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俺、異世界で自作ダンジョン目指します!  作者: ITSUKI
あっちでもこっちでも事件
55/67

第55話:旅立ちの準備

「全員乗ると定員オーバーだから、ナナミとクレアはこっちに残って、

 大人たちが町の仕事を手伝っている間、屋敷にいる子供たちの相手をしてね」


 長老三人を竜に乗せる話。


 無理をすれば全員乗れないことはないみたいだけど、

 ナナミは残してあげたいし、

 クレアもたまには同じ年頃の子供と遊ぶのもいいかと思ったので、これで。


 眠い目をこするナナミの「はいデス」という返事と一緒に、

 やはり眠そうな目をしているクレアがこくんと首を縦に振る。


「決まったら腕輪で報せるから」


 ということで、翌朝、早めに身支度と朝食を済ませ、

 ハヤトの竜イブキに長老三人、

 アンヌさんの竜ホムラに俺とリリスが乗って、さっそく出発。


 ちなみにホムラに乗る時、前に座るアンヌさんから、

 オヤジみたいな笑い方でセクハラ発言をされたのだけど、サクッと無視をした。



 ◇ ◆ ◇



 目的地に到着したのはお昼前。


 ソニアさんの提案通り――

 新「猫人族の村」候補地として俺のダンジョン前に降り立った。


 ちょっと恥ずかしかったけど、正直にダンジョンを試作していると説明する。

 とはいっても、子供の遊び場のようなものを作っている程度に思われたようだ。


 今はまだ、それでいい。


 この先どうなるか自分でも想像出来ないし、

 長老たちが判断するのに、少なくとも負の要因にはならなかったから。


 ダンジョン前、全員で森の中をひと通り歩き回ったあとは、

 もう一度、長老たちがイブキに乗って、上空から周辺の様子を確認。


 彼らが見ている光景は――

 東に川が流れ、その先に俺たちの拠点建設現場、その北東の山の中には洞窟村。

 一方、南西に街道があり、道に沿って南東に行くとミバクの町。

 北側の山の向こう、ソニアさんの館のある窪地は結界で隠されているはず。


「人間の町から近からず遠からず、良い場所じゃのう」これは白髪のニモタさん。

「ソニア様という魔族の支配地の割には、魔物の気配は少ないな」とカラタさん。

「あっちより暖かいっちゅうのもワシらにはええと思うがの」笑顔のヤシタさん。


 再び地上に降りてきて、三人の長老たちの意見は一致した。

 代表してニモタさんがハヤトに告げる。


「ありがたく、この地に住まわせてもらおう」


 この時をもって、ここは『猫人族の村』予定地になった。

 ならば、さっそくソニアさんに挨拶に行こう――と、森の中を全員で歩き出す。

 魔族に会いに行くということで、三人の長老は少し緊張気味のようだ。


 ――まぁ、それも当然か。


 ニモタさんの昔話に出て来た信じられる魔族というのが、

 この土地の支配者であるあのソニアさんならいいけれど、

 そうでないなら――という考えは、長老三人の頭の中にあるだろうから。


 とはいっても、あのソニアさんがこの人たちを騙すとかは有り得ない。

 そんな回りくどいことをしなくても、力でどうとでもできる人だし。

 会えばわかるだろうから、あえて言葉にしないけど。



 ◇ ◆ ◇



 途中にある俺たちの拠点建設現場を紹介ついでに立ち寄る。

 そこには、洞窟村の役員のひとりでもあるグレッチさんがいた。


 今後のことを考えて、事情を説明して猫人族の長老三人を紹介すると、

 笑顔で「ソニア様の許しがあるのなら問題はねえ」と握手を交わす。


 それが終わると、グレッチさんはこっちを向いて俺に話しかけてきた。


「昨日、ギリアムが村に顔を出してな。ユウキに会いたがっていたぞ。

 今日も来るから、ユウキに時間があれば会ってほしいって言ってたぜ」


 ギリアムさん――

 先日の事件で、盗賊たちに捕まっていたところを俺が助け出した人。

 グレッチさんが三人の長老を視線で示して話を続ける。


「ナナミちゃんの仲間がここに住んで、それにユウキが手を貸すってんなら、

 あのギリアムに話をしておくと、いろいろ融通を利かせてもらえんじゃねえか」


 この話を横で聞いていたハヤトが俺に訊いてくる。


「ユウキの話に出てきた商人か」

「そう、ミバクの町一番の商人なんだって」


