神父と悪魔編 29
「お話を伺っておりますと、どうやら秘儀について知りたいとか」
貞信さんが話してくれる。
「ええ、トビラの儀式、というものです」
私が貞信さんに答えた。
「闔祓いの儀式をどこでお聴きになられたか、ということにつきましては、私共は特にお伺いすることはございません。しかし、この儀式は門外不出、秘儀中の秘儀。どうか、猊下にはお引き取りをお願い申し上げるほかございません」
貞信さんは、鉦貞さんとともに深々と頭を下げて非礼を詫びている。
しかし、私たちも、この秘儀を知らなければ、おそらくは謎も解けないことから、真剣に話だけでも聞きたいと食い下がった。
「そのことは重々承知しております。しかしながら、こちらも必要な範囲だけでよろしいのです。その一端を垣間見ることができれば、謎を解くための鍵となり得ましょう。どうか、頭を上げていただき、そして話だけでも聞かせいただきたく思いますが、ダメなのでしょうか」
少し、間が空く。
再び頭を上げたお二方は、貞信さんが話す。
「闔祓いというのは、先ほども言った通りの儀式。知っているのは私と鉦貞、それとごく少数の許された者のみです。もしも死ぬ覚悟があるのであれば、最低限の方にお話ししましょう」
チラリと私の後ろに控えていた、ここまで案内してくれた方々を鉦貞さんが見る。
「私たちは少し仕事がありますので、しばらく失礼させていただきます。3時間後ほどでお迎えにあがりますので、それまではお暇させてください」
よいしょと声を上げて、岩屋さんらはやおら立ち上がり、郁芳家から出て行かれた。
「ではお二方、ご覚悟は宜しゅうございましょうか」
さらに真剣な目線となり、貞信さんらは私たちを別室へと案内した。




