


 俺が封印された()の技術体系で組み上げられた、機動甲冑であるからだ。


『察しが良いのは、さすがといったところですかねぇ』


 最新型の機動甲冑の前に佇み、機影がそう呟く。


『これで本物だったから、ボクに勝てるでしょうよ。それではまぁ――』


 機動甲冑の頭部、顔面部分が左右に開く。

 その中は空洞になっており、ちょうど機影がすっぽりと収まる広さがあった。


『殺しあいと、いきますか』


 直後、顔面部分がぴったりと閉じ、両眼が怪しく光る。


「来るぞ! 雷光号、強襲形態!」

『おう!』


 即座に雷光号が変形し、剣を構える。


「アリス、『鬼斬改二(おにきりかいに)』と『轟基(ゴゥベース)』発光信号。なるべく俺達と距離を置き、砲撃のみで戦え!」

「了解しました!」


 それはリョウコとエミルにとっては持ち前の移乗戦や水雷戦が使えない選択であることは百も承知であったが、機影と機動甲冑の力量が未知数である以上、いたしかたなかった。


「敵機動甲冑、来ます!」

『ってなんだこいつ、速ぇ!』

「雷光号、斬りかかるな! 防げ!」

『お、おう!』


 おそらく初めてのことだろう。

 雷光号が、防戦に回った。

 突撃してくる機影の機動甲冑が、真上から斬りかかる。

 それを雷光号は、自分の剣で弾くが――。


 操縦室内に、いままでなかった揺れが伝わった。

 斬撃を弾いた雷光号が、よろめいたのだ。


『なんだこれ!? めっちゃ重いぞ!』


 ニーゴが動揺した声を上げる。

 いままで、自分よりも出力が高いものと戦闘したことがなかったからだろう。

 そしてそんな雷光号に斟酌する理由など、機影の機動甲冑にはあるはずもなく。

 乱れ打ちのような連撃が、雷光号めがけて打ち込まれてきた。

 まだどうにかそれを自分の剣で受けることが出来はするが、とても反撃に移ることはできない。


『大将、やべぇよ!』


 悲鳴をあげそうになるニーゴに、俺も額の汗をぬぐわざるを得ない。

 これはもう、俺自身が出陣するしか――。


「マリウスさん! 『鬼斬改二』と『轟基(ゴゥベース)』が反転! こちらに接近しています!」

「――いかん!」


 おそらく、形勢不利な雷光号を援護するつもりなのだろう。

 同時に両艦からの砲撃が、機影の自動甲冑に命中した。

 だが、その流線型の装甲は伊達ではないらしく、傷ひとつついていない。


『どうする大将、いったん立て直すか!』

「ニーゴさんのいうとおりです、マリウス艦長! ここは一度退かなければ!」


 クリスの判断も、もっともだ。

 現時点では雷光号に勝ち目はない。

 ……だが、しかし。


 ひとつ、まだ手があった。


「アリス、発光信号! リョウコは『鬼斬改二』の揚陸指揮所に全乗組員を移動! 追って指示をまて! エミルは全水雷艇でリョウコを護衛する準備にかかれ!」

「了解です!」


 アリスが慣れた手つきで――この事態でも決して動揺することなく――発光信号を発信する。


「一体なにをするつもりです?」


 クリスの問いに、俺は一度意識して息を吸い、こう答える。


「隠しておいた札を使う。こういうことは、あまりしたくないのだがな……!」

「それは一体――」


 クリスがその先を促そうとしたとき、


「マリウスさん、『鬼斬改二』揚陸指揮所へ移乗が終了したそうです。あの、一体なにを?」

「了解した。これより――俺が『鬼斬改二』を遠隔操縦する。ニーゴ、しばらく自分自身の判断で防げ!」

『おう、やってやらぁ』

「アリス、リョウコに発光信号。『鬼斬改二』を前後に分割する。前半部分はただちに反転し後方にて待機、エミルは引き続きその護衛を続行せよ!」

「――了解!」


 程なくして、『鬼斬改二』の前半分、揚陸機能を行う部分が分離した。

 実は『鬼斬改二』は、前半分だけでも揚陸艦として機能するように作ってあるのだ。

 そして、後半分はというと。


「雷光号、合図をしたら全力で大きく下がれ!」

『おう! でもはやくな! もうもたねぇ!』

「案ずるな、あと少しだ!」


 全神経を集中させて、『鬼斬改二』の後半分。戦艦としての機能を集約させておいた部分を操縦する。軸線を雷光号にあわせて――いま!


「雷光号、下がれ!」

『おう!』

「総員衝撃に備えろ。『鬼斬改二』、魔力炉直結!」


 実は『鬼斬』から『鬼斬改』にしたとき、既に魔力炉を組み込んでおいたのだ。

 それを強襲形態の雷光号と接続することにより、数値上雷光号は二倍の出力を誇ることができる。


 むろん、それだけではない。


 『鬼斬改二』の装甲が変形し、雷光号に覆い被さる。

 そして帆柱に隠すように格納していた巨大な刀が引き抜かれ、雷光号の手の中に収まった。

 最後に、『鬼斬改二』の艦橋が変形し、強襲形態雷光号の頭部に被さり、兜となる。

 いや、これは既に雷光号では無い。あえて呼ぶとするなら――。


「直結完了! 『鬼斬雷光号(おにきりらいこうごう)』・起動!」

『うおおおおおおっ!』


 リョウコの船団独特の鎧――確か武者といったか――姿となった、鬼斬雷光号が、吼える。

 その際余剰となった熱が海水を沸騰させ――辺りに猛烈な蒸気が立ち上る。

 さぁ、仕切り直しといこうか!



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