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人狼学園  作者: 天草メイ
4日目
36/39

第4夜⑶


「ねえ、ルナちゃん。私がなんで死んだかわかる?」



「え?何よ急に……!」








「……ルナちゃんに、私を忘れさせないようにするためだよ!」









「そんなの滅茶苦茶じゃねえか」



「いや、私、知ってる……」




「キョウカ?」





キョウカがゆっくりと話し始めた。




「私、マイカが死んだ日、ユヅキとたまたま駅に行ったんだ。


そしたら、警察がいて、話しかけられた。その時にマイカの遺したメモの内容を聞いたの。



『私の大切な人が、私のことを忘れられなくなりますように』って」





「どうしてそれを今まで黙ってたんだ?」




「それは……


ルナを傷つけちゃうと思ったから」




「え?」




「実はね、マイカが死ぬ少し前に、聞いてたの。ルナがあまり一緒にいてくれなくて寂しいって。

だからあのメモの意味も分かっていた。


でもメモの内容をルナに伝えたら、ルナはきっと自分のことを責めちゃうかもしれないと思って、黙ってた」





「そうだったのか……」







「で、人狼ゲームに俺たちを招待したのはお前なのか」



「そうだよ」



「どうしてそんなことしたんだよ」



カケルがマイカに詰め寄る。



「私はね、ルナちゃんっていう大事な友達を失ったの。


でもね、もし私が死んだら、ルナちゃんの心はずっと私のものになるんじゃないかと思ったの。



だけどそれどころか、私が死んでも、ルナちゃんは何もなかったかのように、毎日楽しくしてた。




だからね、死んでからずっと、味あわせてあげようと思っていたの。



大切な友達を失うことの苦しみをね。




そう思っていたらね、万聖節の前日、私が死んでちょうど1年後、自分の体が学校に戻ってきたことに気づいたの。



それで、あの日と同じ、人狼ゲームを実現することで、ルナちゃんにも存分に苦しんでもらおうと思った」







「だからって皆のこと殺さなくてもいいだろ!」



「私が殺したわけじゃないよ」



「え?」



「だって人狼に食べられたタイトとサトミとチヅルは、ルナちゃんが殺したんだよ?


妖狐だってチヅルの占いで呪殺されたんだし、ショウは皆で処刑したんだし、ユヅキなんて自殺したんだよ?


私、誰のことも殺してなんか……」






「ふざけるなよ!」







「別に私、ちっとも後悔してなんかいないよ。


ルナちゃんから友達が1人、また1人消えていって、その度にルナちゃんが悲しむのを見ていて、なんだかすっきりしたよ。



あはははははははははは」









マイカはそう言うと、狂気的に笑った。




マイカのこんな顔は、初めて見た。



その笑顔は、言葉は、私の心を滅多刺しにした。






今思えば、マイカをないがしろにしたことも、マイカを忘れようとしたことも、悪かったかもしれない。


マイカには、本当に寂しい思いをさせていたのだろう。



「マイカ!たしかに私はね、マイカのことを忘れようとしたよ。自分が辛くなることから逃げるために。それは本当に悪かったと思うよ。でも……でも!」



でも……










「私の知ってるマイカは、こんなことしない!」










「え……?」










「私ね、マイカとのこと、結局忘れることなんてできなかったんだよ!ここ最近、ずっとマイカが夢に出てくるの。そこで小さい頃のマイカは、優しい笑顔をみせてくれてたの。それなのに、どうして……」







涙が出てきた。










「ごめん……ルナちゃんのことが好きだから、だからこそ、自分一人が忘れられちゃうことが辛くて……





でも私、忘れられてなんかいなかったんだね」







「うん……」










「でもね、きっと私を見つけたっていうことは、このゲームも終わりだよ」









「え、本当か?もう誰も殺されずに済むのか?」



「うん。そうしたら私、またこの世界からいなくなっちゃうの」



「え……」




「最後にルナちゃんに会えて嬉しかったよ」






マイカが、幼い頃のような、優しい笑顔を見せてくれた。













「じゃあゲームを、終わりにしよう」











それを聞いたのが最後だった。


職員室に満月の光が差し込んだ。



まだ0時までは時間があるはずだ。しかし強烈な痛みを身体中が貫いて、また私は意識を失った。






今夜のターゲットはまだ決めていないはずなのに。



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