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俺、異世界で自作ダンジョン目指します!  作者: ITSUKI
あっちでもこっちでも事件
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第47話:あれから七日経って

 ダンジョンの試作を始めて七日目。


 ここしばらくソニアさんの館に厄介になっていたのは、

 俺とナナミとクレアだけ――

 いや、クレアにとっては自宅だから、俺とナナミの二人だけだった。


 そのあいだの状況はこんな感じ。


 俺のほうは――

 初日の痺れムカデ事件以外は大きな出来事はなく、

 とりあえず予定していたダンジョン空間について、

 管理室や管理通路も含めて、全ての掘削が終わっていた。

 いまは設備をどうしようか考えているところ。


 二日目に作った検証用の魔物部屋で、実際の魔物の発生も確認し、

 何がどうなるとどんな魔物が生まれるのか、条件を変えて試し始めている。


 で、ハヤトとリリスとアンヌさんの連絡網組はというと……

 最初に出かけた日の夜、帰ってきてから事情を聞いたのだけど、

 やはり大ごとになるみたいだった。


 ハヤトは以前の雇い主だったガリドナ領主に、

 リリスとアンヌさんは教会に、話を持っていった。


 一元的な連絡網を作るというこちらからの提案は、

 各所から要望は上がっていたが、技術と費用の面で実現できずにいたらしい。

 材料さえあれば「作るのは簡単」と言いきって――

 実際に作ってしまったトネルドさんの技術力は、やはり特別だったようだ。


 見本として持っていった数組の連絡用魔法石、

 これを百組は用意できると伝えたら、諸手を上げて歓迎されたそうである。

 

 さらに、その提案をした俺たちのパーティ『勇敢な瞳』はというと……、

 自滅憑依体を押さえることができる実力者と、

 浄化できる神聖魔法使いがいて、なおかつ竜に乗って空を移動できる――

 となれば、自滅憑依体への対策機関に組み込みたいと考えるのは当然。


 その後、どういう流れでそうなったかは聞かなかったが――

 ガリドナ領主と教会が中心になって新たな体制を構築する話になり、

 そのために開かれる対策会議への出席を求められてしまったらしい。


 というわけで、その夜――

 出来上がった分の連絡用魔法石をトネルドさんから受け取って、

 しばらく戻れないと言い残して、三人とも竜に乗って再び飛び立ってしまった。


 ちなみに、俺の聖魔眼の話はしなかったらしいけど、

 それでも神託に名前があがっているというだけで、有名人になっているようだ。

 困ったもんだ。


 それはさておき――


 そのあと一度だけ残りの魔法石を受け取りに来たみたいだけど、

 こっちの三人に顔を見せる暇もなく、再びガリドナ領にとんぼ返り。


 それで、あれから七日経った今日――ようやく一段落ついて戻ってきたので、

 久しぶりの打ち合わせをしようと、ソニアさんの館の食堂で皆で集まっていた。



 ◇ ◆ ◇



「……ガリドナ領の中に中継局を作って、

 常時そこに人を置いて、各地、そしてこちらと、連絡をとる方式になった。

 残りの連絡用魔法石を配るのもガリドナと教会側に任せてきた。

 まあ、ガリドナと教会は利権で揉めそうではあるけれどな」


 情報網組の三人は透明なドーナツ型の腕輪をしている。

 その中に入っているのは――

 表面にそれぞれ別の刻印のある紫の玉――連絡用魔法石。

 ハヤトの腕輪には五個、リリスとアンヌさんのは四個。

 