「とすると、グレッチの言う通り、その商人にも会っておいた方がよさそうだ。

 食料とか必要な物資を手配するのに協力してもらえればありがたい」


「そうしようか」


 昨日の夜、すでにハヤトにはダンジョン盗賊襲来事件の経緯は伝えてある。

 主にアンヌさんが話したのだけど、ハヤトは終始「ぐぬぬ」という顔だった。

 何故その話を聞かされて、そんなに悔しいのか俺には理解できない。

 アンヌさんは「ふへへ」と楽しそうだったし。


「そうかよ……なら、ギリアムを見かけたら、

 ユウキが帰ってきていると伝えておこうか?」


「ソニアさんとの話が終わったら、洞窟村にも行ってみますよ」


「じゃあ、村にあるギリアムの店に行ってみろ。

 中央通りをはさんで、トネルドの店のちょうど反対側にある雑貨屋だ。

 仮にそこにいなくても、店のモンに話せば連絡をつけてもらえるはずだぜ」


「ありがとうございます。グレッチさん」



 ◇ ◆ ◇



 裏山のトンネル(俺の手掘り)を通ってソニアさんの館に到着。

 今日の訪問は昨晩のうちにクレア経由で連絡済みだったので、

 ミリアさんが出迎えてくれた。


 通された場所は玄関の右、この館には何日も泊まったけど初めて中を見る部屋。

 そこは豪華な会議室と言うか、こじんまりとした謁見の間というか。

 やはりこういう部屋もあったのだ。


 中央に二十人くらい座れる大きなテーブル、正面にデーンと豪華な椅子。

 輝く黒のドレスに身を包んで、そこに座っていたのは、

 ひじ掛けに肘をついて、あごを拳で支え、足を組んで座るソニアさん。

 いつもの力強い笑顔を浮かべている。


 なんだかとってもソニアさんらしい。


 そこに猫人族の長老三人が姿勢を正し、うやうやしくお辞儀をする。

 中央のニモタさんが頭を下げたまま丁寧な挨拶をする。


「本日は拝謁を賜り感謝申し上げます」

「うむ、わかった。頭を上げて席に座れ。堅苦しいのはこれで終わりじゃ」


 片手を振って「ほれほれ」と仕草をするので素直に従う。

 リリスが「ソニア様はこういう方なので」と長老たちに手を差し伸べている。

 言うまでもなく、ハヤトは部屋に入って真っ先に席に座っていた。


 ソニアさんの飾らない態度に、長老たちの緊張も和らいでいるようだった。

 歓談のように、この地のことや猫人族の状況なんかを話し合う。


 そのまま和やかな時間が過ぎ、ふと改まった表情で頷きあう長老たち。

 椅子から立ち上がり、三人並んで姿勢を正して頭を下げ、

 あの土地に住まわせてほしいと、管理者に対して正式に願い出たのだった。


 もちろん事前の了承をソニアさんが覆すはずもなく、

 猫人族たちの願いを聞き入れる形で『猫人族の村』の開発が決定した。


「話は決まったな。すぐに準備に取り掛かろう」


 ハヤトが会話を打ち切るように言って、全員を促す。

 ソニアさんにも強い態度をとれるハヤトだからこその言葉だ。

 とはいっても、この態度はソニアさんにとっても心地よいのだろう。

 笑顔で「おう、そうじゃな」と応えて、その場がお開きになる。


 三人の長老が立ち上がり、礼を尽くした別れの挨拶を告げる。

 そして俺たちはソニアさんの館を後にした。


 なお、長老のひとりニモタさんが言っていた――

 ひいおじいさんに聞いたというソニアさんについての話。

 本人に訊いてみても「さあ?」という返事だった。


「だが、その時代……わらわ以外に、

 人間や猫人に敵愾心を持たぬ魔族はいなかったのも事実じゃ」


 ということらしいので、ニモタさんのひいおじいさんの話は、

 やはりソニアさんのことなんだろうという結論になった。



 ◇ ◆ ◇



 ここは洞窟村にある雑貨屋。

 ミバクの商人、ギリアムさんの直営店だそうだ。

 売り物は工具とか、鍋とか、武器とか、書籍とか、楽器とか……本当に雑貨屋。

 元の世界のコンビニよりちょっと大きめな店だった。

 店には今、十人くらいの客がいて、二人の店員が動き回って接客している。


 ただ、グレッチさんから聞いた話だと――

 ギリアムさんは、この店だけではなく他の店にも商品を卸したり、

 村の特産物を買い付けたりして、大きな商いをしているらしい。


 グレッチさんを先頭に、俺とハヤトが中に入ると、

 店の奥にギリアムさんが座っていて、こちらの姿を見つけて声をかけてきた。


「おぉ、ユウキ君! 

