神父と悪魔編 32
扉に鍵を差し込み、少しだけ回してから、離れたところに二人扉に水平に並んで座布団の上に座る。
そして同時に何事かを呟き出した。
呪文、そういえばまるで魔法で、あるいは悪魔でも呼び出しているかのような錯覚を思い浮かべる。
同時に、彼らは手で印を結んでいるようだ。
昔に神学校で学んだ悪魔の降霊術でも、そんなことをするという話を聞いた。
それにより精神を高めることができ、集中を行って悪魔を降ろしてくるそうだ。
だが、今回は悪魔を呼び出すような儀式ではない。
ただ、とびらの儀式と呼ばれる儀式を見させていただいているに過ぎない。
それでも、空間全体に圧力が相当かかってきて、魔法の類だと思わせる。
「……開け、世を統べなさるお方よ」
呪文の詠唱は、彼ら同時に終わる。
すると、風が壁から吹き込んでくる。
そこから誰かの気配がした。
「……珍しいこともあるものだ。まさか客人が座すとはな」
開かれた扉から現れたのは、スーツ姿の初老の男性だった。
「季節でもない時にこのようにしてお呼び立てしてしまい、誠に心苦しく思っております。しかしながら、おそらくはあなたか、あなたの仲間のいずれかが関与しておられると思い、ご意見を拝聴したくこのようにさせていただいた次第」
鉦貞さんが土下座のように頭を下げつつ、彼に告げる。
「だろうな。そうでもなければ客人を招き入れることはするまいて」
怒っている気配はない。
しかし、周辺の空間が歪に歪んでいるように思えるほど、その人は何か違う感覚を覚える。
あきらかに人ではない。
今、私に分かるのはそれだけだった。




