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雛型編 1
世界には触れてはいけない事実がある。
それは、世界には雛型となった世界が存在するということ。
その雛型世界ともいうべき世界は、私たちの少し先の未来を作り出しているということ。
これらを守るため、気づいた者を殺すという組織もあるという。
……そんな噂がある。
私自身、それが事実だとは思いもしなかった。
本物の話だと確信に至ったのは、1冊の本と、古書店で出会ってからだ。
奇書、といっても構わないその本は、極めて写実的な標本の絵図が掲載されている、300ページほどの本だ。
陰謀論の類に思えていたこの話も、その1冊の本を手に取った瞬間から、我が身に降りかかる事実として受け入れざるを得なくなった。




