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ワンダー7 センシティブ  作者: 二月三月
子供の時代
18/51

スライドショー


「えーっと、これが第一光子体(ピスリーニア)


 壁スクリーンの真ん中に、青い短髪の壮年男性が大写しになる。そのにこやかな表情に、ダーの眉根がぴくりと上がった。


「あ、違う。もう光子体(リーニア)じゃないから、第一光子体(ピスリーニア)はおかしいな」


「おかしいのは名前だけじゃないぞ」


 ユズルヒノがコンソールを操作するジュニアにむかって言った。


うち(丶丶)の父ちゃんが手こずるくらいだからな。ミウラヒノ、ってまるでうち(丶丶)の親戚みたいなこと言ってるのが、いちばんイラつく、って父ちゃんが言ってたな」


「すべての元凶と言っても良いくらいの人ですからねえ」


 カオルヒノも容赦ない。


「悪気がないのがかえって始末に悪いのです」


「いまのところ行方不明だから、たいして影響はないけどな。その分、出てきたときの迷惑さははかりしれんが…。ま、いまはリーボゥディルが追ってるから、当面、俺たちには関係ない」


「どうしてリーボゥディルが?」


この男(丶丶丶)の遺伝情報の99.99278%をリーボゥディルが引き継いでいるから…」


 アンヌワンジルの問いには、ジュニアの代わりにダーが答えた。


「…ほんとうに、アグリアータも馬鹿なことをしたと思うけど。この男(丶丶丶)がいなくなると、この男(丶丶丶)の信者たちがリーボゥディルを担ぎ出そうとするの。リーボゥディルにしたって、とばっちりは御免でしょうから、見つけ出してそいつら(丶丶丶丶)に差し出そうとしている」


「リーボゥディルだって、馬鹿じゃないからなあ」


 ジュニアは笑った。


「見つけたら、見つけたで、騒ぎが大きくなるだけだから、探すふりして自分が身を隠してる、ってのが真相に近いな」


「迷惑な人なんだね」


 アンヌワンジルが、あまりに素直に本質をつくので、皆、思わず吹き出しそうになったのだが、コレ(丶丶)については笑い飛ばす気にもなかなかなれなくて、ちょっとした静寂がミーティングルームに降りた。


「で、次はこちら」


 ジュニアが壁スクリーンに映し出したのは、腰までの銀髪をゆらす細面の男、着こんでいるタキシードが、何故だか(丶丶丶丶)不思議なほど似合っていた。


「デルボラ、元宇宙皇帝(丶丶丶丶)。自称だったって話しもあるから、なかなか喰えないおっさん(丶丶丶丶)だ。こっちも行方不明だが、場合によっては、俺たちで探さなけりゃならないかもしれない」


「何で探すんだ? そっとしといてやれば?」


 ぶっきらぼうに言うユズルヒノに、ジュニアが笑いかけた。


「何せ、胞障壁(セルレス)の専門家だからなあ。これ以上を頼るとなると、お前(ユズルヒノ)父さん(タケルヒノ)母さん(ボゥシュー)しかいない」


「それは、ヤだなあ」


「探しましょうよ」


 カオルヒノが、うっとりと壁スクリーンを見つめながら言った。


「この人、とてもかっこいいです」


 必要になったらな、そう言ってジュニアはスクリーンを切り替えた。


 こんどスクリーンに投影されたのは2人、ユズルヒノとカオルヒノの両親だった。


「もう、2人とも地球は出たんだろ?」


「たぶんな」


「でしょうね」


 同時に肯定した双子は、顔を見合わせ、あとはユズルヒノが引き継いだ。


「地球の祖母(ばあ)ちゃんと祖父(じい)ちゃんは従兄弟の家に行ったから。アタシらもいないし、父ちゃん母ちゃんは地球にいる理由がない」


こっち(丶丶丶)も同じだ」


 再び切り替わった壁スクリーンに、ジムドナルドシニア(丶丶丶)とラーブドナルドが並んだ。


「俺がいないんじゃ、この2人も地球にいなきゃならない理由はまったくない。それでなくても父さんはあちこちほっつき歩いてたんだし、母さんは俺さえいなきゃ喜んでついてくだろう」


