神父と悪魔編 30
別室は、この屋敷の奥、さらに隠し階段を降りた先にあった。
「この部屋は以前から使われていた部屋の一つで、この闔祓いのためだけに使われる部屋となります。ここは常に鍵が掛けられ、そのカギは私たちしかもっていません。ここを他の家系の者に見せるのは初めてのことです」
扉らしいものはない。
そもそもここに入ることが許されていないためか、あるいは、なんらかの装置があるのか。
「ところで猊下。魔術と聞けば、どのようなことが思い浮かびますか」
「魔術ですか。暗黒時代を思い浮かべますね。中世欧州の科学技術の発展が止まった時代、あるいは魔女狩りでしょうか。どのようばものであれ、私が思うのは、さほどよろしくないものばかりです」
「左様ですか。しかし、毒も転ずれば薬を成す。病も見方を変えれば療養の機会、と考えれるように、全ての物事は単純に運ばないのが、通例でありましょう。それと同じように、魔術についてもそれは悪いものばかりではないのです」
「それとトビラの儀式とは何か関係があるのでしょうか」
思わず私は話しかけてくれている貞信さんに聞いてしまった。
「もちろん。陰陽道も、見方を変えれば魔術ですから」
どうやら何かそれに関係があるらしい。
話をしている間にも部屋の中へと入っていた。
部屋は全部を今は見回すことはできない。
全くの暗闇だったからだ。
「電気をつけさせていただきたいのですが、今はこれで我慢をしていただきます」
手持ちのロウソク立てを鉦貞さんがくれた。
まだ階段のところからの明かりで手元ぐらいはぼんやりと見える。
そこでロウソクに灯をともしてもらうと、ほのかに部屋全体が照らし出された。




