25話 手加減
結局、その後は家に帰る話はうやむやになって授業を聞く羽目になった。相変わらず、小学生の域をでない授業であったのだが、案外問題を間違う人もたくさんいた。どうやら、ここの教育水準はかなり低いみたいだ。まあ、日本ほど文明率が高い国家は現実世界においても数少ない。案外これが世界の標準かも。
で、私にとっては退屈極まりない時間だったが、別の意味では緊張感あふれる時間であった。隣のカインという子が授業時間中私をじっと睨み続けたためだ。そのおかげで、他の子たちも休み時間になっても私を避けていた。何人か私に声をかけようとしたが、その度にカインがその子たちを睨みつけたためだ。一体どんな事情があるかは知らんが、これほど敵視されるとははなはだ心外である。私だって好きでここにいるわけではないんだが…。だからと言って、子供に送るのも大人げないし。こうなると分かっていたら、魔法の手加減は後で他の町にでも行ってするのがよかったかも。
今はもう授業も全部終わってみんな帰るさなか、私はレティアさんによばれ職員室に赴いた。まあ、職員室と言っても、校長のサムさんとレティアさん以外の職員はないみたいだが…。って、これだと学校というより保育園ぽくねぇ?
「ごめんね。カインも悪い子ではないけど、昔外から来た人とちょっといざこざがあってね。それがトラウマになったみたいで今でも外から来た人にしょっちゅうつっかかるんだよ。」
まあ、何か事情はありそうな気はしたんだが予想どおりか。でも、他の人は私に対してそれほど敵視しないところを見ると、個人的な問題みたいだ。
「いざこざって?」
「それはちょっと、私の口からは言えないかな…。彼の個人的な問題っていうか、彼の家の問題だから。」
いくら個人的な問題だとしても、教師というのは生徒のために時にはそういう事情にも首を突っ込む必要があると思うんだが…。私の願い過ぎかな?
「まあ、それはそうとして今日、ここに呼んだ理由は魔法について教えるためだよ。私が言うのもなんだけど普通の授業じゃ君には物足りないだろうし、特別授業として放課後に魔法を教えることにしよう。それでなんだけど、今使える魔法ってどれくらい?」
「ボルト系魔法全般と、合体魔法くらいですかね。」
そういい伝えるとレティアさんは難しそうな表情を浮かべる。なんだろう?ボルト系の魔法はすべて始めてから持っている魔法で、一番簡単な魔法なんだけど。
「それだと、私が教えられる魔法はなさそうね…。私もそれくらいしか使えないんだよ。でも、これはノーラも知ってるはずなんだけど、なんでここを?」
以外にも、レティシアさんも使える魔法はボルト系に限るらしい。まあ、田舎の学校で先生してるわけだし、本職は魔法使いじゃないからな。それだと、ボルト系の魔法だけでも別にいいかも知らない。あくまで自衛用としては十分すぎるだろう。
「それは、私が魔法の手加減が下手過ぎたのでここで学ぶようにノーラさんから言われたんです。」
「手加減が下手って…。なにかあったの?」
「それが…」
その後、私は山賊の襲撃に関して説明した。まあ、襲撃自体はレティアさんも知ってたらしい。何しろ小さな村だからな。で、その中の一人、合体魔法を食らった人があまりにもひどい状態で手加減に関して学ぶために来たと話した。
「手加減か…それに関しては、合体魔法は論外ね。合体魔法はそのまま、魔法を合体して飛ばす魔法だからその力が合体させる魔法+aに威力が上がるんだよ。あくまで殺傷用であって手加減には向いてないわ。」
そうか。まあ、ある意味当然とも言えるであろう。だって熊さえ葬れる魔法だ。その威力を考えると到底手加減用とは思えない。つまり、魔法の選択から私はミスったていう訳か。
「ボルト系魔法の中で手加減ができる魔法は、ファイアボルトとライトニングボルトかな。アイスボルトは威力が均一してるから手加減には向いてないんだよ。ファイアボルトとライトニングボルトは両方とも魔力を込める量に応じて威力が調整できるから。」
そうなのか。ゲームだったころその両方とも一定量の魔力を込めてぶっぱなつ魔法だったけどな。説明では一応魔力の量で威力調整ができると書かれてたけどそんな機能はなかった。だから、私はゲームだったころと同じくいつも一定量の魔力を込めて攻撃していた。
「さあ、そうと分かれば少し移動しましょうか。」
「え?どこへですか?」
そういいながら立ち上がるレティアさんに私が問うと、レティアさんは私を見て悪戯心大分こめた笑顔を浮かべる。
「それは後ほどの楽しみに。」