 次に映ったのは4枚のパネルだった。


 右からビルワンジル、イリナイワノフ、ジルフーコ、そしてサイカーラクラ。


「この4人は、一緒でいいんだよな?」


 問われたアンヌワンジルは、たぶん、と答えた。


「あたしがゾンダードを出る前に、サイカーラクラ叔母さんとジルフーコ叔父さんはそろそろ宇宙に出るようなことを話してた。ママはサイカーラクラ叔母さんのことをとても心配してたから、一緒に行ったと思う。ママが出かけたら、当然、パパもついていくから」


 じゃあ、これでよし、ジュニアが言って、船内(ダー)のメンバーが一瞬だけ表示され、ぱたぱたと宇宙船(ダー)映像(モチーフ)にたたみこまれた。


「ここも含めて、6拠点、同時に相手するにはむこう(丶丶丶)も骨が折れるだろう」


「って、言うか、他はおっかなすぎて手が出せないから、ちょっかい出すんなら普通にここだろ?」


「さあ? それはどうでしょうね」


 ユズルヒノにむかって、エイオークニは、にこにこしながら反論した。


ここ(丶丶)がもし危なくなったら、他の5つが全部ここ(丶丶)に来ますよ。そんなことになったら…、私はその5つ(丶丶丶丶)以外の宇宙(ベル)全てを敵に回したほうが、よほど楽だと思いますけどね」


「デルボラも来ると思います?」


「え? ええ、まあ…」


 突然のカオルヒノの質問に、エイオークニは苦笑しながら答えた。


「そうですか…、そうなると、いいですねえ」


 うっとりと、夢見がちに言うカオルヒノに、やっぱりコイツ、宇宙に出てからオカシイな、とユズルヒノは思うのだった。




「ほほォ、そんな話ししてたカ」


 ゴーガイヤが投げてよこしたトマトを右手で受け止めたジュニアは、そのまま口にあててかぶりついた。じゅっ、と甘酸っぱい汁が口の中に流れ込む。


「そう言えバ、レウインデがこないナ。こんなことになったラ、飛んでくるんじゃないかと思ってタ」


「もう来てる」


「なニ?」


 トマトの半分を呑み込んだジュニアは、来てるんだよ、と繰り返した。


この船(ダー)宇宙船(ボード)とまったく同じに造ってある。光子体(リーニア)で入れるのは、リーボゥディルとラクトゥーナル、アグリアータ、それにあんた(ゴーガイヤ)だけだ。レウインデは時々来てるんだが、あんた(ゴーガイヤ)の真似がうまくできたときだけ入れるようになってるから、うまくいかなくて、外殻のプラズマシールドのあたりをぐるぐる回ってるよ」


 ゴーガイヤの割れんばかりの哄笑が農場(ファームゾーン)に響いた。


「ああ、そうだっタ。オマエの親父とその仲間たちは、とんでもないやつらだっタ。デルボラはオレたちに、絶対にオマエの親父たちと喧嘩するな、って口を酸っぱくして言ってたんダ」


「へえ、そりゃ、初耳だな」


「そうダ。デルボラの言うことを聞いてたのは、四天王の中ではレウインデだけだっタ。オレも最初は喧嘩しタ。はじめて負けテ、次も負けテ、負けテ、負けテ。勝てないことがわかったから、オレ、戦うのやめタ」


「四天王、てのも初めて聞いたぞ」


「レウインデとタルトレーフェンとルミザウとオレで四天王ダ。タルトレーフェンとルミザウはもういない。レウインデは賢かったから残っタ。オレは、運が良かっタ」


「どのへんが運が良かった?」


「戦ったのが、オマエの親父と、アンヌワンジルの両親だっタ。だから、とても運が良かっタ。タケルヒノと戦っていたら、オレも消えていタ」


「デルボラとも戦わなかったろ?」


「オレ、臆病だからナ」


「それは、臆病じゃない、慎重、って言うんだ」


 ジュニアは、食べ終わったトマトのヘタを、ぽいと地面に投げ捨てた。


「もともと臆病も慎重も同じものなんだ。生き残ったやつが慎重で、死んだやつは臆病者だ。結果しか違いはないんだよ。あんたは生き残った。だから慎重で間違いない」




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