表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

12

 別れた後、20分くらい探してカムサを見つけた。


「やあやあ、探したよ。一人で寂しくはなかったかい? 買い物はおおよそ終わってしまったよ。帰るときは荷物を半分持っちゃってくれちゃったりよろしくね」

「金をくれ」

「あは? どうしちゃったの? 欲しいものがあるなら値段次第で買ってあげるよ」

「よくわからないが、金が必要になりそうなんだ。くれ」

「お金をせびるには説明不足が甚だしいね。確かに僕は人並み以上にお金を持ってるけど、だからと言って無駄遣いできる余裕はないよ。使途不明金とか困っちゃうな」

「……あれだ。記憶のやつの実験体になったろ。そのモニター料をくれればいい」

「なるほど。そうきたか。でもあれは君が記憶がないって来たからだよ。医者的にみればお金をもらってもいいんじゃないかな」

「あんな成功か失敗かわからない結果じゃなけりゃな」

「あ、ひどいぞ」

「それに、

僕的にすごくラッキー。被験者を引き受けてくれる人はそうそういない。

つってたってことはあの実験ほぼ初めてだろ」

「ずばりその通りだね。まったくもって初めてだった」

「だったら新薬の治験とか臨床実験とかと同じだろ。よくしらないけど。初めての実験で失敗の危険と失敗したらどんなことになるかとか、リスクを大いに孕んだモニターをやったんだ。記憶は脳だ。脳死なんていう生死にかかわることにもなりえたはずだ。それの対価が無料とか割に合わんだろ。

だから金くれ」

「言われてみれば確かにその通りだね。いいだろう。お金を上げよう。とりあえず今はこんだけね。戻ったら追加でもう少し上げるよ」


 お金入手。


「ありがとな」

「ここで感謝とは。君はなかなかだね」

「ちなみにこの金で水筒は買えるか?」

「水筒? そこらの安物なら20個は買えるんでない? 水筒買うのかい?」

「多分買わない。それじゃ、またあとで」

「あ、ちょっと、町の出口あたりにいるからね」

「了解」




 なんとなく歩く。ロームが俺を見つけるまで。探しているかはわからないが。いづれはみつけるだろう。あいつの話が本当であいつが助かりたいなら。


 しばらく歩くと人集りが。

 そこらの人に尋ねる。


「ん? あぁ。俺もよくは知らねーが事故があったんだとよ。店のおっさんも店も潰れちまったとか」


 ……もしかして……。

 辺りを見回す。そしてやっぱりいた。


「ここで働いてたのか?」

「……うん……」

「おっさんも死んじまったようだけど……」

「……うん……」

「悲しい……よな……?」

「……別、に……」

「ひどい奴だったのか?」

「仕事、する、見合った、お金、くれる、増し」

「そっか。これからどうすんだ?」

「仕事、探す、なきゃ」

「大丈夫か? 当てがあったりするか?」

「全、く」


 だめだ……腹立たしい……。


「蓄えはあるのか?」

「あ、まり」

「じゃあ早く見つけなきゃいけないな」

「うん、でも、ロォム、こんな、だから、みんな、雇う、くれない」


 憤りを覚えている。およそ何をするべきかがもう、自分の中にあるから。


「それは大変そうだな」

「……あ、う、が、頑張、るよ……」


 もっと劇的なものになると思っていたのかもしれない。そのちょっとしたがっかり感もこの怒りに含まれているのかも。


「ロームは家族とか家族っぽいのとかいるのか?」

「……いない……ロォム、独り……」


 誰かにそうしろと言われたようなそんな感覚が、それがすごく……嫌だ。


「じゃあこの金でお前を買うよ」

「……う?」

「最初の仕事は荷物持ちなんだけど、どうかな? 引き受けてもらえないだろうか?」

「う、う! うん!」


 何も劇的なことなど起こってはいないのにそれでも、とりあえず一人の人生がかなり……いや、少し変わった。




「うぅ、知らない、名前」

「名前? ……ああ、そういえば。……そういえば、俺もロームの顔見たことないな」

「え? う、あ……」

「かなた」

「カナタ、名前?」

「そ」

「カナタ」

「うん」

「見ても、いいよ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