 昨日、改めてお礼にと伺ったんだけど、出掛けていると聞いてね。

 今日も少ししたら宿屋に行ってみようと考えていたんだが、

 わざわざ会いに来てくれたのかい。ありがとう!」


 ギリアムさんが両手を大きく広げて出迎えてくれた。

 先日と比べて一段とテンションが高い。

 腕とか足にはまだ包帯を巻いているけれど、随分と元気になったようだ。


「おう、ギリアムさんよ。ユウキを連れて来たぜ」


 何故グレッチさんも一緒にいるかと言うと、ここに来る前……、

 魔法石加工職人のトネルドさんにも長老三人を紹介しようと訪ねたら、

 グレッチさんもいて「ギリアムに話をつないでやるよ」と言ってくれたからだ。


 いくらギリアムさんがこちらに恩を感じているとはいえ、

 親しいとは言えない人に、いきなり協力をお願いするのはちょっと気後れする。

 そこで、ギリアムさんとは古い知り合いであるグレッチさんからの言葉。

 渡りに船とばかりに、その提案に甘えさせてもらったのだ。


 そんな気配りの男グレッチさんのあとに続いて、

 俺もギリアムさんに軽く頭を下げて挨拶をする。


「こんにちは」


「こうして、来てくれたということは、

 お礼をするチャンスをくれるつもりなのかな。

 私にできることならば何でもするよ。そっちはお友達かい?

 ギリアム君も一緒なんて、どうしたんだい」


「すまねえな。ユウキはちょっと込み入った話をしたいらしいんだ。

 外にもまだリリスちゃんを含めて五人いる。

 出来たら全員が座れる場所で、ゆっくりと話をさせてもらえねえか」


 長老三人とリリスとアンヌさんには外で待ってもらっている。

 これだけテンションの高いギリアムさんを相手にして、

 そういった説明を俺だと上手く伝えられなかっただろう。


 初対面のハヤトにさせるのもなんだし。

 やはりグレッチさんに来てもらって正解だったと改めて思う。


「ふむ、そうかね……。

 それでは、こちらの部屋で、その込み入った話とやらを聞かせてもらおうか」


 ギリアムさんから店の奥にある扉に手招きされる。

 そうして促されて歩き出した時、途中の商品の棚であるモノが目に入る。


 ――藁人形……。


 大きなかごの中、数十体の藁人形が並んで売られていた。


 ――ここで……売っているのか。


 手前に値段が書いてある紙が貼ってある。

 この世界の数字はナナミに教えてもらって、もう読めるようになっている。

 食事一回分くらいの値段だ。どうなんだ……適正価格なのか?

 それに一種類でこんなにたくさん並んでいる商品は他にないんじゃないか。


 ――これって、やっぱり……売れ筋商品なのか?


 そんなことをジト目で考えている俺の視線に気付かないギリアムさん。


「では、こちらへどうぞ」


 通された場所は短い廊下の先にあった応接室。

 商談に使う部屋なのだろうか……表の雑貨屋よりもこっちがメインっぽい。

 あの店の奥にある部屋とは思えないほどの広さがあった。


 派手な装飾は無く、機能性重視という部屋だったけれど、

 勧められて座ったソファの心地よさは素人の俺でもわかった。

 玄人のソファ師がいるかどうかは知らないけれど。


 椅子を追加してもらい、全員でテーブルを囲む。

 とりあえず藁人形のことは頭から消す。

 最初に話を切り出したのはグレッチさん。


「ギリアムさんよ。

 大勢で押しかけてすまねえが、今日、ユウキは頼み事があってここに来ている。

 先日のことを恩に着せるつもりじゃあねえんだが……、

 ただ、ユウキはこう見えて、なかなかいろんなしがらみを持っていてな」


 事情がわかっているから、こんなにもうまく話を持っていってくれる。

 ありがたいことだ。


「今回もちょうど、ある集団の手助けをするってことになって、

 いろいろと入用になるらしい。で、ユウキがそれならばと……、

 先日知り合ったギリアムさんにお願いしようって話になったんだ。

 今日の話はお礼の話じゃねえ。商売の話になる。俺は、まぁその仲介だな」


 グレッチさんが確認のためにこっちを見たので、頷いて応える。

 そのやり取りを見ていたギリアムさんも、

 とりあえず今日の訪問の目的を理解してくれたようだ。


「……ふむ、それで私は何をすればいいんだね」


 すっと真剣な表情になった。これが本来の商売人の顔なのだろうか。

 前置きが終わって、いよいよ本題に入るので、

 その前に、面識のないハヤトと長老三人を紹介する。

 すると……。 


「ハヤト君か。……ん? ハヤト君というと、藁にん……ゲフン、ゲフン」


 ――いま、この人『藁人形』って言おうとした!


