2日目
朝が来た。私が目覚めたのは、自分の家のベッドだった。
昨日の人狼ゲームはいったい何だったんだろう。変な夢でもみたのだろうか。
「ルナ、朝ごはんよー」
「はーい、今行くー」
いつも通りの朝だ。母がリビングから呼びかける。
「今日も健康的な一汁三菜、和風焼き魚定食よー!」
そう言って母は嬉しそうに焼き魚を出してきた。
ん?待てよ、これ、昨日も食べたぞ?
そう思ったが、スルーした。日本の典型的な朝食だ。毎日出てきてもおかしくはない。
「あら、ハロウィンじゃなーい」
テレビニュースを観ていた母が言う。昨日はハロウィンだったから、渋谷あたりの仮装集団でも映っているのだろう。結局私たちのハロウィンパーティーは無くなったけれど。
「今日は待ちに待ったハロウィン♪ということで、今日はハロウィンのスイーツ特集!」
最近テレビによく出ている女優が、ハロウィン特集をやっていた。
ん?今日はハロウィン?
「お母さん、今日何日?」
「日付くらい自分で確認しなさいよー、10月31日、ハロウィンよ!」
え?ハロウィン?それ昨日じゃなくて?
「あ、ごめんごめん、ボーッとしてて」
「まったくもう、ルナったらいつもそうなんだから」
いや、もしかしたら私が昨日1日の夢を見たのかもしれない。きっとそうだ。人狼ゲームなんて、現実の学校でやるわけがない。
そう思いながら学校に向かった。
教室に入ると、黒板には10月31日と書いてあった。なんだ、やっぱり夢を見たんだ。
「おはよー」
「おはよー」
「お、今日も遅かったね」
「ま、遅刻したことはないからいいでしょー」
始業ギリギリに、ユヅキとキョウカが入ってきた。何もなかったかのように。
「そういえば、今日ミユは?」
「まだ来てない。休みなんじゃない?」
いつも私と同じくらいに来るはずのミユが、まだ来ていない。風邪でも引いたのだろうか。
「おはよー、ホームルーム始めるぞー」
担任が入ってきた。よかった、先生も普通にいる。
「出席を確認する……めずらしいな、タイトとミユがいない」
「え、先生、欠席連絡も入っていないんですか?」
「いや、入ってない」
タイトもミユもいない。S組の生徒の無断欠席などありえないのに。
「まあ、今日ハロウィンパーティーでもやるんだろ?皆楽しみにしていたんだから、あいつらもそのうち来るだろ」
担任は特に気にも留めていない様子だ。
ホームルームが終わってから、真っ先に女子達で集まった。
「なんでミユいないの?」
「もしかして、昨日の人狼のせい?」
え、昨日の人狼は、夢じゃなかったのか。
「ねえ、日にち見てよ。昨日のままだよ」
勇気を振り絞って日にちについて言ってみた。
「それ、うちも思った。今日起きたら、昨日と全く同じニュースがやっててびっくりした」
サトミもどうやら、私と同じような体験をしたようだ。
「日付けが……戻ってる」
チヅルの言葉で、疑問は確信に変わる。
私たちは、2回目の10月31日を迎えたのだ。
「え、なにそれ怖い」
「どうして?」
ユヅキとキョウカも驚いている。
「ということは俺たちは今日も”昨日”と授業を受けるの?」
いつの間にかやってきたレオが言った。
いつもならケイスケが「そこじゃないだろ」とツッこむか、タイトが「マジかよー」とキレ気味に言うところなのに、「そっか……」と落胆の声が漏れるだけだった。
”昨日”は、ハロウィンパーティーが楽しみで授業に集中できなかったが、今はなんだか不気味な気分だった。
しかしそんな私たちの気持ちとは何の関係もなく、授業は進んでいった。
昼休み。今日はクラス全員で昼食をとった。
「そういえばさ、人狼裁判っていつやるの?」
「それは疑問だった」
「俺も」
カケルがそんな疑問を投げかけた。
そうだ。人狼裁判で誰かが処刑されなければ、このゲームは進まない。
「でもまだ、ミユとタイトが犠牲者だったとも限らないし」
「今は指示がないと動けないよね」
「昨日配られたタブレットはどこいった?」
「起きたら無くなってた!」
そういえば、タブレットも無くなっていた。
「5限はまた化学の実験だよね」
「そのあとにまたロッカーを見よう。”昨日”と同じようになにか入ってるかもな」
「そうだね」
重苦しい雰囲気のまま、昼休みは終わった。
5限も、”昨日”と全く同じ実験だった。あまりにも皆がスラスラとこなすので、先生は驚いていた。
そして5限が終わって、私たちは少し早足で教室のロッカーに向かった。
「やっぱり……!」
昨日と同じように、白い封筒が入っていた。そこには、信じられないものが入っていた。
____【1日目結果】ミユ、タイトガ死体デ発見。人狼裁判本日最終下校時刻ヨリ開始。ゲームマスター____
やはり見覚えのある筆跡で書かれたメモと、2枚の写真が入っていた。
「嘘でしょ……」
「そんなはずがない」
もう訳がわからない。
そこに写っていたのは、紛れも無い、ミユとタイトが血だらけで倒れている姿だった。
「昨日まで一緒に笑ってたのに……どうして……」
私は泣き崩れた。どうしてミユがこんなことになったのだろう。やりきれない気持ちでいっぱいになった。
「この人狼ゲームの犠牲者って……」
「本当に死んじゃうのかな」
ショウとユヅキが揃ってそう言った。
「ミユとタイトは本当に死んじゃったのかな?」
キョウカが不安げな顔をして言う。
「このゲームを終わらせることはできないのか?」
カケルはこんな時も冷静だ。でも、
「きっと無理だよ。誰かが勝つしかないんだ」
私は言った。皆なんとなくわかっていた。このゲームは私たちの力では終わらせられないということを。
私たちは、絶望しつつ最終下校時刻を待った。




