六 誰何
ふいに後ろに人の気配がした。
振り向くと三人の者が立っていた。
一人が火縄をくるくると回すと三人の顔が浮かび上がる。りんと同じ年頃か、少し年上の少年達のようだった。小袖に伊賀袴(足の臑の裾を括り動きやすくしてある袴)を履き、二重に巻いた腰の帯には大脇差しが差さっており、見回りのような雰囲気でりんを見ている。りんは涙を指で拭った。
「おい。お前。どの『家』のもんや?」
「家?」
「ここで商売するんならどこのもんやか言うてみい!」
そういえば、道すがら木陰や焚き火の側に立っていた者達がいた。女の格好をした者やりんのような稚児の姿をした少年達だ。
この場所は何かの縄張りか?肩を抱かれて暗がりに行く二人連れも見た。さっき、川に投げ込んだ男の連れ合いが彼らを呼んだのか?
「・・・商売なんかしてない」
「ほほん・・・連れもなく、そんな髪を垂らして稚児のようなかっこして、とおらんぞ!」
「ほんとじゃ!俺はそんなもんではない!」
りんは三人の間を擦り抜けた。火縄を持った男がりんの顔にそれを近づけた。間近に迫ったりんの怒りに満ちた顔を見て彼らはびっくりした。その鬼気迫る美しさに!だが、去ろうとするりんに気を取り直して追いつき、囲んだ。
「お前、どこかの寺から逃げて来たもぐりやろ!儂等と来い!どこのもんか吐かせてやる。来ないと痛い目にあうぞ!」
りんはふふんと笑うと無視して行こうとした。一人がりんの腕を掴んだ。その次の瞬間、りんはそやつの腕を捻り、反動を利用して投げ飛ばした。
「こ、こいつ!抗うか!」
残りの二人が同時に襲いかかったが、りんは一人は肘で鼻をくじき、もう一人は脚を後ろに跳ばしつんのめらした。転げる三人を尻目に行こうとしたが、最初の一人が起きあがりよろよろとりんの前に駆け込み土下座した。
「た・・・頼む!このままでは俺たちの役目が済まん!見慣れぬもんが商売しているとたれ込みがあったんや!もしあんたが商売してないのなら俺たちが守る!・・・だからどうか親方の家に俺たちと来てくれ・・・!」
そやつは頭を河原に擦り付けた。りんは考えていたが、
「いいよ。俺を連れて行け」