 ギリアムさんは使い道まで知ってて売っているようだ。

 もしかすると、ここ数日で販売数が増えているんじゃないか、俺の分で。


 ――それは嫌だ。


 チラッとハヤトの様子を窺うと全くの平静だった。

 本当にこの親友はこういうことに動じない。羨ましくなる。

 店に並んでいた藁人形だって見つけただろうに。


 とまあ、そんなことがありながらも、

 ハヤトの紹介が終われば、あとの交渉事は親友に丸投げだ。

 グレッチさんに長老三人、リリスもいるしアンヌさんもいる。

 これだけいれば、難しい話に俺の出る幕はない。


 こちらがやろうとしている事。ギリアムさんが出来る事。

 猫人族の村を作るにあたって必要なコト。

 とりあえず最初の打ち合わせとして十分な結果を得られた……と思う。

 


 ◇ ◆ ◇



 その日の用事が終わると、すでに夕方の時間になっていた。

 洞窟村を照らす疑似太陽も光量を落として、日暮れを演出している。

 今日はこの面子で、ここの宿屋に泊まることにした。


 連絡用腕輪でナナミとクレアに事の正否と明日帰ることを連絡。

 ナナミから了解の返事が返ってきた後も、

 連絡用魔法石が何度もピカピカと光ったのは、喜びの表れなのだろう。


「それで、これからの段取りなんだが……」


 ひとつの部屋に全員で集まり、最初に口火を切ったのはハヤト。

 それを遮ったのは長老のニモタさん。


「すまんが、先に言わせてくれんかの……」


 ハヤトがそれに応えて、視線で先を促す。

 するとニモタさんが「では……」と言って、長老三人が深々と頭を下げる。


「この度は、ワシらの暮らす場所を作るために、

 ここまでの御助力、本当に感謝いたしますじゃ」


 それを受けてハヤトはブスッとした顔になる。

 ハヤトにしてみれば、全てナナミのためにやっていることで、

 親友の中では、それだけで自己完結している。

 それを誰かに感謝されるつもりはない――と、そんな感じ。


 リリスも何となく雰囲気を察したのか「どうしましょう」と言う顔をしている。

 アンヌさんはいたずらっ子のような目をして成り行きを見ている。


 ――仕方がないか……。


「頭を上げてください」


 まずはそう言って長老たちに顔を上げてもらう。


「ナナミは俺たちの仲間なんです。ナナミも言っていました――

 昨晩の泊まる場所のことで、そちらと一緒に寝ないでいいのかって訊いたら、

 自分はこのパーティの仲間だから良いんだと。

 だからナナミが――仲間が望むことは、俺たちパーティが望むことなんです。

 極端にいえば、皆さんに嫌だとか必要ないとか言われても、

 何かの理由をつけてでも、それこそ押し付けてでも、するつもりなんですから」


 長老たちは黙って俺の話を聞いてくれた。


「それに、まだまだこれで終わりじゃないんです。

 この場所にみんなに来てもらって生活を始めてもらう。

 全てが落ち着くまで、できる限りの手を貸すつもりです。

 そのあとは、お互いに助け合う関係になるはずです。

 俺たちの拠点は近くにあるし、目の前には俺のダンジョンもあるんだし。

 そうなった時に、一方的に感謝されるような関係は望みません」


 上手く話せたかどうかは分からないけど、気持ちはわかってもらえたと思う。

 ニモタさんは「うむ」と、カラタさんは「了解した」と、

 そしてヤシタさんは優しい笑みを浮かべていた。


 ちょっときれいごとを言って恥ずかしくなったので、あとはハヤトに任せよう。

 視線でそれを伝えるため親友を見ると、

 さっきのブスッとした顔がかすかな笑みに変わっていた。

 リリスも笑っているし、アンヌさんはオヤジ笑いだった。

 仲間の笑顔に「ぐぬぬ」と感じるのは何故だろう。


 まぁ、それも小さなこと。

 その後はこれから始まる移住についての打ち合わせが始まった。


「十日前後の旅になるのじゃな。であれば全て野宿で良いじゃろ。

 ワシら全員が人間の町で宿をとると、それだけで騒ぎになりかねんからの」


「そうだな。今使わせてもらっているテントを買い取って、

 旅の間、体調の悪いものだけに使わせれば、あとは夜空の下でも十分か」


「盗賊や、街道に現れる魔物じゃあ、ワシらがおそれることもないしのお。

 だけどよぉ、そちらの方々はどうするんじゃい」


