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 また同じ夢を見る。

 少女がこちらに話しかけているけど、何も聞こえなくて、

 そして目が覚める。




「それじゃあ、ちょっと行ってくるよん。村長。ヒアラもカナタを借りてっちゃうね」

 カムサが荷物を背負い挨拶。

「別に私の所有物ではない。勝手にしろ。気を付けて行って来い」

 ヒアラが返す。

「カムサよ。なぜそいつを手伝いに選んだかは知らんが、置き去りにしてきてもいいぞ。この村のためだ」

 村長は物騒な送り出しの言葉を。

「あははっ。それはないね。こんな面白そうなのを」


 カムサがこの村を出て買い物に行くそうだが、その手伝いに指名された。それをまあ承諾。今に至る。




 歩きながらとりとめのない話。

「うちの村は旅商人ってのが結構な頻度で来るんだけど、今回は旅商人の人じゃあ取引しないようなものを買いにいくんだぁ。もしかしたらいくつか村や町を回ることになるかもしれないから覚悟しといてね」

「買うって、あの透明の玉とかか? つーかあれって何なんだ?」

「あの透明の玉は多分買えないかな。つーかあれって何なんだろうね」

「え、何で知らない?」

「いやー、僕もあの森で落ちてるのを見つけて拾っただけだから」

「……」

「君の言いたいことはわかるよ。そんな謎の物体で記憶のやつやるなってことでしょう? でも僕的にすごくラッキー。被験者を引き受けてくれそうな人なんてそうそういないからね。ちょっとダマしたっぽくなっちゃったけど」

「……はあ、まあいいや」

「そうそう。前に話した上位思考種が君の記憶を消した可能性、またその理由を考えたんだけど、まるで分らなかった。君が未来からにしろ他の別のどっかからにしろ、連れて来られたってことなら記憶を消す意味が分からない。じゃあ何のために連れて来られたんだよって。記憶を消す必要がないかな。

じゃあ君自身が自らとんできた、あるいはあの森のとは別の上位思考種が君をあそこにとばしたって考えるとして、それでも記憶を消す必要性はあんまりないんじゃないかな。森に入って出てこなかった人たちのようにとばしたりすればいい。

同じ理由で君が自らあの森に入ったとしても記憶を消して生かしておく理由はないね。

だから今のところ一番あり得るのは、すでに記憶を消された君があそこにとばされてきたってことになるんだけど。そうすれば森のお方は元から一貫して不干渉ってことになる」

「不干渉はあり得るのか?」

「あり得るかな。全然あり得るね。ただね、森のお方は好き嫌いがはっきりしててね。嫌いなやつはとことん嫌ってちょっと非道なこともできちゃうようなちょっと子供っぽいお方で、嫌いなやつは森から出てこなかったりするんだけど、どこからともなく来た君を気に入って放っておくのはあまりにも珍しすぎるね。過去に類をみないかも」

「結局どれもしっくりと来ないわけか」

「そゆこと。ますます君の存在が異質になってきたね」

「そういえば、なんのために儀式をしてるんだ?」

「へっ? なんで儀式のこと知ってるの?」

「前にヒアラが口を滑らせていた」

「あのドジっ子め~。でも別に君ならいいか。すごく簡単に言うと気に入られるためかな。さっきも言った通り嫌われた奴がどうなっちゃうか分かんないから、ご機嫌取りしてるわけ。八日に一回くらいのペースで献上する品を持って森の一番奥に」

「一番奥にはなんか変なものでもあるのか?」

「……どうしてそんなことを聞くのかな?」

「前にリーが何かあるんじゃないかって……図星か。言えないなら言わなくていいぞ」

「……これは村長と僕とヒアラしか知らないことだけど、まあいいか。君なら多分。世にも珍しい泉があるんだよ。その泉はなんとね……温かいのだっ!」

「……温泉……」

「? おんせん? なになに、これについてもなんか知ってるの? もしかしてそんなに珍しいものでもなーい?」

「詳しくは知らないけど山の近くの地下によくあるとかないとか。多分」

「驚愕! 驚愕だよ! よくあるのかよ! うちの村は山のふもとにあるからか。じゃあ特に隠しておく必要もないのか。いやー、どうにも知識の差があるね。実に君の記憶は欲しい」

「あー。一部の記憶の共有ってそういうことか」

「そそ。知識を伝播させることができれば、言葉では伝わりにくい部分を簡単に伝えることができるし、時間を他のことに費やすこともできる。そうすれば今の倍以上に色んなことが発展していく」

「へー」

「うわー、興味なさそう」

「どうしてその三人しか知らないんだ?」

「それはね、一番奥に進むことができるのが僕とヒアラしかいないからで、そして村の長だからだよ」

「なんとなくわかった」

「あ、もうそろそろ街に着きそうだね」

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