人狼裁判⑵
「死んだ奴にゲームマスターなんてできないだろ」
カケルが呆れたように言った。
「そ、そうだよな、そんなことあり得ないよな」
レオもなんとなく怖がっているようだ。
「でもさ、私たち何度も10月31日に戻ってるんだよ。あり得ないことも、十分に起こり得るんだよ!」
キョウカが反論する。私も不思議とマイカが関わっていると感じていた。
「繰り返される万聖節前夜。ここではきっと何が起きてもおかしくない。マイカがゲームマスターをやっていても、きっとおかしくない」
「……たしかに」
レオは簡単に納得した。
「でも、どのみち次はどうせルナが処刑されて、村人が勝つんだよ」
そうだ。もう妖狐も確実にいなくなった今、人狼の私が処刑される他はない。
だけど、私はこのゲームの真相に辿り着かなくてはならない。
「カケル、村人が勝ったらどうなると思う?」
レオが聞く。
「キョウカとレオと俺で生き残って、きっと元の日常が戻ってくるだろ」
「俺にはどうしてもそれでいいと思えないんだ」
「なんでだ?」
「このまま村人が勝ったらさ、結局この人狼ゲームの真相がわからないままじゃん。それに3人しかいないS組なんて寂しいし」
____時間切レ。参加者ハスグニ処刑投票ヲ行ウコト____
突然、放送が流れた。人狼裁判の時間はいつの間にか終わっていた。
「……投票だ」
「待て、カケル。このゲームの真相を知らずに終わらせるなんて嫌だよ」
「じゃあどうしろって言うんだよ」
「……探そう。マイカを」
「そうだよカケル。マイカを探して、このゲームの真相を確かめようよ」
「……わかったよ。俺は狩人だ。自室に武器があるから、それを携行しよう」
「さすがカケル!」
「私には時間がない。午前0時になると、きっと狼になって皆を襲うことになる」
「ルナ、それは本当か?」
「うん」
私が繰り返される10月31日の最後に、いつも痛みを感じて意識を失うのは、狼になっていたせいだ。”昨晩”そのことを確信した。
「わかった。万が一午前0時になってルナが人狼になったら、銃殺するからな」
「え⁉︎そんな……」
「その前にマイカを見つければいいだろ」
そう言うカケルは、滅多に見せない笑顔を私に向けた。
いつも冷徹な印象だが、端正な顔立ちをしたカケルは、笑うと俳優にも負けない程格好よかった。そして心強く見えた。
「とりあえず武器を取りに俺の部屋に向かう」
「ねえカケル、ついていってもいい?」
「俺も」
「いや、一人で行くよ」
「でもなんとなく不安だから」
「……じゃあ、全員ついてきて」
こうして私たちは、カケルの部屋、体育館棟4階、弓道場に向かった。




