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龍乃牙編 9
「いいんじゃないかな」
総指揮官はあっさりと許してくれた。
「行ってもいいんですか」
「ああ、いいとも。見分を広げるのはとても大切なことだよ。小さな、閉鎖的なコミュニティの中に居たら、思考は直線的となって、精神を発展することができなくなってしまう。広い世界を見回して、それを糧にすることはとてもいいことだと思っているんだ」
総指揮官が許してくれたのは、そういう理由からだった。
ただしいくつかの条件も付けられた。
特に、大学の夏休み中に行くことと、できるだけ早く帰ってくることを約束させられた。
総指揮官の気持ちが変わらないうちにそそくさと部屋を出る。
「伊豆ちゃん、行くよ、夏休みに」
「うんっ」
そんな元気な声が聞こえた。