「オレたちが全ての場所と直接連絡し合うのは現実的じゃないから、

 いろいろと調整するつもりだったが、一番いい形に落ち着いたってわけだ」


 こっちのダンジョン組も同じ腕輪を渡される。

 俺のは魔法石が四個、ナナミとクレアのは一個だけ。


「中に入っているのはオレたちパーティ内の連絡用魔法石。

 対になる石をそれぞれが持つことになる。

 ちょっと贅沢な使い方だが発案者の特権だ。

 ちなみに魔法石が光ると腕輪が振動する機能付き。使い方はあとで教えよう」


「そうしてくれ」


「ナナミやクレアが使うことはあまりないと思うが、

 仲間外れにするわけにはいかないからな。

 ナナミはユウキと、クレアはオレと連絡できる石だけだが……。

 念のため使い方も簡単なものだけでいいから覚えてくれ」


「デス!」「うん」


 早速、腕にはめて笑顔になるナナミと、瞳を輝かせるクレア。

 続けてハヤトが自分の腕輪の中の石をひとつ指差して、


「当然だが……こっちの三人には中継局との連絡用の石がある」


「ボクとハヤトは竜騎士だし、

 リリス様はあいつらを浄化できる神官だから、直接連絡できるようにってね。

 ハヤトは当然だけど、ボクとリリス様も押し付けられちゃったんだ」


「それは仕方がないだろう。

 見合うだけの寄付金――いや、支度金か、それを十分にもらってきたしな」


「そうなんだ」やっぱりハヤトは抜かりない。


「ガリドナ様が各方面にお声をかけたようで、

 あのマルトフ様からもたくさんのご支援をいただきました」


 リリスが挙げた名前には聞き覚えがある。


「マルトフ様って……

 あの自滅憑依体に憑りつかれたのをリリスが救った人だっけ」


「そうです。あの方も似たようなことを考えてらして、

 それで渡り大ツバメの魔石を探していたそうですわ。

 マルトフ様ご本人はまだ臥せっていて、直接お会いしていませんが、

 あの時の従者さんがいらっしゃって、協力のお話をいただいたのです」


「へぇ……、あの時はいろいろ難癖をつけられて悪い印象しかなかったけど、

 従者さんはあとで謝りに来たし、マルトフさんも結構いい人だったんだな」


「いや、そんなことはない」


 ハヤトが俺の言葉を一言のもとに否定する。


「ガリドナも、マルトフは腹黒いし陰険な奴だと言っていた。

 だから、あの時のあの態度はあいつの本性なんだろう。

 だがその半面、仲間とか味方とかになれば、

 筋を通すようになるらしいから、そこは心配する必要はないそうだ」


「そ、そうか……」


 ――ちょっと納得しづらいなぁ……。


「これでもう話は動き始めたから――

 要請があったらすぐに現地に向かうことになる。

 体調には気をつけて、いつでも動けるようにしてくれ。

 これは全員が同じだからな。ナナミもクレアも連れて行くぞ」


「はいデス」「うん」


 これで自滅憑依体への対策の話は一段落。

 続いて次の話題を口にしたのは――アンヌさん。


「それでユウキ君、ダンジョンのほうはどんな調子なんだい」


 ダンジョンについて話を求められてしまった。

 これは――やはり語らねばなるまい。


「えぇ、あれから――

 ムカデが出た空間に少し手を加えて、メインの部屋に改造しました。


 その部屋の右と奥に扉を一ヶ所ずつ……どちらも扉を開けると、

 短い通路の先にもう一枚扉があって、その奥に小さな部屋がある構造です。


 右の部屋が『魔物部屋』で、奥の部屋が『宝物部屋』ですね。


 扉自体はダクートさんに作ってもらったしっかりしたものなんですけど、

 まだ普通に手で開けられる状態です。

 普段は鍵がかかっていて、何かの条件で開くようにしたいんですけど、

 その方法については、いまトネルドさんと相談中です。


 ここまでがダンジョンの基本部分。


 で、あとは管理施設なんですけれど――

 ダンジョン入口の上、崖の中に管理室を作りました。

 外から見てもわからないけど、中からはダンジョン入口が見えるように。


 自然光も取り入れて快適にしてあります。

 トネルドさんの店から魔法石湯沸かし器に、魔法石冷蔵庫に、魔法石調理器具。

 井戸も掘って魔法石風呂も作ったし、魔法石トイレも完備です。


 出入りは……ダンジョン入口とは別の離れた場所に、

 そう簡単には見つからないように隠し出入口を作って、

 人が一人か二人通れる程度、ちょっと狭い感じの通路でつなげました。


 で、同じような通路をダンジョンの基本部分に沿うように通して、

 小さな監視窓からダンジョンの様子を見られるようにしました。


 俺のスキル【空間把握レベル2】で更に詳しく状況がわかるし。