「リリス様だって野宿は大丈夫だよね」

「えぇ、もうすっかり慣れましたわ。心配なのはユウキ様くらいでしょう」

「俺も多分大丈夫だけど……ハヤト、どう思う?」


「ユウキも大丈夫だ。オレもこの世界に来てすぐに慣れた。

 お前の無神経さなら悩む必要もないだろう」


「それは褒めているのか……まあ、いい。じゃあ全員で野宿だな」


「ただ、事前に街道沿いの町に話をしていた方がいいだろう。

 八十人の猫人族の旅だ。下手すると町から警備隊が出動してくるかもしれない。

 そうならないように、先に町の有力者に話をしておくとなれば……」


「リリスが適任か、リリス……お願いできるかな」

「えぇ、やらせていただきます」

「ごめんな。こんな時だけリリスの信用を利用するみたいになって」


「いえ、お気になさらずに……。

 これも全て神託の導きだという感覚もありますが、

 それ以上に、ナナミの力になれることのほうが嬉しいのですから」


「もちろんボクも付いていくよ。移動はボクの竜だしね」


「リリス様とアンヌにそれをやってもらえるのなら、

 こちらに残って猫人族を受け入れる準備をする役目、それをオレがやろう。

 ユウキのダンジョン前を整地する前準備とか、食料の確保とかだな。

 あのギリアムとも面識ができたから、なんとかなるだろう」


「それなら俺に旅の道案内の役目をやらせてくれないか。

 戻るときに道順の上を飛んでもらえれば、能力で頭に地図を描けるから」


「そうですね。水場とかがわかれば、旅に心配がなくなりますね」


「旅の費用はワシらが持ち出せた物を売って何とかなると思うが、

 その後のことも考えて、あの貴族さんから少し借りるなりした方がいいかのう」


「ハヤト……お金のことは何か考えてた?」


「今後のこともあるから全て持つとは言わないが、

 しばらく暮らせる費用なら用意できる。もちろん返してもらうが」


「俺もこの前、魔物を倒した魔石が大量にあるから、

 そこにはナナミの分もあるけれど……それを足しにしてもらうよ」


「そこまでしてもらうとなると……」


「気にするな。必ず何らかの形で返してもらう。

 それが約束できるのならそれでいい。だな、ユウキ」


「そうだね。最初に言った通り、対等な関係でいたいからね」


 そんな感じで計画は出来上がっていった。



 ◇ ◆ ◇



 翌日――


 猫人族のいる町に戻り、全員に改めて報告。

 ナナミは大喜びだった。


「みんな! ナナミについてくるデス!」


 ――まだ出発は早いよ。


 その後は世話になっている貴族にあいさつ。

 普通なら直接面会するのに手間もかかるのだろうけど、こういう時はやはり、

 リリスの元王女で今は神官という肩書が――言い方は悪いが――役に立つ。


 貴族の人も本当にいい人だった。

 心の底から猫人族と友誼を結ぼうとしていたようだし、

 これからの皆を心配して、色々と考えていたようだ。


 こちらの話を聞いて、

 猫人族が幸せになるならと、別れを想い涙を浮かべながらも、

 旅をするのなら助力を惜しまないとまで約束してくれた。


 それから旅の準備を本格的に始める。

 ハヤトは拠点に戻り、受け入れの準備。

 リリスはアンヌさんと一緒に、街道沿いの町の有力者に挨拶。

 俺はクレアを肩車して、ナナミたちと一緒に荷造り。


 俺たちのパーティ『勇敢な瞳』と、猫人族たちの毎日は忙しく過ぎていった。



 ◇ ◆ ◇



 そして七日後――

 全ての準備が整い、町の人からも見送りを受けて、

 ナナミの故郷の猫人族八十人、新たな故郷を目指しての旅が始まったのである。



 第55話、お読みいただき、ありがとうございます。


 次回は――順調に進む猫人族の旅。

 だがしかし、その途中には、やはり事件が待ち受けていた……です。

 あの女性が再登場です。


 なお、次週の更新はお休みさせていただきます。

 従いまして、次回更新は12月1日の予定になります。

 よろしくお願いいたします。


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◇  ◆  ◇

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