 ナナミの超感覚でも十分すぎるくらい補えますから。


 ただ逆に、ナナミくらいの能力があると――

 ダンジョン側からでも、管理側の様子までわかっちゃう問題があるんですよね。

 まぁ、その対策もおいおい考えるつもりです。


 あと、管理区域とダンジョン区域とを行き来する方法なんですけど、

 あからさまな扉で『関係者以外立ち入り禁止』なんてのは興ざめなので……。


 さっき話したメイン部屋と二つの部屋をつなげる短い通路、

 その天井に見つからないように出入口を作ってみました。

 実際に人手が必要なのが、この二つの部屋……魔物と宝箱の関係なので。


 あとはダンジョンにつきものの罠なんですが……、

 メンテナンスの関係で通路に付けるのは難しいんじゃないかなって。

 設置する作業を探索者に見られたら、これも興ざめですし……。


 ということで、罠については宝箱に付ける方向で考えています。


 人がいない時を見計らって、さらに部屋に鍵をかけて、

 それで宝物を入れ替えますので、その時一緒に罠をつければいいだけですから。

 罠の設置についてはナナミに試してもらっています


 と、まぁ、試作ですけど、こんな感じで……、

 いちおう本物の探索者が来た時のことを想定して、いろいろとやってます」


 まだまだ話したいことがある。


「あと、魔物部屋なんですけど、

 痺れムカデではなく『大ダンゴムシ』が一晩で五体出てきました。

 何が生まれるのかは土地柄なんですかね、同じ節足類っぽいのは……」


 魔物発生の理屈、ソニアさんが知らないとは思えない。

 チラッと様子をうかがうと、すました顔でお茶を飲んでいる。


 ――よかった。


 この件に関しては、ソニアさんの助言無しでやりたかったところだから。

 今の態度だと、その気持ちを汲んでくれているみたいだ。

 もしくは何か別の考えか、制約みたいなのがあるのかもしれないけど。

 どちらにせよ、魔物の発生する法則は試行錯誤で調べていきたい。


「その日は、そのままにして翌日は変化なし。

 で……まとめて光に還ってもらって魔石を回収。


 しばらくして、また五体が発生。それで部屋をちょっと広くしたら一体発生。

 一晩おいてもそのまま六体。さらに部屋を大きくしたら四体が現れました。

 全て大ダンゴムシ、これで十体です。で、光に還して魔石を回収。

 再び十体が生まれてきて、一体だけ倒したら、一体発生してまた十体に。


 ここまでの状況で仮説を立てると、

 部屋の『広さ』で出現する魔物の『数』が決まるってことですかね。


 今はそのまま放置して、強さに変化があるか見ているところです。


 でまぁ、次は別のところに魔物部屋を作ってみたり、

 もっと深い位置で試してみたりと、場所を変えてみたいと考えています。


 で、発生する魔物の種類と強さはどんな法則で変わるのか――

 将来的には、それを知りたいと思っているんですけど、まだまだ先の話ですね。


 あとは別の要因があるかもしれないので、

 トネルドさんと相談して、魔石か、魔法石なんかを使って……」


 俺の熱のこもった説明が続く。



 ◇ ◆ ◇



「……止めぬと終わらぬぞ」


 今回も俺の暴走を止めてくれたのはソニアさんだった。


 とはいえ――

 結構みんな真面目に聞いてくれたのは確かだ。


 ナナミとクレアは初日の時と同じに、

 うまい具合に「デスデス」「ふむふむ」と合の手を入れてくれて、

 ハヤトは「うむ」っと静かにうなずいて、

 リリスも時々「そうですか」と納得したように呟いていた。


 アンヌさんだけは、途中から能面みたいな顔になっていたけれど。


 で、ソニアさんの助言にアンヌさんが我に返って、


「まぁ、みんな疲れているから、今日はこのくらいにしよう。

 また、ここにみんな泊めてもらうってことでいいのかな」


 話をここで切り上げて、

 身体を休ませたほうが良いというアンヌさんの提案は間違っていなかった。

 けれども、その思惑は見事に外れる。


 なぜなら、この夜――

 早くも「自滅憑依体が現れた」と、連絡が入ったからである。



 第47話、お読みいただき有り難うございます。


 次回――自滅憑依体との二度目の対決は?

 そしてトラブルは重なる……です。


 更新は9月15日を予定しています。

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◇  ◆  ◇

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